私のエピローグ
GPZも直りコンビニバイトのシフトを深夜枠でいつもより多めに入れてもらっている。革ツナギもいつかは欲しいが当分手が届きそうにない。破れた革パンツを買い直さないと峠にも行けない。サイレンサーとマフラーも出物があれば一新したい。
講義にも真面目に出席している。割と。
今は十二月。話に聞く北海道ほどではないけど、さすがに峠に行くにはオフシーズンだし、バイク乗りはおとなしくなり始める頃だ。
逆アリとキリギリスみたいだけど、冬はバイトして夏は沢山走りたい。この時期、走り納めと言う言葉をよく耳にする。私たちはバイクが主な移動手段だからいつもこの言葉に違和感を感じる。神奈川で雪が降ってバイクに乗れなくなることは多くて年に二〜三回。恵まれた環境だ。だけど、その数回だって降らないでと切に願ってる。犬には悪いけど。
ユキは毎年この時期は忙しいらしく、短大の創作クラブの娘たちと一緒にいるのをよく見かける。ヒロシがソロツーリングの計画やアウトドア用品の話しをする相手がいなくて寂しそうだ。
今年の私は大型免許を取ってGPZのレストアを終えてさっそく転倒して、そして修理した。暖かくなったらみんなに内緒でこっそり峠に行こうかなと思っている。まずはメンタル面のリハビリからスタートして慣れてきたら練習。孝子や宗則に勝とうとかは思わない。だけど、少しでも近づきたい、速さでは無くって、上手くなりたいって思ってる。速さは上手さのひとつの結果に過ぎないよね。しっかりと上手くなって、次は転かさないように。
……なんでバイクだったんだろう。100枚以上あるカードから数枚選んだだけで、その中の1枚が、このカードが1番だと信じてる。
私が終わる時、私の一幕はバイク無しでは語れない。そんなエピローグだといいな、私の物語。
そうだ、私がNSRのキーにつけて何も言わずに宗則に返却したカラビナキーホルダー。今は何故かCBのキーホルダーになっているみたい。同じ日にGPZのキー用に買った私のカラビナはおそろいっぽくなっちゃうから、キーから外してカバンにつけることにした。
「春よ来い」切に願う。
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