第76話●家族との夕食
お兄様と一緒にナンシーを連れて食堂へ移動しました。
家族用の食卓は10名ほどの小さなもので、空間を広く取り過ぎていないお陰で会話もしやすく、温かい雰囲気で食事が出来る空間になっています。
今日は入り口から一番遠い席にお父様、その右側に私、左側にお兄様、私の隣にお母様が座りました。
「ロゼリアーナ、お帰りなさい。先ほどは出迎えられなくてごめんなさいね。外出先で予定より時間がかかってしまったの」
お母様は私をを見ると眉を下げてそう言われました。
「はい、ロゼリアーナ帰って参りました。
やはりそうでしたか。お母様のお姿が見えなかったので、外出されてまたいつものように引き止められていらっしゃるのだろうと思っておりましたわ」
私がそう言うとお父様とお兄様も声を出してお笑いになられたのでお母様がむくれてしまいました。
「ドロシー、そんな顔をしてはいけないよ。引き止める相手の好意を断れない貴女の優しさを私達は良く知っている。だからつい微笑ましくなってね」
「それでもお笑いになられなくてもいいじゃありませんか」
お母様の明るい碧眼でじっとりとみつめられたお父様は、微笑みを返しながら立ち上がると席まで歩み寄られてお母様を抱き締めました。
両親の仲睦まじい様子を私は久しぶりに見ましたが、見慣れていらっしゃるお兄様が呆れた声で止められました。
「ほらお二人とも、ロゼッタがお腹を空かせて待っています。母上、私も笑ってしまい申し訳ありませんでした。父上がおっしゃったように母上はお可愛らしくて、ついね。父上も席へお戻りください。メイド達が困っていますよ」
お兄様に私のお腹か空いていることは先ほど知られてしまっていたので、私は微笑んでお父様から向けられた視線を受けました。
次いで目をやれば、夕食を運んできたメイド達がアーマンドに食堂の入り口で止められていたようでしたが、やはり皆も慣れた様子で、お父様が席にお戻りになられると配膳をして退出して行きました。
アーマンドが食前酒を注いで回り終えるとお父様の食事の挨拶後、久しぶりに家族揃っての夕食が始まりました。
ベーコンとチーズのマッシュルーム焼き
黄金色のコンソメスープ
白身魚のムニエル、生クリーム仕立てのソース
桃のソルベ
イノシシ肉の赤ワイン煮
ブラックオリーブとグリーンのサラダ
紅茶シフォンケーキのベリーソースかけ
食事を進めなから使われている食材の話になりました。
「ロゼッタ、これは父上が先日仕留めて来られた大猪だよ。うちのはしっかり下処理してあるから臭みがなくて美味しいよね」
「ジャニウス、私じゃなくて私達だ。アーマンドも久しぶりだったが、お互いまだジャニウスには負けてないな」
「いえ、ジャニウス様も先日大熊を仕留められたときの様子を伺いましたが、全く危なげなかったそうです。一度また手合わせしていただきたいですね」
「アーマンドにはまだ負けるよ。でもそうだね、なら近いうちに手合わせして欲しいな。ナンシーも一緒にね」
アーマンドの言葉を聞いたお兄様は嬉しそうですわね。お兄様とアーマンドの手合わせですか、その時は私も見学させてもらいましょう。
「ロゼリアーナ、このベリーソースのベリーはナンシー達が森で採って来てくれたのよ。最初のチーズはモチェスのお
お母様が夕食メニューの材料の仕入れ先など詳しい理由は、食事や屋敷の絵画、備品選びや配置といった屋敷内の采配はほとんどお母様が執っていらっしゃるからです。
対外担当のお父様と二人三脚でこの広いパラネリア領を治めていらして、領民をとても大切にされるので両親は領民達からも親しまわれています。
「ベリー摘みですか、懐かしいですわ。森のいつもの群生地でしたら沢山摘めているのでしょうね」
「そうね、まだしばらくは収穫出来そうだと聞いていますよ。先日の分は厨房でジャムを作って瓶詰めしてましたから、また美味しい料理やお菓子にしてもらえるわ」
「そう言えば今日の朝食ではヨーグルトにかけてあったな。朝から甘い物を食べるのは好きではないが、我が家のジャムは甘さが控え目だからいいね」
以前、我が家のジャムはお父様好みにしてあると以前厨房長が教えてくださいました。
「砂糖が控え目な分、あまり長く保存が出来ませんからね。使えそうなタイミングがあればいつでも使って貰うように話してありますわ」
「甘いものを口にしても訓練量を増やせば体重の心配はいらないね、ロゼッタ」
「私はお兄様の訓練には付き合いませんわよ。それに食べ過ぎに注意していれば大丈夫なはずですから」
ベリーは好きですけれど、そんなにジャムばかり食べるわけではありませんわ……ほどほどですもの。
「でもロゼッタはベリーのジャムが好きだったろう?だからナンシー達が摘みに行ったんだよ」
「まぁ、そうでしたの?ナンシーは覚えていてくれたのですね。次は私も一緒に行きたいですわ。ふふ、摘みながらいただくのも美味しいのですもの」
家族と笑いながら食べる夕食は懐かしくて温かく、ただただ楽しく過ごすことが出来た時間でした。
そして心もお腹もいっぱいになってから談話室へと家族揃って場所を移したのでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます