第17話 ピチピチのスクール水着③

 その日の放課後、俺はどんよりとした気持ちで傘をさしながら下校していた。

 もちろん隣には優樹菜がいて、相合傘状態ではあるけれど、すごく気まずい。

 なんと話しかけたらいいのだろうか?

 そのことだけをずっと考えていると、優樹菜の方から口を開く。


「そ、その……私、別に怒ったりとかしてないです」

「え? でも、五限目と六限目の休み時間話しかけてくれなかったじゃん」

「それは、その……恥ずかしかったといいますか……」


 優樹菜は顔を赤く染めて、俯いてしまう。

 スカートは両手てまギュッと握られ、シワができている。

 どうやら俺の思い過ごしだったようだ。そのことを知って、心からホッとしている。


「そ、そうだったんだ。あ、あの時は本当にすまなかった」

「も、もうそのことはいいです……。思い返してしまいますので……」


 一応、許してもらうことができた。

 でも、なぜだろう……微妙な空気がまったく晴れない。

 やはりあんなことがあった後は、そう簡単に元には戻らないということか。


「それにしてもなんでお兄ちゃんは一人で更衣室にいたんですか?」

「ああ、俺実はな、泳げないんだよ」


 男として情けない限りだ。

 泳ぐことのできない金槌とか……夏になったら海とか川で遊べない。

 今までは別に遊べなくてもいいやという考えではあったけど、彼女ができてしまった以上、どうにかして泳げるようになりたい。

 そうでないと、優樹菜と海や川に行けず、ビキニ姿を拝むことができない!

 これは由々しき事態。

 俺は意を決して、優樹菜に泳ぎ方の教えを乞うことにした。


「そこで優樹菜、頼みたいことがあるんだけど……」

「泳ぎ方を教えてほしいという頼み?」

「あ、ああ、そうだ。俺は全然泳ぐことができない金槌だ。だからせめて優樹菜に教えてほしいんだ。泳げるコツを」

 

 そう言うと、優樹菜は考える仕草をとる。


「私、教え方下手ですよ?」

「それでもいい。優樹菜に教えてもらいたいんだ」


 彼女に泳ぎ方を教えてもらう彼氏なんてダサすぎるだろう。俺ですらそう思っている。

 でも、彼女に一から教えてもらうなんて良くない? 変なおっさん教師よりかは数兆倍マシだろ。

 俺の熱意が伝わったのか、優樹菜は一回頷く。


「じゃあ、わかりました。さっそくですけど、今週の土曜日とか空いてます?」

「明後日か。ああ、まったく問題ないぞ」

「それじゃあ、その日に市民プールに行きましょ。そこで一から教えます」

「わかった」


 これはラッキーな展開と言えるのだろうか……。

 優樹菜に泳ぎ方を手取り足取り教えてもらう……なんかエロいな。

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