第799話 地方からの人
「その部隊章。濃州ですか?」
楓の声に髭面の男は明石越しににんまりと笑顔を浮かべて楓を見つめた。
「ああ、濃州だが。斎藤一実大尉だ。濃州分遣艦隊でアサルト・モジュール隊の教導を担当している」
そう言って手を伸ばす斎藤。明石がゆったりと周りを見回すとリーダー格の醍醐の次ぐらいの年齢でこの場の将校達と比べると二回りは年上であることがよく分かった。
斎藤の言う濃州は胡州のアステロイドベルト開発の拠点とされるコロニー群であり、その領邦領主は先の大戦の海軍を代表するエースとされた斎藤一学中佐を擁していた。彼が戦死した後は女性の領主が立っているはずだった。
「ああ、誤解するなよ。俺も斎藤一門だが庶流だ。と言っても本当は洋子様もこの場に同席される予定だったがこのご時勢だ。俺が名代と言うわけだ」
そう言うと斎藤はどっかりと本堂の床に胡坐をかく。明石もその隣に座るが、楓は胡坐のかきかたが分からないように何度か足を組みなおした後、諦めて正座した。
「おい!誰か座布団を!」
そんな斎藤の一言で魚住がはじかれたように走り出す。その様子に笑みを浮かべながら斎藤は目の前の酒を飲み干した。
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