会社の話(お絵描き:雪うさこさん)


彼はおもむろに席を立ち、しばらく戻ってこなかった。

もちろんどこかに行ったということであって、決して会社のブラックさ加減に俯き心を閉じてしまって結構な車通りの道へとふらっと飛び出したりなんてそんなことをしているわけではない。


純粋に、彼が向かった先は――




         ――トイレだ。




紛うことなき、トイレであり、もくもくとした喫煙所と言う名の煙草ではない。

あの動きは、そう、トイレ。間違いない。


そんな彼が、しばらくして戻ってきた。


戻ってきて、私の隣の席に座ろうとする。

いや、それ自体はいいんだ。私の隣の席の彼なのだから。

だけども、彼は向かいの同僚に声をかけられて座れない。

仕事の話を持ちかけられて、座るよりかは立ったまま聞いたほうがいいと思ったのだろう。

別に座って話をしてもいいのに、律儀なやつだ。


「あー(ブンブン)それ(ブンブン)ねー。」


声をかけられた彼が、仕事の話で相槌を打っている。

だけども、その相槌に副音声かのように別の音が混ざっている。


「でも、そう(ブンブン)なると、やっぱりここは(ブンブン)だよねー」


……なんだ。なんなのだこの音は。


私も今は仕事中。必死にキーボードを打ってメールを作っている最中だ。

その横から聞こえる音。

私の意識も集中力も途切れさせる、まさに不協和音だ。


だけどもそれを興味津々といったように見るのもなぜだか負けた気がする。私も一応はこの部署の長みたいなもんだ。


「だからさーブンブンブンブンでもって、こうなるとブンブン」


しまいには言葉と音が被ってブンブンがブンブンさんになってしまっているではないか。


しかも時折PCを見る私の視界の片隅で何かが揺れる動きをしている。

それがより一層私の心を捉えて離さなければ、仕事している私の好奇心をもたせて鬱陶しい。


「ブンブンブンブンブンブンブンブンブンブンブンブン」


もう、声はブンブンだ。

ブンブンさんが隣にいるんだ。きっとそうだ。

話をしている同僚もブンブンさんの話で盛り上がってるんだ。うん、きっとそう。


でも。


大事なことだから二回言おう。



――私は、この部署の長みたいなもんだ。



そろそろブンブンさんにはご退場いただくべきなのではないだろうか。

たとえそれがブンブンさんとお別れすることになったとしても。

私は、この部署の長みたいなもんなのだから(三回目)



「おい、お――」


勇気を出して。

好奇心が負けたわけじゃない。興味が勝ったわけじゃない。私は仕事をしない部下たちに声を荒げることもなくただ冷静に優しく「仕事しろよ」と声をかけてあげるだけだ。それがブンブンさんのことではなく仕事の話をしているのだろうけども、あえて言うのだから。

そう、私は、この部署の長みたいなもんなのだから(四回目)



