第62G話 『Magic Loaders』まだまだ続きます

 ここはルカンドマルア、ベルツェックルとクペナの王宮。


 ベルツェックルは苛立っていた。


「おいクペナ、サーイは何をしている! ライディアの洞窟での勝利から、音沙汰がないではないか! イウカーマ攻略の知らせがいつまでたってもないぞ!」


「あなた、何言っているんですか、サーイをウィスタ大陸に派遣してから、まだ2日ですよ」


「そういう尺度でものを言うな! もう26話くらい前じゃないか! どこで道草食っている!」


「……そこ、微妙に増やさないでくださいな」無表情でいるのがそろそろ辛くなってきているクペナ。


「もう我慢ならん、彼女一人だけを派遣したのは、間違いかもしれん。ティルナグを呼べ!」



 ガイトゾルフの一人、ティルナグがすぐに駆けつけた。

「ベルツェックル様、いかがいたしましたか?」


「サーイ一人では、どうも心許ない、お前もウィスタ大陸に派遣する!」


「しかし、ベルツェックル様、ウィスタ大陸に渡る方法は現状ありません。……私の力不足で申し訳ありませんが、サーイのようにヨガブを使える身ではありません」


「そのことなら心配ない。今晩、王宮の裏手まで来い」



 その晩。ティルナグは約束通り、王宮の裏手に来た。


「ベルツェックル様、どういうことですか、こんなところに私を連れてきて……」


 すると、ベルツェックルは暗闇に向かって手を叩いた。

 向こうから、誰も来なかった。


「……ベルツェックル様、何をされておられるのですか?」

「……来るはずなのだ」

「誰がですか?」


 しばらくすると、一人の男が暗闇の向こうからやってきた。当惑した様子だった。


「セディムよ、遅いではないか、その……ドラゴンをしばらく貸してはくれないか」

「ベルツェックル様、すいませんでげす……いないんでげす」

「何!? いないだと?」

「いつも呼んだらすぐ駆けつけるのに……今晩にかぎって……」

「ええい、探してこい!」

「へーい!」


「あ、あのさえないおっさんは? ドラゴンって……?」

「彼は、この周囲の見張りを任せている」

「しかし、なぜドラゴンなどを……魔物に頼るなど、ガイトゾルフとしてできません」


「だから、今ここに呼んだ。これは秘密だ。昼間、あからさまにドラゴンが飛んでいたら、民は怖がるだろうから」

「いや、しかし……いないじゃないですか」

「……そ、そうだな」


「……わかりました。そのドラゴンが見つかったら、行きます」

「くれぐれも、サーイの前ではそのドラゴンの姿を見せないように。見つかったら、だが」


 朝になったが、あのセディムという男は、

「ベルツェックル様ー、やっぱりいないでげすー」

 といって半泣きになっていた。

「そ、そうか、きっとどこかで昼寝でもしているんだろう……」

「ベルツェックル様、お言葉ですが、何なんですか。冷やかしもいい加減にしてください。ふぁ~あ、徹夜までしたのに……」

「す、すまんかった」

 ベルツェックルはしぶしぶあきらめて、ティルナグは西を目指さなかった。


―――――†―――――


「ダメだ! これ以上は進めない。サーイ、何か良い方法は……」

「ごめんなさい、私には何も…………あっ、あります!」

「何だ?」

「この蔓植物には見覚えがあるんです。もしかしたら、あの人が知っているかも……」

「あの人?」


「私が、浮島群に登るため通った木に、おばあさんが住んでいたんです。奇妙な植物をたくさん飼っていたんです」

「おばあさん?」

「今、この辺にいる植物にそっくりなものも飼っていました。もしかしたら、この子たちをなだめる方法を知っているかも……」

「その木って、どこにある?」

「浮島群の南の端、パラウェリの木です……私、ちょっとそこまで行っておばあさんに会ってきます!」


「えーー、サーイさん、浮島群の南といったら、相当かかんじゃないですか?」

「ちょっとそこまで、っていう距離じゃねぇぞ、ふざけんな」

「それまで、私たちは待ってろってことか……とんだ無駄足になってしまった」

 と、マジック・ローダーの3人は苛立っているようだった。



 ……その程度で済んでよかった……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る