54人目の来客
「よし、この辺でいいだろう」
お師匠様はうんうんと頷いて、僕の方を見る。そして、男の頭を無造作に掴んでこちらへ向ける。
「こいつは、女に暴力を振るうことでしか繋ぎ止められなかった男。それでこっちは……」
女の頭をこちらへ向ける。
「そんな夫をもったために精神を病んで、子供に八つ当たりし、最終的には夫に殺された女」
子供の頭をこちらへ。
「その後父親を殺して、人殺しがやめられなくなった男の子」
いやはや大量大量、とケラケラ笑うお師匠様に、くすくすと僕も笑い声を重ねた。
「何がおかしい?」
お師匠様に怒られ、少し首を傾げる。
「いえ、人間らしい、人間らしすぎる結末に面白くなってしまいまして」
お師匠様はまだ分かっていないようだった。
「この子達を殺した人物は、はてさて誰なのでしょうね」
お師匠様は表情を消していた。
「まだいる、と?」
そうですそうです、と言って僕はカラカラと笑う。
「彼らの罪は、まだ終わっていませんよ」
「彼らの罪、で果たして合っているかもわからんが、確かにそうだな。探してこよう」
「その必要はないよ〜」
小屋にぐったりと入ってきたのは友人だった。彼は、よいしょ、と沢山の人達を床に転がした。
「ある程度は僕が連れてきたから。後は頼むね〜」
「お待ちください」
僕が声をかけると、ピタリとうごきをとめる。
「紅茶はいかがですか?」
彼は下を向き、体を小刻みに震わせて、上品に笑ってみせた。
「いただきましょうかね」
言葉の質を変えた彼は、果たして彼だと気づいていただけるのですかね、と少し考えて、僕はニヤニヤと笑い、楽しいお茶会が始まった。
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