第26話 武器屋
ダンジョン攻略を始めてというもの、俺だけまともな装備を持っていない。
これはなんとかしなければ、と思っていたところでこんなお店に出会えたのだから、とても運がいい。
「らっしゃい! お、兄ちゃん初めて見る顔だな」
店主は威勢のいいおっちゃんだった。
「はじめて第三層に来たんだ。これから世話になるかもしれないからよろしく頼む」
「あぁ、わかんねえことがあったら何でも聞いてくれ!」
「ありがとう。頼もしいよ」
せっかく装備を更新するねら、強い物にしたい。
だが、買い物をするに当たってなによりも気になるのが……。
「そういえば、お金って日本円で払うのか?」
「ハッハッハ、日本円なんざ、ここじゃあなんの価値もねえよ」
「じゃあ、どうやって払うんだ……?」
俺が戸惑っていると、店主が自分のスマホを操作しながら説明をしてくれた。
どうやら、あの白いアイコンのアプリを起動すると、クレジットという欄があるらしく、モンスターを倒せばそれが自動で貯まっていく、というのがダンジョン内のシステムのようで、支払いもそのスマホのアプリを通して行われる、とのことだった。
その手順はこうだ。
お金を受け取る側が金額を設定し、専用のバーコードを表示させる。そして、払う側がそのバーコードを読み取れば自動的にクレジット(お金)が引き渡されるらしい。なんとも先進的である。
「……兄ちゃんそんなことも知らなかったのか? ダンジョン内にある店で買い物したことないのかよ?」
おっちゃんは当たり前のことのように説明してくる。
「ダンジョン内に店? そんなものがあるのか?」
「ああ、出現場所はバラバラだが、気味の悪い人形が店主をやっている店だよ。ブルーシートが敷かれていて、そこに商品が並んでんの」
「そ、それって……」
俺には心当たりがあった。
第二層で出会った、あの気味の悪い人形……。
岳さんをレーザー光線で殺した、あの人形……。
「おいおい、顔色が優れねえな。大丈夫か?」
「だ、大丈夫だ。ちなみにその人形が店主をやっているお店って、誰でも買い物が出来るのか?」
「当たり前だろう。誰が何のために作った人形かは知らねえが、金を払えば商品を売ってくれる。これを利用しない手はないだろう」
そうか……岳さんはお金を払わずに商品を持ち出したから殺されたのか……。
「それよりも何を買うんだ? この店に来たっていうことは何か買いに来たんだろう? 冷やかしはゴメンだぜ」
「ああ……そうだな」
まずは自分のお財布と相談して、何を買えるか確認しないとだな。
えーと、自分の持っているクレジットは54338か。んで、商品のほとんどが1000くらい。
どうやら俺のクレジットは知らないうちに結構たまっていたらしい。これなら好きな物を選び放題だ。
「どれにするか迷うな……」
「それならこのアイテムリストを見るといい。女神さまの指示で兵士団の拾ったきたアイテムは全て記載するよう義務づけられているんだ。ここは武器・防具を取り扱っている店だからこっちの欄な」
「へえ、これが全アイテム集っわけか」
店主はアイテムリストが並んでいる紙を見せてくれた。
「じゃあ、武器は攻撃力の一番高い白銀の剣。防具は一番守備力の高そうな鋼鉄の鎧一式を購入するよ」
俺がそう言うと、何故が店主のおっちゃんが腹を抱えて笑い出した。
「ガッハッハ! 鋼鉄の鎧一式とか、兄ちゃんもまだまだひよっこだな!」
「ど、どういうことだよ。クレジットならたんまりとあるんだ。買えないわけではないだろう!?」
「……うむ、確かに買えないわけじゃあないわな。だが考えてもみろよ。ダンジョン内でそんな重そうな防具を背負って普通に戦えるとでも思ってるのか? 防御力も大事だが、機動力も無ければモンスターと戦っていけねえ。ノロノロとしてればすぐに取って食われちまう。自分を守る為の防具が自分の命を危険にさらすかもしれねえんだ」
なるほど。これは確かに盲点だった。
ゲームとかだったらテキトーに数値の高い装備品を選べばいいのかもしれないが、ここは現実なんだ。動きやすさなども加味して装備を選ばなければいけない。
なら、俺が選ぶ装備品はこれだ……!
◆
「……毎度あり! 装備品は装備しねえと意味がないからな!」
________________
名前:カケル 男
HP 100/100
攻撃力 38
防御力 24
素早さ 26
運 3
________________
最終的に購入した装備品は『白銀の剣』と『鋼鉄の胸当て』、『グローブ』の3つだ。
攻撃力と防御力が大幅にアップしたが、それ以外のステータスはそのままだ。
レベルの概念が存在しないとなると、何か特別な装備品が必要なのだろうか。
他の女神店で回復アイテムなども買い込み、これでダンジョン攻略の準備は万端だ。
さて、こちらの用事も終わらせたことだし、そろそろルナと合流しなければ。
メッセージを送ってハチ公前にでも待ち合わせるか。
そう思い、スマホを手に取ると……なんと、ルナからの通知が99件以上。
『カケルくん、どうして返事をしてくれないの……?』
『なんでもいいから返事をちょうだい』
『一言でもいいからお願い。愛してるの』
『カケルくんが返事をくれないとルナ死んじゃうよ』
『本当に死んじゃうから』
『もう無理……リスカしよ……』
『手首切った』
『血がでてる』
『カケルくん、これが最後のチャンスだよ』
『死ぬ前にカケルくんの言葉が聞きたい』
『ルナが嫌いでも返事くらいしてよ……』
『カケルくんカケルくんカケルくんカケルくんカケルくんカケルくんカケルくん』
通知画面にはルナからのメッセージが埋め尽くされていた。
「ああああああああッ!!! どんだけメッセージを送ってんだよ!! マジでめんどくせえ……ルナ、めんどくせええ!!!」
ヤンデレ美少女は最強だけど、一緒にダンジョンを攻略するには向いていない はな @aynsley
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