4話
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皇居を囲む巨大なトレントの一柱。その頂上付近。
手で丸を作り、森の中へ進んで行く二人を眺める男がいた。
男は焦るように携帯を取り出し、冷汗で湿った手でボタンを押す。
数秒の呼び出し音の後、
「何だい?」
気怠そうな女性の声がマイクの奥から響いた。
「あ、姉御っ。ヤベェ奴がいる!ヤベェ奴が来た!」
『落ち着きな、デカい声出したら食われちまうよ』
男は小声で叫ぶという器用なことをしながら、足りない語彙力でたった今自分が見た非常識な光景を説明する。
「あいつらヤベェんす。男は笑いながら銃乱射してたし、小学生くらいの女が装甲車運転してた。一番はあの男、コカトリスを一撃で殺しやがった!」
『コカ?……あぁ、あの鶏か』
男は先の衝撃を思い出し、再び戦慄する。驚きすぎて危うく木から落ちるとこだった。
『それで?そいつらの目的は分かるかい?』
「詳しくは分からないっす。けど、女はビデオカメラ持ってました」
『カメラ?……その女、白髪だったか?』
「は、はい。恐ろしいくらいの美人でした。何か知ってるんすか?」
数秒の沈黙。
『……いや、まだ分からん。ボスには私から言っとく』
「わ、分かりました」
『そいつらの行動、逐一私に報告しろ。お前なら見えるだろ?』
「はい。俺の『望遠』なら、木に隠れなければ皇居全域カバーできます」
「ならいい。切るぞ」
「はい。お忙しい中失礼しましたっ」
「はいはい」
男は切られた携帯をポケットにしまい、一度深呼吸をし、再度手で丸を作った。
「――っ」
件の二人は、踊るようにモンスターを殺し続けていた。
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