第316話
地に膝をつくカルロスは、腹を押さえる。残った手で口から流れ落ちる一筋の血をぬぐった。
「……神民魔人クラス……いや、それ以上か……」
だが、カルロスの魔装装甲もまた、砕け散り、ボロボロの状態である。
そして、時が来る。
カルロスの魔血ユニットもまた、警報音をあげだしたのだ。
このままでは、ソフィアにやられる前に、人魔症を発症してしまう。
それでは、完全に勝機は絶たれる。
打つ手がないカルロスは唇をかみしめる。そして、ゆっくりと魔血タンクを外すと、魔装装甲を解いた。
その様子を悔しそうに見つめているネルもまた唇をかんでいた。
魔人がいると分かっていれば、もっと魔血タンクを用意したのに……いや、複数の魔装騎兵を連れてきていたはずだ。
だが、今、後悔しても、それは遅い。
――今は、我々だけで、この魔人を排除する!
ネルは、ソフィアに視線を戻した。
しかし、そこには、ソフィアの姿はすでにない。
――!?
視界からソフィアが消えていたのだ。
――しまった、どこに?
ネルの視界の底から何かが高速で迫りくる。
咄嗟にネルは、長剣の腹で受けきった。
だが、その勢いは止まらない。
白銀の破片をまとい、ソフィアの拳がネルの腹部を突き上げる
砕け散る長剣と共に、ネルもまた吹き飛んだ。
「こしゃくな!」
天へと伸びきったソフィアの腕をかいくぐり、カルロスがネルの懐へ飛び込んだ。
ソフィアのがら空きのなった腹部へと、渾身の掌底を繰り出した。
しかし、その一撃もまた、神の盾によって防がれた。
ソフィアの右ひじが、腕が伸びきるカルロスの肩へと落ちてくる。
渾身の力を込めたカルロスの体は動かない。いや、動けない。
目だけが、ソフィアの肘先を追っていた。
だが、そのカルロスの背後から、もう一つの大きな影が飛び上がっていた。
ピンクのオッサンの体が、ソフィアめがけて落下する。
頭上に組んだ両の手に、渾身の力を込めて振り下ろす。
だが、これもまた、神の盾が防ぎきる。
ソフィアの右手が、軌道を変えて再び上空へと振りぬかれていた。
それに合わせるかのように、神の盾もまた、ピンクのオッサンの攻撃を防ぐために頭上へと移動していたのである。
だが、ピンクのオッサンの一撃を防ぎ切ったソフィアの視界が、ぐるりと回った。
懐に入ったカルロスが、自らの体をひねるとともに、ソフィアの体を投げ飛ばしたのだ。
「つぶれろ! この魔人がぁぁぁ!」
体中のバネを使い、ソフィアを投げ飛ばす。
ソフィアの体が、床の上を激しく転がった。
球体の神の盾を持つミズイたちと異なり、盤上の神の盾しか持たないソフィアは、全ての攻撃を無効化することは不可能であった。
「行けるわよ!」
地をころがる無様はソフィアを見たピンクのオッサンが、かわいらしく飛び跳ねた。
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