第20話

       20


「フリーキックは絶対に止める。で、その後だ。俺、今までより前に上がるよ」

 レオンへのカード提示の直後、暁に駆け寄った神白はきっぱりと決意を口にした。

「は?」暁は呆気に取られた面持ちになった。

 神白はそれ以上の返事を待たず、ゴールへと戻っていった。到着した神白が振り向くと、モンドラゴンが地面にボールを置いていた。

リー、もう少し寄れ! 外巻きのシュートのほうが怖い!」

 視線の先バルサのメンバーが作った人の壁へと、神白は指示を飛ばす。ゴール前では、両チームの選手がポジション争いを始めている。

 モンドラゴンが助走を取った。流麗なフォームで右足を振り抜く。

 ボールが蹴られた。内回転のシュートが迫る。

(良いコースだ! けど!)読んでいた神白は左上に跳んだ。隅を狙ったコントロール・シュートだが、取れないボールではなかった。

 神白は両手でキャッチした。滑らかに着地し、すばやく前方に目を向ける。バルサの攻撃陣は皆、敵に付かれている。

(速攻はきついか。なら!)神白は決断し、数歩前に行った。右サイドに開いた5番に下手投げで転がす。

 5番はトラップした。前を見るが、出すところがない様子だった。

 神白は右方に走っていった。守備ラインと並行位置まで至ると、5番からパスが来た。

 ぴたりと止めた神白は、するすると前にドリブルを始めた。すぐに9番が寄せてくる。

 9番を充分に引きつけて、神白は左斜め前の6番に出した。6番は反転してマーカーを躱し、前方へと浮き球を送る。

 天馬が受け取った。しかしまたしても、モンドラゴンが立ちはだかる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る