第10話●王妃?と前王妃
アクセサリーと紅茶とケーキを堪能した翌朝は宣言通りにアムネリアがカーテンを開けに来てくれました。
今朝もエドワードのご健勝を祈ってから活動開始いたしましょう。
アムネリアの髪には彫金のバラのバレッタが付けられてますね。
「やっぱりアムネリアの髪色にピッタリだったわね。付けてくれて嬉しいわ」
カーテンを開けて振り返ったアムネリアも嬉しそうです。
「ロゼリアーナ様、このように高価なものをいただき本当にありがとうございます。美しいものを身に付けるといつもより身が引き締まるような気がしますね」
「ふふふっ、アムネリアはいつだってしっかりしてますわ。お姉様と呼びたいくらいにね」
「まぁっ!ふふふふふっ」
笑える私は大丈夫だとアムネリアも喜んでいるみたい。
実家に帰るくらいまで本当にお姉様と呼んでもいいのではないかしら?
「ロゼリアーナ様、前王妃様との面会のお約束の件ですが、今日の午後はいかがかとの連絡が朝一番で入りました」
「あら、早々にお会いいただけるのね。あちらの予定に合わさせていただきましょう。そうすると今日の城下散策はなしね」
「私はお土産を買いに行って参りましょうか。先日のお店で包んでもらえるよう頼んでみます」
「それはいいわ!お願いね」
義母上様も甘いものがお好きでいらっしゃるから喜ばれるでしょう。
※※※※
義母上様はエドワードの戴冠の儀の後、義父上様達と伴にお城を下がられ、城下の邸にに移られました。
前国王の義父上様の正妻が前王妃の義母上様。
お名前はマリーテレサ・モル・カラマイア様とおっしゃるエドワードのご母堂。
ご母堂は生きている人にも使って良い言葉ですのよ。
亡くなられたご側室は義父上様の幼馴染でいらしたようですが、お城の行事などには参加されておられなかったので、どのような方だったのか詳しく存じ上げませんでした。
宿屋から歩いて義母上様の邸に着くと、リカルドとのやりとりをされていた門番に驚かれてしまいました。
そうでしたわね、王妃が歩いて訪問するとは普通ではありえませんものね。
しかし、今の私は王妃ではありませんので気にしないでくださいとはここでは話せません。
門番からの連絡で邸から迎えの馬車が着きました。
もともと前国王の邸ですから玄関まで距離がありますのよね、今は義母上様がお一人でお住まいですけれど。
馬車で邸の玄関に到着すると使用人達が両脇に並んで挨拶してくださいました。
義母上様の侍女に案内された客間で待っておりましたら可愛らしい真っ白な猫がどこからか私の足下にやって来ました。
「あら、ムムールはロゼリアーナが気に入ったみたいですね」
ふわりとした微笑みを浮かべて義母上様へ入っていらっしゃいました。
「義母上様、お久しぶりでございます」
カーテシーをしてご挨拶。
「あら、義母上様はやめてとお願いしてましたわよ?」
「はい、マリー様、お久しぶりでございます」
一度固まった笑顔が緩んだようで安心いたしました。
「さぁ、お掛けなさい」
お言葉に従ってソファーに座ると紅茶とお菓子が運ばれて来ました。
ムムールと呼ばれた猫はマリー様の隣で丸くなりました。
「今日はロゼリアーナだけなのね?エドワードがいると貴女とのおしゃべりが続けられないからつまらなかったのよ」
「そのようにおっしゃっていただけるとは…」
「本当よ。エドワードの貴女への執着心には親の私も驚いたわ。 披露宴の時にはくっつき過ぎでアルに叱られていたわよね 。ロゼリアーナは気にならなかったのかしら」
「私はとくに気にはなっておりませんでしたよ。初めてお会いしたころからエドワードはあのようでしたので」
「……ずっと?ロゼリアーナはなんというか、まさに泰然自若というタイプなのね」
「そうなのでしょうか。確かに私はあまり感情に振り幅がある方ではございませんが。
されど、さすがに今回は驚いてしまいましたわ。急いで離婚申請書に署名をして提出するようにと伝えられたのですもの」
「は?」
紅茶を口元に寄せたままマリー様が止まってしまわれましたが、お付きの侍女がカップをそっと持ち上げてソーサーへ戻されました。
素敵な衣装を汚さずに済んで良かったですわ。
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