第117話:閑話-小さな冒険5
『目が一つで頭に角がある、人間より大きなモンスター?』
船着き場のある浜へ帰ると、ルークとシアお姉ちゃんとお父さんとゴン蔵おじちゃんが迎えに来ていた。
「それはオーク・アイだな」
「オーク・アイ?」
『シア、なんて言ってるんだ?』
『オーク・アイだって、ウーク』
『オーク・アイって、オークの亜種だって言われている巨人族系モンスター?』
ルークの質問に、お父さんが「そうだ」と答える。
その言葉はルークに伝わったみたい。返事ぐらいなら伝わるんだけどなぁ。
あぁ。シアお姉ちゃんの通訳なしで、ルークとお話したいな。
『おいおい、それって中級レベルのモンスターじゃないか。ほ、本当にボリスひとりで倒したって?』
「そうだよっ。僕が倒したんだもんっ」
『────って言ってうの』
『つ、角シープーってそんなに強い部類だったのか? だいたい、まだ生まれて一年も経ってないだろうに』
でも僕がやっつけたんだもん。
「ボリス、お前、ステータスを見てみろ」
「お父さん……うん、分かったよ」
ステータス、出て来い!
えいっ。
ボリス
角シープー 0歳 雄
筋力:122 肉体:124 敏捷:73
器用:44 魔力:65
【スキル】
ホーン・デストラクション1
僕のステータスをお父さんに教えた。そうしたらお父さん、物凄くビックリしてて──
「そんなに高いはずはな──あっ」
何かを思い出してお父さんも自分のステータスを見たみたい。
で、やっぱり驚いてる。
「お父さん、どうしたの?」
「……実だ」
「みだ?」
「ステータスの実だ。迂闊だった。あれだけ食べていればこうなることぐらい分かっていたはずなのに」
「お父さん?」
はぁっと大きなため息を吐き、お父さんは空を見た。
「ルークから貰った人参ブロック、食べちゃダメだったの?」
「いや、違う。ほいほい食べていたから、角シープーの標準的な能力値をあっさり超えてしまっておったのだ」
「それって、僕強いってこと?」
「あぁ、強い。強くなりすぎている」
やった! 僕強いんだ!!
強ければジーナやニース、キャロルにキャスバルを守ってあげられるもんね。
『ふんふん。あ、俺のせいだったのか……えっと、人参ブロック、止めた方がいいのかボス?』
「いや……こうなったら最強の角シープーを目指す!」
『んとね、最強のシープー目指すって』
『そっか、最強かぁ。強くなったら角シープーも進化とかするのかな。ほら、ゴブリンがゴブリン・リーダーになって、最終的にはゴブリンキングってのがあるだろ?』
『シアしあない』
『……そっか。とにかく帰ろう。だいたいお前たちの帰りが遅いから、俺がボスに急かされて迎えに来たんだぞ』
あ、だからこんな時間にみんなが浜辺に来てたんだ。
もう夕方だもんね。暗くなるの早くなっちゃったなぁ。
『我らは先に帰るとしよう』
『またねみんなー』
「また明日ー、ゴン太ぁ」
『ばいばいでしゅー』
「ばいばいでちゅー」
浜辺で別れて、僕たちは町へと向かった。
ルークがお馬さんで来ていたから、シアお姉ちゃんはその後ろに。僕とお父さんが駆け足でそれについて行く。
その間、お父さんは黙ったまま。
「お父さん……勝手に島の奥に行ったの、怒ってるの?」
「……相手は強かったか?」
「え? ……ううん。楽勝だったよ!」
「そうか」
それからお父さんはまた黙り込んでしまった。
やっぱり怒ってるの?
そう思っているとお父さんは、走る速度を緩めて僕に並んだ。
「ボリス」
「なにお父さん」
「お前はステータスの実の影響で、子供ながらにして強くなった」
「う、うん」
「その力はお前の本当の実力ではない。与えられた強さだ」
与えられた……ルークに?
「自惚れるな。世界にはお前や父さんより強力なモンスターが、うようよしているのだ」
「う、うん……」
「相手が自分より弱いなどと、思わぬことだ。本当の意味で強くなりたいのであればな」
そう言ってお父さんはまた足を速めた。
本当の意味での強さ──僕にはそれがなんなのかまだ分からないけど、もう少し大きくなったら分かるのかな。
町に到着する頃には、すっかり暗くなっていた。
『あ、ところで魚はどうしたんだ?』
「……聞かないで」
『きかないでって』
『なんでだよ』
「オーガ・アイに食いつくされたあとだったか」
「ちがうもん」
いっぱい食べられてはいたけど……いたけど……。
あいつらぶっ倒してる間に、全部逃げられちゃったんだもん!!
絶対、絶対に捕まえてやるんだからなぁーっ!!
【ボス視点】
進化……出来るのだろうか……。
その昔、父に聞いたことがある。
長く生き、強い力を持った伝説の角シープーがいたと。
彼はパートナーを得て、成長し、そして進化した。
羊毛を自在に強化、柔化させることができ、大地と風、そして光を自在に操る力に目覚めたと。
本来の角シープーは、雄が大地、雌が風を操るが、進化によってそのどちらも操ることが出来るようになり、そこへ光だ。
きっと強かっただろう。
生まれて間もないころからステータスの実を食べていた息子なら──ボリスなら進化出来るかもしれない。
だが果たしてそれは真の強さと言えるのだろうか?
強さとは何か、アレにはしっかり教えてきたつもりだが……
そろそろ実践訓練も必要になってきただろうか?
今度ルークに相談しよう。
あれはこの島の頂点に立ち、忙しい毎日を送っているようだが。
我が盟友として、ぜひとも相談にのって欲しいものだ。
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おチビモンスターsのお話はここで終わりです。
閑話、もう少し続きます。
次の章で一気に数カ月進む予定ですが、その穴埋め&バレバレな伏線の為に。
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