第8話

 図書室棟の隣に白花と陣さんが待っています。


「姉ちゃんは一人だと危なっかしくていけない」


 不機嫌そうな白花はわたしと陣さんの真ん中に立ちます。


「炎華、君の『絶対正義』を見せてもらうよ」


 やはり、戦う事になりました。相手は五芒星の一人……わたしは自分の運命をかけて戦う事にしました。


『レディーゴー』


 白花が決闘の開始を合図します。


 わたしは『剛力の剣』を召喚します。陣さんも魔法陣を描き見上げる程の鉄巨人を召喚します。鉄巨人は特大の剣を握り絞めています。しかし、いかにも素早さは無さそうです。


「姉ちゃん、油断するな!」


 白花のかけ声と共に鉄巨人がスケートを滑る様に猛スピードでわたしの間合いに入ってきます。よく見ると鉄巨人は数センチ浮いています。


「少しの力でスピードを出す工夫だ。油断していると一瞬で勝負がつくぞ」


 陣さんが解説します。あの巨体で摩擦がゼロとはさすが五芒星の一人です。振り下ろされる剣を『剛力の剣』で受け止めます。


 ガッジン!


 鈍い音がなり剣と剣が相まみえます。


「重い……」


 わたしは後ろに飛び間合いをはかります。しかし、素早く鉄巨人が更に切りかかってきます。


「つ、強い……」


 剣で受け止めるのが精一杯です。とにかく、あのスピードを止めないと……。

わたしは『剛力の剣』を地面に挿し込みます。


「うん?」


 陣さんが警戒します。そう、炎のムチが地中に走らせて鉄巨人の足元に絡みつきます。動きを止める事に成功です。


 わたしは水平の飛び剣で鉄巨人の胸を刺します。この手の召喚獣は核を持っています。


『剛力の剣』で鉄巨人の全身を探ります。


「右腰か!」


 わたしは素早く第二撃を放ちます。右腰にヒットさせて核を壊します。


「甘い!」


 陣さんが叫びます。


これは……?鉄巨人が自爆して全身に鉄の破片があたります。わたしはボロボロになり倒れ込みます。


 陣さんが小さな剣を召喚して歩いて近づいてきます。勝負ありです。わたしの体は動きそうにありません。


「もう、やめて!」


 遠くから輝夜さんの声が聞こえます。輝夜さんは走ってこちらに来ます。


「炎華さんはわたしの為に『絶対正義』を貫きました。このシャドーカードを手放します」

「そうか……」


 陣さんが立ち尽くします。そう、陣さんの愛する輝夜さんが消えるのです。輝夜さんは陣さんに『シャドーカード』を手渡します。


 それから、白花がわたしに近づき癒しの水を召喚します。起き上がると陣さんが『シャドーカード』をわたしに託します。


「君なら一番いい形で、この『シャドーカード』を使ってくれるだろう」


 わたしの願い……。


 この召喚術における対価の塊である『シャドーカード』を手にします。願えば、わたしの『絶対正義』における大切な人に会う事も出来るはずです。


……。


 長い沈黙の後で、わたしは魔法陣を描きます。『シャドーカード』を置くと局所的に大地が揺れます。そして、閃光の後に少女が現れます。


「佐奈!」


 輝夜さんが叫びます。ふ~輝夜さんの妹さんの霊体だけの召喚は成功です。


「わたしがここに居ると言うことは、お姉ちゃんが死を受け入れたのですね」

「はい、本当の『絶対正義』が何であるか教えて貰いました。わたしは妹の佐奈と共に永遠の眠りにつく事にしました」


 抱き合う二人は『シャドーカード』の消滅と共に、光の粒となり消えていきます。陣さんが泣いています。そっとしておいてあげましょう。


 すると雨が降ってきます。


「天も泣いているのか……」


 白花が呟きます。わたし達はいつまでも空を眺めていました。


―――……。


 わたしと白花はとある墓地に来ています。二人のお墓参りの為です。


 うん?


 先客がいました。40歳程の夫婦の様な二人が輝夜さんと妹さんのお墓に花をあげています。


「あら、輝夜さんのお友達?」

「はい」

「輝夜さんも喜ぶわ」


 二つある墓石にわたし達も祈りを捧げます。


「わたし達家族は家が狭いから姉妹の部屋は一つだったの、だから墓石くらいは別けてあげたの」

「隣合っています。きっと、寂しい事は無いでしょう」

「そうね……不思議な話だけど姉の輝夜さんが彷徨っているみたいな感じを受けていたの。でも悲しい話です。そう、妹の佐奈さんを事故で亡くして追いかける様に輝夜さんも行ってしまったから」

「そうですか……」


 わたしと白花は墓地を後にすると。初夏の風が舞います。日射しが毎日のように強くなる季節です。それでも遠くで雨の様です。帰り道で虹に遭遇します。


 雨のち晴れの気分です。

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S.S~絶対正義~ 霜花 桔梗 @myosotis2

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