???人目の来客

「おっはよー! 遊びにきたよ!」

 賑やかに入ってきた彼に、僕は無言で立ち上がり、ティーセットの準備をする。


「僕が来たんだし、もっとテンション上げてくれてもいいんだよ?」


「自意識過剰にも程があるのでは?」


 彼はバタバタと足を動かして反論する。

 えー今日は冷たいなぁ、と騒ぎ立てる彼に、無言で紅茶を差し出すと、彼はやっと話す気分になったらしい。


 先ほどの空気とは一転、ひどい空気圧に押しつぶされそうになりながら、彼の話を聞いた。


「今日の噂話は、ある男性3人の話。

 そのうちの2人が、ある人に恋をした。

 それを隠しつつ、仲良く暮らしていると、ある時、秘密がバレてしまい、男1人が逃げ、もう1人が追いかけ、後の1人はその、もう1人、を追いかけた」


 自分の前の男をみんな追いかけていたんだね、と彼は心底面白そうに言う。


 そして、さらりと真実を暴く。


「この話に女は出てこない。だって、みんな男性だからね」


 嬉しそうに、楽しそうに彼は微笑む。


「面白いよね。女性の心を持った男性だって。何でそんなことが起こるのかな? 手違いでも起こったのかな?」


「それも、彼女の個性だと、僕は思いますよ」


 ん〜いろんな意見があるよねぇ、面白い。

 そう言って、その歪みをサラリと肯定するような、否定するような言葉を言ってみせる。


「まず、恋をしたのは2番目の彼、いや、彼女と言ったほうが正しいかな」


 そう言うと、紅茶を口に含んで転がした。


「とにかく2番目は、1番目に逃げ出した男に、恋をしてしまった。それに気づいた1番目は、あろうことか逃げ出してしまう。

 2番目は、別に彼との関係を変えようとは思っていなかったため、それを伝えようと追いかけた。

 まあ、少しはその人とずっと一緒にいたい、という希望もあったんだろうけどね」


 窓の外がやけに荒れていて、窓に様々な物が叩きつけられる。

 揺れる蝋燭をじっと見つめ、そのまま彼は続ける。


「計算違いが起こったのは、その先。

 2番目の彼女、その人を3番目は好きになってしまった。

 だけど3番目は、男しか愛せなかったみたいだね」


 でも、彼女の事を、その中身も含めて好きになってしまった、と、彼は悲劇を語る。


「3番目の彼は、1番目を追いかける2番目を止めようと、必死に追いかけた。

 ここまですれ違うのも考えものだよね」


 そう言って、今度はつまらなそうに、僕を見つめる。


「今日の君は、特に顔色が変わらないね。つまらないなぁ……」


 そう挑発されて、ついに僕は本心を表してしまう。


「楽しい話じゃなかっただろうが」


 そう唸ると、彼は、その反応が見たかったんだよ、と嬉しそうにケラケラ笑った。


「彼女は、綺麗でしたよ」

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