第371話 少年兵の西をからかい終えて
西のゲームが終わったのを確認するとランが手を叩いてみせる。
「オメー等いい加減にしねーと昼めし、おごってやんねーぞ!」
にらみ合うカウラとかなめに向かってランはそう言って立ち上がる。全員の視線が彼女の幼い面差しに注がれる。
「あのー僕達は?」
バッドエンドの画面が映し出される端末を見ながら西とレベッカがランを見上げた。
「西。お前はデート中だろ?」
「これはデートとは言わないような……」
西の反論を無視してランはそのまま部屋を出て行く。
「おごりって……なんだ?」
腑に落ちない表情のかなめの顔を見上げたランの目には自信がみなぎっているのが誠にもわかった。
「いつもすみませんね」
「良いって!アタシが好きで……おっと!」
アイシャのゴマすりににやけた顔をしながらジャケットのポケットでランは震える携帯端末を取り出す。かなめはおごりと言う言葉を聞いてからニヤニヤが止まらないような様子だった。携帯端末の上の画面には司法局付き将校の
『謹慎中すいませんなあ』
少しも詫びるつもりは無いというような笑顔で明石が話を切り出した。
「ライラの奴。オメーのところに連絡よこしたろ」
ランの言葉に明石は少しばかり緊張した表情を浮かべた。
『まあクバルカ先任中佐がうちに上げてきた情報をよこせ言うてきましたわ。うちも面子がありますよって軽くいなしときましたけど』
「……なるほどねえ、ライラも実績が欲しいだろうからな。そこんとこの調整はタコの腕の見せ所だろ?」
『いやあほんま。ライラはんも焦ってるのは分かるんやけど』
明石はそう言いながら自分の禿げ頭を叩いて見せた。ランは明石の言葉に安心したようにうなづく。
「別にあれだぞ。情報は小出しにする分には出しても構わねーぞ。下手に隠し事をして波風立てるのもあらだからな」
『分かってま。ええ感じにしときますわ』
明石はそう言って通信を切った。
「そう言えば飯をおごるって……車は?カウラのは4人乗りだろ?」
「私とラーナは嵯峨警視正の車で出ればいいはずだ。島田、お前はバイクでサラと行くんだろ?」
カウラに見つめられて島田とサラは仕方なさそうにうなづく。
「でもどこ行くんですかね」
「おう、うどんに決まってるだろ?遼南と言えばうどんなんだ。じゃあ行くぞ!」
通信を終えたランが力強く叫んだ。出て行く人々をなみだ目で見上げる西を無視して一同は玄関へと向かった。
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