第402話 雌クジャク(6)

「あのミーアがねぇ……」

 ミーキアンは少々不思議であった。

 ミーアは、ミーキアンの神民魔人である。

 少々、ギャンブルが好きな性格がたまに傷ではあるが、職務には忠実な女である。

 そして、何よりもミーキアンに対する忠誠心は、絶対であった。

 そのため、ミーキアンの命令は、自分の命を犠牲にしてでも全うする性格。

 ミーキアンの命令の前では、いくら都合のいい交渉話をもってしても一切の妥協を許さず、融通が利かない。

 堅物にして猛将!

 それがミーアであった。

 そのため、ミーキアンにとって、唯一信頼できる神民魔人であり、右腕とも言って過言ではなかった。

 そんなミーアが、ミーキアンをだしにして冗談を言う。

 少々考えにくいことではある。

 だが、もしかしたら、ミーアもまた、聖人世界に行ったことによって、少し変わったのかもしれない。

 ――この男のせいか……

 心変わりをした原因が、タカトにあるのかもしれないと気づくミーキアン。

 少し、タカトに興味を持ったようである。


 魔獣回帰をとき魔人に戻ったミーキアン。

 一糸まとわぬ褐色の肌。

 その裸体をエメラルダの肩越しに凝視するタカト。

 近くに行って、もっと見てみたい!

 だが、一歩でも近づけば、確実に死ぬ!

 タカトの本能が、動くことを拒絶した。


 側仕えのリンがミーキアンに天鳥の羽衣を手渡した。

 それを体に巻きつけるミーキアン。

 その薄い羽衣ごしにうっすらとピンクの出っ張りが突き出ているのがタカトには分かった。

 イヒヒヒヒ

 タカトがいやらしく笑う。

 本能によって、動くことを遮られたのにもかかわらず、思考だけは暴走していた。

 ――あのピンクのボッチリを押すと何がおこるのだろう?

 魅惑の扉が開くのだろうか?

 それとも可愛らしい喘ぎ声がひびくのかしら?

 いやいや、きっと、大きなタカト君の断末魔が鳴り響くのに違いない。

 だが、それでも行くのが男と言うものだろう! なぁ!

 タカトの鼻息が荒くなる。

 先ほどの裸体もいいが、やはり、羽衣から透けて見える裸体の方がエロい!

 タカトのテントを張った下半身が、エメラルダの背中を押した。

 ふと振り返るエメラルダ。

 そこには、だらしなく歪んだタカトの笑み。

 さすがに元騎士。

 悲鳴こそ上げないが、少々ドン引きのご様子であった。

「タカト君……私の揉んで落ち着いたら? あっちに手を出したら今度は本当に死んじゃうよ」

 へっ?

 タカトは膝まづくエメラルダに目を落した。

 なんで今まで気づかなかったのだ……

 上からのぞき込むその視線の先には、襟の隙間から大きく覗く神秘の谷間。

 その深き渓谷が、服を張りさけんばかりに押し出している。

 おぉぉぉ!

 胸の白肌に刻まれた一条の黒い線。

 これほどまでにエロいものとは。

 すでに思考がパンクしたタカトの手が、ゆっくりと伸びていく。

 ビシッ!

 タカトの後頭部をビン子のハリセンがヒットした。

 ウゴ!

 タカトの頭が、コキンと直角に折れた。

「変態!」

 アッカンベーをするビン子


「エメラルダ、突然の来訪。事前に言ってくれれば、リンを迎えにやったのを」

「今回は、やむを得ず魔の融合国に入ったものでして」

「しばらく、こちらにはおるのであろう」

「そうさせていただけるのであれば、ありがたいのですが」

 エメラルダは、小門のなかに隠れているネコミミのオッサンの事を考えた。

 今、引き返してたら、きっと遭遇するだろう。

 ミーキアンから助っ人を借りたとしても、誰かは毒にやられてしまう。

 それどころか、魔の国の助っ人の姿を見られた上に取り逃がせば、大変なことになる。

 小門の中の万命寺の僧やスラムの住人達まで、魔の融合国と通じた罪で虐殺されかねない。

 ここは、慎重に時間をかけて戻ることが賢明だろう。


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