第344話 ミーアの心変わり(3)
「この小門は、魔の国に通じてるらしいんだ」
タカトは、オオボラが言ったことを思い出した。
「この小門を通って、魔の国に行って、ミーキアンに相談してはダメかな?」
タカトは、バカな思いつきだと思った。しかし、現実問題、ココにいる皆の知恵を絞っても解決方法は浮かばないのである。ならば、魔の国に行けば、もしかしたら、別の方法があるのかもしれない。人間では思いつかないような方法が。
しかし、エメラルダは顔を曇らせた。
「魔の国は危険よ。魔の国に入れば、人間はただのエサ。あっという間に襲われてしまうわ……」
「でも、こっちにはカルロスのオッサンも、いるじゃないか」
タカトはカルロスをちらりと見た。
エメラルダは考える。確かにカルロスは強い。しかし、魔の国には、魔物や魔人が無数にいるのだ。それをカルロス一人で相手にできるはずがないのである。
「無理よ……」
「そっか……」
まぁ、タカト自身もそんなことはうすうす感じていた。
ソフィア一人に、カルロスやピンクのオッサン、ネルの三人がかりでもフルボッコにされたのである。
いくらソフィアが荒神と魔人の融合体であることを差し引いても、カルロス一人では荷が重いことはすぐ分かる。
「なら……情報の国や養殖の国にミーアを連れて行って、そこから魔の国へ入れば?」
タカトは、次々と代替案を考え出す。
「それも難しいわ……情報がなさすぎるわ……」
エメラルダは、冷静にタカトの案を否定する。すでに、その表情は騎士の時の指揮官の顔であった。その案に対して、メリットとデメリットを瞬時に判断し、的確に答えていた。
聖人世界には、融合国以外にも情報の国、医療の国、繁殖の国など全部で8つの国が存在している。そして、それぞれの国に大門があり、8つの騎士の門が存在しているのである。ミーアが通ることができる中門も、他の国ならあるのかもしれない。ならば、その中門をとおり、魔人世界へ帰還し、ミーキアンが住む魔の融合国に戻ればいいのではないかと言うのが、タカトの案であった。
だが、この案には決定的な欠点が2つあった。
まず一つ目が、中門がどこにあるのか、その情報が全くないのである。
次に二つ目が、その国まで、どうやってミーアを輸送するかである。神民魔人であるミーアが見つかれば、即、殺害される。それどころか、それを運搬している者たちも、魔人と通じているということで、その場で惨殺されても文句は言えない。
しかし、現実問題、この方法しかないのである。エメラルダには分かっていた。
ならば、今は、とにかく情報である。
どこの国に中門があるかを探し出す必要があるのだ。
しかし、今のエメラルダや万命寺の僧達は追われる身。小門の外においそれと出る訳にはいかない。
ならば、どうやって情報を手に入れたらいいのだろうか……
考えあぐねるエメラルダ。
!?
タカトとエメラルダはハッと顔をあげ、互いに見合わせた。
どうやら二人とも同じことを思いついたようである。
「商人隊だ!」
二人の顔から笑みがこぼれた。
その横でガンエンがウンウンとうなずいていた。
まさか、このジジイ、ここまでの事を考えていたのではないよな……
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