エピローグ:2 of Magic Loaders
平手打ちと見せかけて
やあ、最後まで読んでくれてありがとう……と言いたいんだけど、もうちょっと僕らの話にも付き合ってくれたまえ。
(え? 誰視点かって? ここまで読んで頂いた方なら、一人称が「僕」の主要メンバーは一人しかいないのはご存知でしょう。野暮な注釈はなしだよ)
ちょっと時間を戻して「第86話 親友の捜索を断念させるドラゴン」にて、サーイさんが、あの「へ」の字の「び」の字の女神娘ヤロウを捜している間、うちゅーせんの墜落現場では、何が起きていたかというと……
―――――†―――――
「アシジーモ、待ってくれよ!」
「何でだ、なんであんな連中のために、こんな野営にとどまっていなければならない!」
アシジーモは、エギトゥヤムから呼んできたドラゴンに跨って、飛んで行ってしまった。
「もうすぐ来るみたいだから、私も行く」
「カル様……カル様まで、逃げるんですか?」
「逃げるだと!?」
「『滅びの魔法』ができるのが、怖くて逃げる気ですか!? 自分の仕事が、なくなるからって」
「何だと、私がそんなことを恐れてるとでも思うのか!?」
「だって逃げようとしてるじゃないですか!?」
「ザガリスタの住民たちに、もう何日も会っていないから……」
「そんなの言い訳でしょ!」
ザガリスタからもドラゴンが到着した。
僕は、ドラゴンの前に立ちはだかった。
「行かせません……僕らと一緒に、作るの手伝ってください! 『滅びの魔法』!」
そのとき、カル様は右手を高く上げた。
「平手打ちですか!? いいです! 僕は受けてもかまいません!」
なぜか、左手も高く上げた。
その両手は振り下ろされてきて、
……僕の頬に当たった。ゆっくりと、優しく。
そして、カル様の顔が、近づいてきた??
顔、いや、唇が……
僕の、唇に。
「……イサキス、すまない。もう少し、待っていてくれないか?」
僕は、何が起こったか理解できなかった。畏れ多くて――嬉しくて――理解をあえてしなかった、というのが適切かもしれない。
呆然とする僕を置いて、カル様はドラゴンに乗って、飛び立っていった。
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