第188話:強敵?

「余計なことをしてくれる。しかし──」


 短剣を手にした男……ただならぬ気配を感じる。

 とか言ったらちょっとカッコいいだろうか?


 一見すると普通の冒険者風の恰好をしているけれど、どこか陰湿な感じがする。


「破壊したコアを元通りに……か。その力、俺たちの下で使う気はないか?」

「俺たち? ──ぅ」


 目の前の男に気を取られていたからなのか、それともこいつらが気配を消すのが上手かったのか。

 気づいたら俺たちは合計五人の男たちに囲まれていた。


 他に冒険者はもういない。

 みんな嬉々として拡張された階段を下りて行った。


 つまりここには、俺とシア、ボリス……そして悪そうな五人ってことだ。


「お前たちの下って、いったい何をやってる組織なんすかね? 力つっても、壊れたコアを元に戻せるだけだぞ? なんの役に立つって言うんだ」


 たぶんコアを箱に入れるところから見られているのだろう。

 なら、俺の能力はコアを元通りに出来ることと限定させよう。

 シアとボリスにもそう言うことにしてくれと目配せをする。

 二人とも頷いたところで──


『ルークの箱は何でも作れて治せる、凄い箱なんだぞ!』


 と、お羊様が叫んだ。


 人語を喋れるようになるってのも、考えものだなぁ~。

 あはは~……はぁ。


 さて、


「行くぞ!」


 俺は手に持った携帯用転移装置を地面に叩きつけた。

 ぐるんぐるん渦巻く光が現れ、急いでシアとボリスをそこに突っ込む。

 当然、奴らが簡単に見逃してくれる訳じゃない。


 だから投げた。

 シアのアイス・フィールド石と、奥さん角シープーたちのエア・カッター石を。


 地面を凍結させ、そこに風を送り込む。

 転倒させられればかちかちつるつるの地面だ。簡単には起き上がれないだろう。


 そこに──


「喰らえ! ドラドンブレェェーッス!!」


 ゴン蔵のブレス石を投げる。

 そしてすぐに転移装置に飛び込んだ。


「ボリス! ホーン・デストラクションの準備だ!!」


 ゴン蔵ブレス石を潜り抜けてくるとも思えないけど、念のためだ。

 逆にあれを潜り抜けてくるとなると、相当な手練れだぞ。


 ぐるぐる渦巻く光をじっと睨んでいると──


「嘘だろぉ。ゴン蔵ブレスだぞ?」


 ぐるぐる渦巻きから、いびつに歪む剣を持つ手が出て来た。


『いいの? いいの?』

「よし! いけ、ボリス!!」

『わぁーい! そぉれ、どっかーんっ』


 どっかーんっと可愛い声が響くと同時に、男の悲鳴が聞こえたがそれも一瞬だった。

 転移装置に逆送りされて男が消える。


 たぶん一列に並んで入って来ようとしただろうし、今ので順番待ちしてた奴も吹っ飛んだだろう。


 そして──


 時間制限になったぐるぐる渦巻きは、小さくなって消えた。

 





「悪い奴いたねぇ」

「いたなぁ」

『僕やっつけたよ!』

「どうかなぁ」


 ゴン蔵のブレスを潜り抜けて来た奴らだ。

 生半可なレベルじゃないだろう。


「ウーク、ここどこぉ?」

「ん、ここはサウレンド近くの、山のダンジョン地上15階だ」


 あれから何日も経ってるし、ラッツさんたちはもう地上に出たかなぁ。

 使えないっての分かって、慌てて戻ってくれていればいいんだけど。

 うまくすりゃ、あの日の夜に石を使って宿に戻ろうとしてくれていれば……。


「ひとまず地上に出ようぜ。もしかして、戻ってるかもしれないし」


 で、地上をメモしている石を探してから、それを使って直接町へ。

 

「さて、いるかどうかは分からないが、どうやって探すかな」

『呼んだらいいんじゃないの?』

「呼べばいいね!」


 そう言ってボリスとシアが、ラッツさんたちの名前を連呼しはじめた。

 地味に恥ずかしい……。


 けどまぁ、それしかないよなぁ。

 宿を一軒ずつ周るってのもあるけど、手間がかかる。


 街中を練り歩いて十分。


「なんでご領主がここにいるんです……」


 ラッツさんたちと再会できた。



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