第5話
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二十分が経過した。両チームともいまだ無得点だった。バルサのボール支配率は非常に高く、シュートも何本も浴びせていた。だが、暁たちの身を挺したプレーによって、ぎりぎりで防がれてばかりだった。
バルサがフリーキックを取った。場所は、ヴィライアゴールの右前方、三十m弱のところである。
キッカーは天馬だった。両手持ちしたボールを下ろし、とんっと地面に据えた。やがてゆっくりと下がり、静止する。
笛が鳴った。天馬、おもむろに駆け、右足で捉えた。横回転のボールは人の壁を越え、左下に鋭く落ちながらゴールに向かう。
キーパー跳躍。左手に当てた。カンッ! ボールはクロスバーに当たり、壁のほうへと跳ねていく。
駆け寄った暁が腿で止めた。しかしバルサは、レオン含めて三人が詰める。
暁、後方に倒れ込みつつ右足を振り抜いた。暁が足の甲で捉えたボールは、大きな弧の軌道でバルサ陣地へと飛来する。
(オーバーヘッドキック! 開始早々のダイビング・ヘッドといい、アクロバティックだな、遼河! ……それにしても、一点が遠い。嫌な雰囲気が漂ってきてる)
神白が危惧を強めていると、ボールが落ちてきた。落下点では、バルサ6番とヴィライア8番がポジション争いを始める。
競り勝った8番が頭で触れた。ボールはもう一度弧を描き、バルサディフェンスまで到達する。
「
だがトラップしたボールは、神白の想定より前に行った。(やばい!)身構える神白の視線の先で、零れたボールを奪取すべく敵9番が走り寄る。
先に9番が触れた。
胸元に手をやり、主審はカードを取り出した。色は黄色。イエロー・カード。もう一枚貰えば退場である。
失意の表情を浮かべつつ、
「
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