第431話 一之祐の憂鬱

 そのころ、砂漠の中、駐屯地に向かって一人かける一之祐。

 そんな彼に、一頭のラクダが駆け寄ってきた。

 そのラクダにはガンエンが騎乗していた。

 走る一之祐に並走する。

「一之祐様、大変です! こんなところで悠長に何をなさっているのですか!」

「おぉ、ガンエンか! ちょっと、ランニングをだな!」

「それどころではありません! 駐屯地が大変なんですよ!」

「それは大変だな」

 まるで人ごとである。

「神による襲撃で、駐屯地内の兵士は同士討ち、今や、全ての兵が、神の掌中に落ちました」

「まぁ、それは、何とかなると思うが……それよりも、このフィールド吹っ飛ぶかもしれんぞ」

「なんですと!」

「とりあえず、今すぐ、駐屯地に戻り、皆を連れて内地に撤退するぞ!」

 一之祐は、ガンエンの後ろに飛び乗った。


 懸命にラクダを走らせるガンエン。

 その後ろでため息をつく一之祐

「はぁ、つまらん……」


 懸命に手綱を操りながらガンエンは聞いた。

「なんかつまらなそうですね」


「そうなんだよな……なんか、不完全燃焼と言うか、なんというか、最後がネズミだったからな……」

「一之祐様は、一体、何していたんですか!」

「ラットレースかな……なんか、ずーっと同じところをぐるぐる回り、同じことを繰り返しているような……」

 一之祐は、魔人国の騎士の門に向かって走っていく魔物の大群を見ながらつぶやいた。

「なぁ、ガンエン……不老不死とは本当につまらんな……」

「知らんですよ! 俺らは年取って死にますから!」


 しかし、一之祐は、この60年後に赤の魔装騎士であるソフィアと出会っているにもかかわらず、この時の女魔人のソフィアと同一人物と気づかなかったようである。

 まぁ、そりゃ無理というものかもしれない。

 何せ60年もの時間が経っているのだ。

 権蔵やガンエンだって、好青年だったものが、年季の刻まれたジジイに変貌しているのだ。

 さすがに、あの女魔人が、同じ姿でいるとは想像しにくい。

 だが、それが答えではない。

 ソフィアの姿を見たのが一之祐だったということが問題なのだ。

 この一之祐、戦う事しか能がない脳筋バカ。

 女の顔なんて全てへのへのもへじのように同じように見えている始末。

 到底、昨日見た女の顔だって、全く区別なんてつきません。

 そういうやつなんです……


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