第四章 クジャクと獅子
第397話 雌クジャク(1)
魔人世界の街並みは、聖人世界のそれとは異なっていた。
最も大きな違いは、大門と神民街を取り巻く城壁がないことである。
と言うのも、小門などを通ってやってくる外敵、すなわち、魔人世界においていえば、人間であるが、その人間は、魔人世界に入ったとたん、タカトたちのようにエサとして襲われてしまうのだ。
そのため、神民魔人を外敵である人間から守る必要性が全くないのである。
それよりも魔人世界において、神民魔人の脅威は、同種の魔人たちであった。
弱いものは食われる。
すなわち、魔人騎士の力が弱ければ、その神民となっている魔人は、他の魔人たちのエサになりかねないのだ。
魔人騎士たちは互いに互いをけん制する。
そして互いに干渉しあわないようにすることが、暗黙の了解となっていた。
そのような考えが、街の作り方に大きく表れていたのである。
中心にそびえる大門の周りには、街ができている。
だが、その町は聖人世界の神民街と異なり、一般魔人が住まう一般街であった。
そして、その街を取り囲むかのように、騎士の門が8つ立っており、その騎士の門の背後に、魔人騎士が住まう城と神民魔人たちが住まう街が作られていた。
すなわち各魔人騎士たちの距離が最大になるように町が配置されていたのである。
聖人世界とはまるで逆なのだ。
ミーキアンの城の城門をくぐるタカトは、その高い城の壁を見上げた。
ミーキアンは第三の騎士の門を守護する魔人騎士である。
すなわち、この城の前面にそびえる重厚な門が第三の騎士の門と言うことになる。
この騎士の門と、ミーキアンの城は、ほぼほぼ同じ大きさであった。
高さは、聖人世界の城壁とほぼほぼ同じ4階建て。
造りは、石を積み上げたものである。
――魔人もこのような構築物を作ることができるのか。
タカトは少々感心した。
と言うのも、聖人世界において魔人は知能を持っているとはいえ、いまだ人間の知能には、とうてい及ばないと言われていたのである。
そのため、魔人ごときが、人間と同じような構造物、文化を有しているなどと、聖人世界の人間は誰も思っていなかった。
まぁ、それは仕方ないことなのだ。
魔人世界に入るものなどごくわずか、アウトローか、密輸業者、後は、情報をやり取りする者ぐらいなのである。
そのため、魔人世界の情報など、一握りの人間にしか伝わっていなかったのだ。
タカトのような一般国民、いや、アルテラのような内地にいる神民ですら、魔人というものは、原始人のように愚かな生き物であると限られた人間によって流布された言葉を信じるしかなかった。
しかし、タカトは仰ぎ見た頭を少々傾げた。
ミーキアンの城の姿には、どことなく何か違和感がある。
ここだと言って、すぐさまその違和感を特定できるものではないのだが、どこかしっくりと来ない。
その城には色がなく、石の色のみの単色である。
そして、何よりも気になったのが、聖人世界の王宮などと比べると、どことなくバランスが悪い。
なにかすわりが悪いのだ。
分かりやすくいえば、素人が真似して作りましたって感じの、何かがおかしい感じなのだ。
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