第27話 前夜祭と後夜祭の実現に向けて⑥
翌日の昼休み。
俺は朝、学校に登校してからというもの空いた時間があればブース配置の予定図をじっと眺めていた。
今のところは昨日伺った五社ともが参加を希望してくれている。
それはとてもありがたいし、前夜祭と後夜祭の開催に向けた資金も着々と集まっていることは順調そのものだ。
しかし内村先生が提示してきた目標の数に後半分足りない。
その半分を探したところで、ブースが果たして入り切るだろうか?
先ほどから予定図を眺めているが、やはりどう見ても今の参加を希望してくれている五社が限界。それ以上はどうやっても入りきらないだろう。
だが、そうなってしまうと付随して新たな問題が発生してくる。資金不足だ。
内村先生からは最低でも二十万は必要と言われている。が、現状集まる予定金額は半分の十万。契約金が一社につき二万としているが、これ以上は上げることはできない。
うーん……。
どうしよう……。
これって、結構積んでないか? 資金を集めたくてもブースを置く場所がないし、かと言って、集めなかったらそれはそれで前夜祭と後夜祭ができないし……。
もはや第三の手段を選ぶしかないのだろうか……。広告費とか。
けど、広告費にしろ掲載料はそこまで高くは取れないだろう。取れたとしてもいくらだ? 五千円程度が限界なような気がする。残り十万を稼ぐためには最低二十社は必要か……。そうなってくると、時間的にも無理だし、広告を掲載するにしろパンフレットには二十社が入るようなスペースはそこまでない。
……やっぱり無理があったか。
そう諦めかけていた時だった。いきなり放送がなったかと思えば、俺の名前が呼ばれる。声的にはたぶん内村先生だろうし、とりあえず席から立った俺は職員室に向かうことにした。
――なんの話なんだ? こんな忙しい時に……。
前夜祭と後夜祭の件についてだとは思うけど、別に今じゃなくてもいいだろ……。この後の五限目と六限目会うんだから。
そう思いつつ、早くも職員室にたどり着いた俺は、ノックをして室内へと入る。
「……なんですか?」
俺は内村先生のデスク横に立ったと同時にぶっきらぼうな感じでそう言った。
すると内村先生はどうやらその態度が気に食わなかったらしく、ギロリとこっちを睨みつける。
「なんだ、その態度は?」
「す、すいませんでした……」
あまりの恐怖でつい無意識的に謝ってしまった。これが条件反射っていうやつかな? 理科のいい勉強になったね!
そんなくだらないことはともかくとして、内村先生のデスク上に視線を移す。
そこには『前夜祭・後夜祭の開催についての方針案』という題名がついた紙の束があった。
「ああ、これか? 実はな、前夜祭と後夜祭の開催が正式的に決まったんだよ」
「……はい?」
「昨日、校長とどれくらいか話し合った結果、資金が十万集まる見込みがあれば、開催してもいいという方向性になってな。それで昨日の時点でもう十万集まっただろ? お前の妹からはそう連絡を受けているのだが……」
「あ、は、はい。一応見込みはありますけど……」
「そうか。なら、今日からはまた委員会の仕事に戻ってくれ。残りの資金については学校側が出す方針だからな。お前はよくやったよ」
内村先生はそう言うと、優しく微笑んだ。
――決まったの……?
あまりにもさらっとした説明だったもんだから理解するのに少し時間を要してしまった。
俺は職員室を出た後、教室に戻る。
「歩夢くん、どうかしたんですか?」
戻ったと同時くらいに優樹菜が俺の元に駆け寄ってきた。
「前夜祭と後夜祭の開催が決まったらしい」
「……え? では、もう探さなくていいんですか?」
「まぁ、そういうことだろうな」
「そうですか……。よかったです」
優樹菜はどこか寂しそうな表情を見せると、俺の元から離れて行った。
その反応が少し気にはなったが、ともあれ大きな課題であった前夜祭と後夜祭の件についてはどうにか解決したし……今日からまた雑用として頑張ろ。
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