第64話:船着き場
『ンメ~』
「おぉ、ジーナじゃないか。お前も手伝いに来たのか?」
翌朝、ボリスが妹のジーナを連れて町にやって来た。
最近になってようやく、ジーナは懐いてくれるようになった。
『ベェー』
「ボスも来たのか。なら作業が捗りそうだ」
『僕も来たよぉ~』
『来てやったぞ』
よし、働き手は集まった。
ゴン蔵以外で岩を集める。ボスは器用に角で岩を弾いて、俺の箱の中へと投げ込む。
箱から溢れるようになったら岩ブロックの錬成だ。
完成品をその場にごろんと転がしたら、ゴン蔵が掴んで昨日の作りかけの場所に持って行ってくれた。
岩ブロックは縦横高さ160センチ。横に三列ぐらいあった方がいいか?
「ゴン蔵。ブロックは横に三列にしてくれー」
『でなければ荷物の積み下ろしもままならんだろう。最初からそうしておるわ』
「さすがゴン蔵。人間の都合もちゃんと考えてくれるんだな。ありがとうな、ゴン蔵」
『……な、なぁに、大したことではないわ』
青銀色の顔を赤らめ、ゴン蔵はそそくさと岩ブロックを掴んで飛んでった。
人間臭いドラゴンだよなぁ、ゴン蔵って。
あとは高さ調節用のブロック作りを残すところ──というタイミングで、エアリス姫が騎士に護衛されながらやって来た。
「ルーク様ぁ~、シァ~。お弁当ですわよぉ~」
「お、有難い」
「ペコペコだおぉ」
姫だけじゃなく、護衛の騎士たちも荷物を持っていた。
敷物と、それから野菜か。ボスボリスジーナの分だろうな。あと果物もいくつか見える。
「ゴン蔵、休憩にしようっ」
『よかろう。ルークエインよ、水を頼む』
「分かった」
箱いっぱいに海水を汲み、分解。この量を分解するのは初めてだな。
蓋を開けるとそこそこ大きな塩の結晶が底にあった。
箱のサイズは50センチ四方だが、中は160センチ四方と同じ容量になっている。
が、手を突っ込めば塩の塊を掴むことは出来た。
このサイズだと砂も結構入るなぁ。これも先に出してっと。
「ん? 底の方になんかまだあるな」
いったん取り出して、それからゴン蔵の手に乗る。
彼が俺を自分の顔の前まで持ち上げ、俺は箱を傾けて水を飲ませてやった。
『ぷはぁー』
「もういいのか?」
『よい。ゴン太たちにも飲ませてやってくれ』
「分かった」
その前にさっきの『何か』を箱に入れて鑑定っと。
【海の微生物とプランクトンの塊】
……。
うああああぁぁっ!?
び、微生物!?
いや、驚くことじゃない。海水に微生物とかプランクトンなんて、いて当たり前じゃないか。
え、今までこんなの無かったぞ。
もしかして汲む量が少なかったから、目視できていなかったのか?
い、今までの分はどこにいったんだろう。
水と一緒に飲んだ──いやそれはないな。箱の中身は一種類、一つずつしか取り出せない。ぐびぐび飲んでも水しか入って来てないんだ。
じゃあその後でポロっと落ちていたのか?
うぅん、次からは気を付けよう。
ゴン太やシープー用の水は、錬成後に塩と微生物類の塊を先に取り出して皿に注いだ。
「ルークエイン様。もしや今日中に船着き場を完成させるおつもりですか?」
「いやぁ。ここからは表面が平らになるよう、寸法を微調整しながらの作業になるから……明日ぐらい掛かるかなぁと」
「明日……作業を開始して三日では、普通、船着き場は造れませんよ」
騎士たちがちょっぴりドン引きしているのが分かる。
「早くこっちを終わらせて、本国から大工職人の増援部隊を派遣してもらいたいんだよ」
「あぁ、なるほど。半月前にお戻りになられた時も、船から荷物を下ろして桟橋の床板が抜けましたしね」
「そう。あの穴があったら、ちょっとした荷物の積み下ろしも危ないだろう」
けどやることはまだまだたくさんある。
明日は午前中の内に木材の準備をして、船着き場は午後からにしよう。
「ルーク様。お父様に職人の件はお話しましたの?」
「いえ、エリオル王子に頼もうかと思ったのですが」
伝書鳩に手紙を持たせて飛ばせば、お城に真っ直ぐ飛んでくれる。
魔導通話装置を設置するには、魔導士が魔石に力を込める必要があるらしく、簡単には出来ないんだとか。
王子宛てに手紙を書いて、お願いするつもりだったのだが……。
「ではわたくしがお父様に手紙を書きましょうか? その方がきっとすぐに人材を送ってくださいますわ」
「そうでしょうね。エアリス姫のお願いなら、国王陛下もすぐに聞いてくれるでしょう。じゃあお願いできますか?」
「はいっ、お任せください」
姫はその日のうちに手紙を書いてくださった。
そして翌日は予定通り、午前中に木材の用意を。午後から船着き場の高さ調節も終わらせ完成。
元海賊アジトに開けた穴から町への直通ルートは、ゴン蔵が木を引っこ抜き、ボスが地属性魔法で地ならし。
数日で二つ目の道が完成した。
そこから更に半月後──
島の少ない住人──いや、シアと二人だった頃に比べれば大勢と言えるな──全員で船着き場で、海に向かって手を振る。
トロンスタ王国からの増援部隊、大工職人軍団を乗せた船に向かった。
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