第302話

「ほほう……これを作った少年ではないか……」

 タカトに近づく足音が。

 ミズイとタカトは顔をあげた。

 二人の視線の先には、嬉しそうな微笑みをたたえたソフィアが、タマホイホイを手の上で転がしながら近づいてきていた。

 ――あっ!それは俺の……

「それを返せ!」

 タカトは、ソフィアをにらんだ。

 だが、もっと驚いていたのはミズイの方であった。

 おもむろに立ち上がったミズイは、ゆっくりと、ソフィアの方に歩き出す。

 ゆっくりと手を前に出し、まるで、ソフィアを迎え入れようかと、微笑んでいた。

「マリアナ……こんなところにいたのね……」

 ミズイの目から、とめどもなく涙がこぼれていた。

「マリアナ……私よ、ミズイよ……」

 ミズイは、ソフィアに懸命に微笑みかけた。

 しかし、ソフィアは鼻で笑う。

「何を言っているのだ、コイツ?」

 まるでミズイのその言葉が、全く分からぬ様子であった。

「マリアナ! 覚えてないの! 私よ! ミズイよ!」

「知らんな!」

 ソフィアが腕を振ると、ミズイの体が吹き飛んだ。

 地をするミズイの体から、土ぼこりが舞い上がった。

 どうして……マリアナ……覚えてないの……

 顔についた汚れを払うミズイの涙は、いつしか悲しみの涙に変わっていた。


「小僧! 素直に製造方法を教える気になったか? 製造方法を教えれば私のもとで可愛がってやるぞ」

 ソフィアは自分の胸を両手で下から持ち上げて、いやらしくゆすった。

 大きい!

 タカトの目が、揺れ動くソフィアの胸に合わせて上下する。

 ――あの胸で可愛がってもらえるのか……それは、それでいいのかも

 タカトのうすら笑いを浮かべた唇からよだれが垂れた。

 ビシっ!

 タカトのほっぺたをハリセンがしばいた。

 ふと、自分の膝の上を見るタカト。

 そこには膝の上に頭を乗せたビン子が小刻みに震えていた。

 まるでタカトの心を読んだかのように、ビン子の目が怒っていたのだ。

 ひえぇぇ!

 タカトはビビった。

 ――あのおっぱいは、やめとこう! うん! やめとうこう!

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