第187話:しまった!?
欠片は丁寧に布で包まれ、台座の上に置かれていた。
全部まとめて錬金BOXに入れると、ちゃんと真ん丸に。
で、周囲の様子を見る。
急にボスが出て来て、準備出来ずに死人が──なんてことは避けたい。
「シア。最初は俺たちが頑張るぞ」
「あぃ」
「まぁ彼らも冒険者だ。直ぐに態勢を整えてくれるだろう」
ってことで、台座の影に隠れてそっとコアを取り出した。
すぅーっと浮かんで、カチっと台座にはまるといつもの振動。
『ふおおおぉぉぉぉぉぉぉっ。我、千年の眠りより目覚めし王なり!』
「いや、たぶん数十日の眠りだったと思うんだけど」
現れたのは、どこからどう見てもミイラ男だ。
その頭には王冠が乗っているので、王っていうのはあながち嘘じゃないかもしれない。
よし、マミーキングってことにしよう。
このマミーキング、包帯の切れ端から紫色の煙みたいなのが出ている。
色的に毒だろうなぁ。
接近戦は禁物ってことか。
「シア、魔法で行け! たぶん接近すると毒に侵されるぞ」
「分かったぉ。──"アイス・ボルト"」
島にいる間に、滞在している冒険者がシアに魔法を教えてくれた。
おかげで魔法の精度も種類も増えて、戦闘スタイルでは遠近どちらでも行ける。
俺は石を取り出し投げるだけ。
「ミイラなら火が苦手だろなぁ!」
と投げたファイア石は、マミーキングに直撃して──燃えない!?
え?
なんで!?
『ぐはははははははっ。アンデッドが火を苦手とする常識など、我に通用するものかっ』
えぇーっ。
あわよくばこれで倒せるかもって思ったのによぉ。
次、何投げようかな。
ゴン蔵ブレス石にしようか。それともボスの?
ロイスの雷魔法は、一部、空の下じゃないと発動しないっていう残念なのもある。
どの石にしようかなーっと考えていると、新たな地響きが聞こえて来た。
「うはははははははははっ!!」
「復活だ! 復活したぞぉぉっ!!」
「早いもん勝ちだぜぇーっ!!」
「"ターン・アンデット"! "ターン・アンデットォォ"!!」
歓喜に満ちた笑みを浮かべた、冒険者ご一考が突撃してくる振動だった。
「キングマミーはな、火属性の耐性があるんだよ」
「はぁ」
マミーキングと勝手に命名したアレは、キングマミーってのが正しい名前だったらしい。
「まぁ一番有効なのは聖属性だな。だから武器に聖水ぶっ掛けて戦うんだよ」
「え? でもあいつ、なんか毒々しい煙だしてなかったです?」
「あぁ、アレね。確かにくっさいし、目は痒いわ鼻水涙出るわ、肌がヒリヒリするんだけどな」
「毒ではないんですよ」
キングマミーと接近戦を繰り広げていた人たちは、確かに鼻水まみれだった。
花粉症の症状を引き起こすのか、あの紫色の煙は。
それだって仲間の神官の治癒ですっかり治っている。
「君らはここのダンジョンは初めてだったようだな」
「え、ええまぁ。ほ、ほら。各地でダンジョンが復活してるじゃないですか。ここは階層も浅いし、楽にこれるかなぁっと思って」
「そうなんだよなぁ。普段は賑わってないここも、今回の件ですっげー込み合っててよぉ」
「さ、拡張マップに行くぞ!!」
「お、そうだな! じゃあな」
一休みを終え、新しく出現した階段を、冒険者らが続々と下りていく。
その様子を横目で見ながら、俺たちは町に戻るために携帯転移装置を取り出した。
見る限り、ボスを倒したことで出現した魔法陣で地上に戻ろうとする冒険者は誰もいない。
『だーれもかえる人いないんだねぇ』
「まぁここにいた人たちは全員、拡張されるのを期待して滞在していた冒険者だったっぽいからなぁ」
「みんな新しいダンジョン行けて、よかったねぇ~」
「良いことしたなぁ、俺たち」
国の経済を回すだけじゃなく、冒険者たちの探求心にも貢献している。
いい仕事してるよなぁ。
「さぁて帰ったらまずは飯、それから風呂だな!」
「おぉぉー! お肉がいぃ」
「野菜も食べなさい」
『僕ニンジンがいいーっ』
「ニンジン以外も食べなさい」
「『ぶーっ』」
手に持った石を地面に投げつけようとして──思った。
「あれ? 付与石ってそういや、俺しか使えないんだった……よな?」
「んー。そだねぇ」
あれ?
ラッツたちに渡した石……大丈夫か!?
いや大丈夫じゃない!!
「しまったっ。ラッツに渡した携帯用の石! 発動できなくって、ダンジョンの下層に取り残されてるんじゃないかっ」
「あ……あぁぁっ。大変だぉウーク!」
「大変だ!」
『大変なの?』
大変なんだよ!
石、石……あのダンジョンに位置情報をメモした石は残ってないか?
予備をいくつか持ってたし、上書きまだしてなければ持ってると思うんだ。
石をひとつずつ箱に入れて鑑定し、いくつ目かで目的の石を発見した。
「よし、あったぞ!」
「ラッツ救出作戦?」
「あぁ、直ぐいかなきゃなっ」
石を掴んで呪文を唱えようとした時だ──
「お前か? お前がコアを──」
くぐもった声で、ひとりの男が近づいて来た。
その手には物騒な短剣がしっかり握り絞められ、友好的でないことはすぐに分かった。
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書きながら、自分で作った設定をすぐ忘れてしまう記憶力のなさorz
その辺補うためのエピソード開始。
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