第128話:島会議
「海底火山ですと!?」
「では昨日の地震は、海底火山が原因と?」
町へ戻ってすぐに会議を開いた。
集めたのはシャテルドン、ライエルン、他数人の騎士。それからグレッドとギルドマスターに、この島に半年以上滞在している銀級以上の冒険者数人だ。
「確かなのですか?」
「あぁ。ク美が調べてくれた。水蒸気も上がっているらしい」
次にまた地震が起きた場合、どうするか。
それが今回の会議の内容だ。
「津波が発生するようでしたら、山へ避難するのが一番では?」
「雪が無ければそれが一番なんだけどな。この時期だと、避難しようと人が集まると雪崩の危険もある」
「「あぁ……」」
実際、昨日は地震の影響で雪崩が発生した。それはゴン蔵のブレスで固められたが、ゴン蔵だって360度全方向に対応できるわけじゃない。
なら山の北側に避難所を設けるか?
鉄筋コンクリートならぬ、岩ビルでも建てて。
いや、そこまで徒歩で避難するのに時間が掛かり過ぎる。
防波堤を作るか?
でも今この瞬間にも地震が来たら……。
「あぁくっそ。どうすりゃいいっ」
「ご領主……」
「ルークエイン様……」
「ウーク。お城行く!」
「え?」
突然シアが元気な声を出した。
城って、トロンスタの王都にか?
まさか城の技術者とかに、知恵を借りろなんて言うんじゃ。
「地震来たら、みんなでお城行く! お城、大丈夫!!」
「みんなで城……そうか!」
そうだよ、そうさ!
魔導転送があるじゃないかっ。
町の住民や冒険者は、直ぐに転送させて逃げればいい。海岸に暮らす船乗りや海軍騎士も、暫くの間こっちに引き揚げさせるか。
「んー……食料の心配はしなくてもいいか?」
控えているジョバンに尋ねる。一瞬なんのことだか分からないといった顔だったが、すぐに返事は戻って来た。
「心配ございません。畑には未収穫の野菜も雪の下に埋まっておりますし、二カ月は安泰かと」
「そうか。オレイン、当分の間、冒険者の新規入島を禁止にしたい。大丈夫か?」
「島に入るなってことか。こんな状態だ、その方がこっちとしても助かる」
「よし。島を離れたいという冒険者は、明日までに出て行くこと。まぁそれまでに地震が来なければだけどな」
海軍の船も使って、島を離れたいという者は本国の港町オリーヘに送る。
それ以後、船の入港は禁止だ。そうすれば──
「船乗りと海軍騎士団も、暫くは町の方に来てくれ」
「承知しました。ではすぐにでも、海岸に戻って知らせてきます」
「頼むライエルン。それと明日の昼と夕方で、一隻ずつ出してくれ」
ライエルンが頷き、会議場となっている屋敷の食堂を出て行った。
一番厄介なのはダンジョン内の冒険者だな。
「ダンジョン内は冒険者同士、情報を共有して貰って広めるしかねー。まぁだいたいは七階で休憩する連中がほとんどだ。来た奴片っ端から知らせれば、あっという間だろう」
「じゃあ冒険者のことは冒険者ギルドに任せる」
「あぁ、任せてくれ」
「よし。シャテルドンは部下にこのことを知らせて、町のみんなにも話しておいてくれ」
「はっ」
全員が解散し、俺も屋敷の外へ。
向かうのはボスの家だ。
雪かきはほとんど終わっていて、今日は振っていない新雪もない。
「ボス、いるか!?」
『ンベ。ベェー』
小屋からひょこっと顔を出したボス。その後ろに小さいのもいた。
「ボス。昨日の地震なんだがな、海底火山が原因みたいだ。海底火山って分かるか?」
『ベ』
こくこくと頷くボス。それからすぐに察したのか、雪に覆われた山の方を見た。
「そうなんだ。魔導転送で城に避難するのでもいいが、山の方に避難するのもいい。どうする?」
『ベェー』
「山行くって」
「そうか。なら避難しやすいように、雪をどうにかしておこう。あとお前たちが入れるような、穴とか見つけておかなきゃな」
あとはモズラカイコたちだな。
それはボスに頼んで伝えて貰うことにした。
津波が来なさそうな、少し高い場所にボスたちの避難場所を探そう。
『なら我のこの住処に避難させればよかろう』
「ここ、そんなに標高はないが、大丈夫かな?」
『一応、海岸より50メートルは高いぞ』
『頑丈だよぉ』
それだけ高ければ安心だ。
山の麓の方にあるゴン蔵の住処に行って、彼に避難の件を伝えるとこういう提案に。
モズラカイコたちも一緒でいいと言ってくれた。
「まぁ本音で言えば、津波がもし来たとしても、島に到達するまでになんとかしたいなって思っているんだ」
『去年のあの……なんと言ったかな。人間オークの『ギフト』のように、ごく限られた狭い範囲でだけ起こす津波であれば、我のブレスでどうにでもなるのだがな』
「ゴン蔵ひとりじゃあ、横数キロに渡って押し寄せる津波は、どうにもならないだろう」
『……うむ』
『ぼくがお手伝いできればいいのに……』
ゴン蔵とゴン太が悔しそうに言った。
二人とも、この島の事を思ってくれている。ありがとう。
「ウーク、津波って大きいの?」
「あぁ。地震が発生した場所から、扇状に広がって──扇状!?」
「がうっ!?」
『ビックリしたっ』
『なんじゃ、大きな声を出しいって』
そうだよ。津波って、発生したその瞬間から横に何キロも連なってる訳じゃないんだ。
地震発生源から、扇状に広がるものなんだ。
だったらまだ防ぎようもある!
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