第11話
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直後、暁がダッシュし、ゴール内のボールを拾った。すぐにセンターに向かって蹴り出し、息を吸い込む。
「まだ同点だ! 取り返すぞ!」気合いの入った大声が、グラウンド中に響いた。
やがて全員が位置に付き、ヴィライア9番が蹴り出してゲームが動き出した。
7番がボールを持った。レオンがチェックに行く。それと連動して、他の者たちもそれぞれのマーク相手を抑えに向かう。
(連携の取れた良いプレスだ! さっきの一点で、みんな乗ってきてる! こうなった時のうちは強い!)
高揚感を覚えつつ、神白は、ボールの動きに合わせてポジショニングを微調整し続けていた。暁の表情は数分前より固く、劣勢を予感している様子だった。
ヴィライアはパスを回し、中盤の底の5番に渡った。天馬がすぐに詰めていく。
5番はボールを引き、後ろの3番に出した。即座にバルサ7番が寄せる。
7番の早いチェックを受けて、3番は前へのパスを諦めた。中央に身体を向け、キーパーに返す。
(キックオフのボールをキーパーに戻させるほどの圧力! これぞバルサ流プレッシングだ! けど、この戦術での必須事項は……)
神白が思考を巡らせていると、敵キーパーが大きく助走を取った。ドッ! 鈍い音がして、ロングキックが飛んでくる。
コート中央にいた敵9番が反応した。バルサ最終ラインを超えたボールを、必死の形相で追い掛ける。マーカーの
ペナルティーエリアのやや外にいた神白は、「キーパー!」と轟く声で叫び駆け出した。
前からは9番と
神白は右足でボールを掬った。と同時にジャンプ。9番のスライディングを上に躱して、落ちてきたボールを転がした。
引いてきていたアリウムが止めた。ちらりと後方を視認して、ターンする。
神白は即座に立ち上がり、バック走でゴールに戻り始めた。フリーのアリウムは完全に前を向き、レオンに縦パスを入れていた。
(ディフェンスも前からボールを奪いに行くから、その背後には広大なスペースができる。そのケアは、キーパー、すなわち俺の役目だ! 手が使えなかろうが関係ない!)
神白はチームメイトに負けまいと、一人気持ちを高めていた。
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