第44話 世界観クラッシャー

 湖の中から出てきた石造りの建物は、結構な造りの宮殿のような建物だった。


 おじゃましまーす。


 入ると、奥から何かやってくる。人間でも、魔物でもないぞ。

 なんか、全身が金属でできている。頭は球体だし、目は光るし、足は生えていなくて、その代わり、回転する部品が横にたくさんついてて、それらが平べったい布のようなものでくるまれていて、それが、前後に動……ええと、めんどくさいや、キャタピラのついたロボット!  あーあ世界観台無しだ。


 で、そのロ……世界観クラッシャーがこっちを見て、見るもなにも目が光っているだけだが、

「フシンシャ、ハッケン!」

 などとこれまた定番の表記法で言ってきやがったのだが、そこで俺の記憶は途切れる。



「あらぁ、あわてんぼおさんのくせに、遅かったじゃなーい?」

 気づいたときには、びっくりしてまた気絶しそうになった。あのへびあたまひめがいたからだ。俺は必死で言い返した。

「いや……、やっぱ、ないわ、ない、姫は、ないわー!」


「何だと! 姫様に無礼は許さんぞ」

 あ、コイツは確か魔物の村にいた……俺に疑いをかけてきた鳥の魔物じゃんか。デウザとか呼ばれてたやつ。


「だから一体なんなんだ、これが姫様だなんて……」

「なんでも、とても高貴な方の娘らしいぞ」

 さっきと同じ抽象的な答え。本人から具体的な答えを引き出すしかない。

「いったい、お前は誰の娘なんだ!?」


「うーんとね……」

 といって、なんか熟考に入った。

「わかんニャい!」

 ……それはへびの鳴き声ではない。


「なんでも、姫様は記憶をなくされているそうなんだ……」とデウザが言いながら、俺に耳打ちしながら「……もし本当に高貴な方だったら、今媚を売らない手はないだろ」

 あ、なーんだそういうこと……ちょっと安心した。

「姫様、そんな頭だから記憶をなくされたのでは? 2、3びき抜かれたほうがよいのではないでしょうか?」

 そしたら、姫ときたらこっちにグッと頭を寄せてきて、

「どんぞ」

「……遠慮しときます」



「てか、一体ここは何だ? さっき変なやつがきて俺をしびれさせた……」

 というと、さっきのロ……がこっちへ向かってくる。

「この子の名前はメッツレツ。この研究所の護ええをしているよ! 初めて入る人は、だいたいこの子の電気ショックでやられちゃうねー」

 電気とかやめろー(世界観が崩れるから)。あああ、辺りを見渡すと、あれだ、なんか平べったい板に光る文字や絵が映し出されているし、その手元には、なにか指の太さ大の押せそうなものがいっぱい並んでてー、横にネズミみたいなものいてー、あああ、アレだ。アレ。もう言いたかない。


「なにあわててんよー、あんたが持っているそれだってさー」

 と、ひめあたま(←誰だよ)は、俺が持っていたトゴリーティスを指さした。

 ……い、いや、これは、ちゃんとマジック・ローダーにもらった、ま、魔法だ! 決して、あの、だれかと文字を送りあったり、知らないことを調べたりできるアレとは絶対違う!(そういう用途に使ってたけどさ)。


「まあまあ、世界観どおこおはいいから、ここはね、まもラボといってね、魔物たちが魔ほおの研究をしてんの。だから、人間のみんなは知らない不思議な機械がいっぱいあるんよ」

 ……「機械」はギリセーフにしておこう。


「で、へびあたまはここでなにやって……」といいかけたところでデウザがこっちを睨んできたので「えーと、メディ姫様は、何をおなさいなさりなってますの?」

「……いいよ『へびあたま』で……決まってんじゃん、マージさんを探してるんよ」

「じいさんをか!」

「まもラボではね、普段からゾジェエの監視とかもしてるからね……見てみ」

 そういうと、例の平べったい板に光っている点を指した。

「これは?」

「これは、近くのどお窟のよお子。ゾジェエがいるあたりに赤い点、いい魔物さんは青い点で出るんよ」

 見ると、青い点の中に赤い点が一つだけ混ざっているが……しばらく見ていると、赤い点が消えた。

「……誰かにやられたのか?」

「そおみたい」

 その後、赤い点、青い点ともにいっぱい出てきたが、赤い点は全部消えた。しかし、青いのは1つも消えなかった。

「すごーい、ゾジェエだけ綺れえに選んでやっつけるなんて、誰だろお?」

 誰だろう? 前話どこ読んだって絶対(ry


「で、これはじいさんも映るのかね」

「あ、それは無理ー、これ魔物用だしー」

 ガクッ、それじゃ意味ないじゃんか。


「それについては俺から話そう」

 とデウザが挟んできた。例のロ……メッツレツっていやいいのか、が動いて誘導した先には、なんかかまど※みたいなのがある。(※ほんとはもっとハイテク機械なんだが、魔法世界の人間らしい的外れな表現を精一杯したつもりだ)


「なんだこりゃ」

「これは、リークデバイス。文字通り、魔物の居場所を漏洩リークさせる機械だ。さっきの洞窟の様子も、近くにこれと同じものを設置しているからわかる」

「いやだから、人間には使えないんだろ?」

「話はしまいまで聞け。今俺らがやっている研究は、これを人間用に転用することだ」

「これで人間の居場所を知れるようになれば、じいさんの居場所だってわかると」

「そう、そしてその試作品プロトタイプがこれだ。まだ技術的課題はいくつかあるがな」

「どんな?」

「まず、そもそも有効範囲レンジがあまり広くない。大きな町一個分ってとこかな。だから、ある程度のこの辺にいるんじゃないだろうか、というあたりをつけて設置しないといけな」


 そのとき俺は、

「とある場所に心当たりがあるんだけど」と言ってみたら、

「やっぱりそうか」とデウザ。

 へびあたまがこっちにきて「あたしもー、あるよこころあたり」。

 あと、相変わらず移動時以外活躍できてないバウザスまで、「ore mo aruzo」


「よし、それじゃあ一斉に言うか。せーの……」


 ……全会一致。

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