第84話
§
戦闘ヘリに乗る隊員の目が、前方から迫る黒い塊を捕える。
『敵生体確認。数は……多数』
それは一匹の生物ではない。夥しい数の群れである。
『一匹たりとも近づけさせるな!ファイア‼』
『『『ファイア‼』』』
重機関銃の暴威が怪鳥をミンチにし、血の雨を降らせる。
しかし、奴らは止まらない。
『散開‼』
モンスターの視線を集めるべく、隊が分かれ陣形が組まれる。
本作戦の要、決死の空中戦が幕を上げた。
§
モンスターが攻めて来るのは、何も空だけではない。
音に釣られ、血の臭いに釣られ、奴らは地を駆け姿を現す。
「撃てぇッ‼」
銃口が火を噴き、薬莢が地を跳ね夜を吹き飛ばした。
――着々と作戦が進む中、しかし予想外の早さで防衛ラインが押しこまれていた。
煩くし過ぎたのだろう、モンスターの数が多すぎる。
現在第二防衛ラインの水を抜いた堀まで下がった軍。
その堀も今やモンスターが積み重なり、ほぼ機能を失っている。
『C-4を起爆する。各員第三防衛ラインまで下がれ』
『『『了解』』』
一斉に動き出す全隊員。
――一分後。
堀の壁面に張り巡らされたC-4が、大爆音を上げ血肉を空へ巻き上げた。
――四十分後、何度目かのヘリの落下音を耳に、ようやく待ち望んだ命令が下される。
『全隊に告ぐ。民間人の乗り込み完了。撤退を開始せよ』
総員、予定地へと走り、次々とヘリに乗り込んでいく。
弾幕を張りながら後退し、遂に最後のヘリが離陸した。
――現場で最後まで指揮を執り続けた亜門も、ヘリに乗り込み汗を拭う。
最早これは戦争であった。
戦死者も沢山出た。しかし、何とかやり遂げた。
後は怪鳥を躱し、帰還できるかどうか。
「戦闘ヘリは後何機のこ――ッ⁉」
言いかけ、物凄い振動が機体を襲った。
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