だけども。

私は、そのブンブンさんを見て言葉を変えることにした。


なぜなら。


「――お前、横で……」






  「オーロラエク〇キューションなんて

           やってんじゃねぇよ!」






それは、漫画・聖闘〇星矢セイン○セイヤに出てくる黄〇聖闘士ゴール〇セイント・アク〇リアスの〇ミュの必殺技。

カ〇ュの弟子である、準主人公とも言える青〇聖闘士ブ〇ンズセイント〇河ひょう○が師匠との戦いの中で身につけた技でもある。



「なんだおめぇ、しっかりと腰も落として、本当に横でオー〇ラエクスキューションじゃねぇか」

「最近座りっぱなしなので運動しようかなって」

「だからってなんでオーロ〇エクスキューションなんだよ」

「この腰の落とし具合が結構キクんですよ」


そういうと彼はまたブンブンとブンブンさんを呼び出した。

そうか、ブンブンさんはオーロラエ〇スキューションさんだったのか。


「だろうな。でもだから俺が聞きたいのは、なんでカ〇ツォーからのホーロ〇ニースメルチじゃないのかって話であって」

「え、なんですかそれ」

「ロシア語が難しくて、アニメ版ではオーロ〇サンダーアタックに改名された技だ。っては言っても全然技の出し方違うから別物だけどな。なんだっけ、正拳突きみたいなやつ」

「ああー、あれですか」

「ホーロドニースメ〇チは、冷たい竜巻って意味らしいぞ」

「いや、でも、オーロラエクス〇ューションよりあれは運動にならないですよね?」

「なるなる。あれはコークスクリューでアッパー打ち出すんだけどな、アッパーの時にめっさ伸ばすんだよ。靭帯。切れそうなほどにな。ほら、運動になる」

「切れたらだめじゃないですかっ!」

「切れなきゃ、ばれねぇよ……」

「ばれるばれないの話じゃないですけどねっ!」


そんな彼は、先程まで話していた同僚が話に置いていかれていることに気づいたのか、「これ、知ってる?」と今更さっきまで意気揚々とブンブンしてたオーロラエクスキュー〇ョンを同僚に見せだした。

彼は大体20台後半で、同僚は20台前半も前半。流石に聖闘士星矢も知らない歳ではないかとも思う。



「そもそも、あいつらって、青銅ブロンズなら秒間95~100発の音速のパンチを打ち出して、黄金ゴールドなら光速でパンチを繰り出すって話ですよね。好きなのはラ〇トニングボルトですけど」

「うお、知ってた」

「しかも結構マニアックな情報」


知ってたことに彼と私は驚く。


「ライトニン〇フォトンは?」

「え、それなんですか」

「黄金聖闘○・アイオリ〇の若かりし頃を描いた聖闘士○矢Gに出てくる最強の技だな」


私の言った言葉に、二人は声を揃えて「どれも最強の技じゃないですか」と笑う。


「あ、でも。白鳥星〇キ〇ナスの〇河・最強の技、〇ーロドニースメルチはまだアッパーを打つという意味でパンチを打ち出してる風に見えますけど」


あ、こいつまさか……


「その白鳥〇座キグ〇スの氷〇・最強の技、オーロラエクスキューショ〇、両腕を水瓶の形に組んで、振り下ろして凍気を打ち出すとかでし――」

「――お前、それ以上言うなっ! ぜってぇに凍気の時点で拳でもないし、そんな打ち下ろしで光速の拳を打ち出してるわけねぇしパンチでもなくて単なる振り下ろしだからとか言うなっ!」

「全部言ってるじゃないですかっ」

「振り下ろしを光速でやってるって思ったらすげぇ笑えるけどね」


言っちゃいけないことだってあるんだぞってことを教えてやれねばなるまいと、私は同僚よりも先に言ってやった。


そこからはもう。

三人で、〇闘士星矢に夢中。



しまいには――



「――あの、先輩達。そろそろ仕事しません?」



……ですよね。


仕事そっちのけで、馬鹿笑いしてたら、怒られますよね。

そんな私は、この部署の長みたいなもの(五回目)


部署の長みたいなもの(六回目)たるもの、模範とならねばならないのだから、そんなアニメや漫画の話に夢中になってちゃあかんのですよ。



「お前ら、後で話があるからしっかり後で声かけろよ。夜は奢ってやる抱いてやる※」

「「はいっ! お待ちしてます!」」



私の会社は、今日も笑い声で溢れている。

……仕事せずに、ね☆











ぱんなこっただ!







※抱いてやる⇛富山弁で奢ってやるですからねっ。



言っておきますが、実際は私のような部署の長みたいな(七回目)役職の人に怒られますからこんなことしちゃだめですからねっ!

後、ついでにいうと、本当に毎日こんな話してるわけじゃなくて、たまたまですからね、た・ま・た・ま・!

いつだってうちの会社はブラックな会sy――( 'д'⊂彡☆))Д´) パーン





さてはて。今日も会社から帰りながらせっせせっせとお絵描き三昧。

いつかは暇しながら窓際で適当に空を見上げながらお金もらって過ごしたいとそう思う今日この頃。


https://note.com/292339/n/ncb80d2a1efd5


そう思いません?

雪うさこさん。




ツイッターでの雪うさこさんのス〇夫は、私のハートを鷲づかみです。



ではでは。

今日も明日もこれからも、皆さんにぱんなこったの祝福があることを願ってー(-人-)


にんにんからの~


どろんっ☆

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