第117話 凋落のエメラルダ(9)
カリアは、男らに連れられ地下の食料貯蔵庫にいた。
壁の上部にかすかに空いたスキマからわずかに風が吹き込むだけの薄暗いその部屋には、男たちの切れる息と伴に、酒の香りと生臭い匂いが充満していた。
カリアや、アルテラをはじめとした
そのため、現状、人魔症を恐れていない男たちにとっては緑女は、最高の慰みのもであった。
カルロスがいないことをいいことに、貯蔵庫にたむろむ奴隷男たちの数は次第に増えていった。中には一般兵の姿も見える。
貯蔵庫内には、酒など持ち込まれ、カリアの後ろに列をなしている男たちの宴の場となっていた。
カリアは、気を失うと、貯蔵庫の中に掘られていた井戸から汲み上げられた冷水をかけられ、無理やり起こされていた。
テントで男たちに襲われて以来、寝る間もなく入れ替わり立ち替わり男たちの相手をさせられていた。
しかし、今では、テントにいた三人の緑女はカリアを残すのみとなっていた。
そう、カリアは、ただ一人で、この貯蔵庫の中で、数多くの男たちの慰みものとして
「まだ、壊れていないじゃない。もう少しお預けね」
貯蔵庫に食料を取りに来た奴隷女がカリアを見ながら呟いた。
そばで酒を飲んでいる奴隷男がつまらなさそうに呟いた。
「えー、そんな……もうガバガバなんだよ」
女は力なく揺れているカリアのお尻を叩いた。
「まだ、使えそうな穴あるじゃない。それじゃ頑張ってね」
奴隷女は、必要な食料を取ると階上へと、梯子を使い上がって行った。
「仕方ねえな。こっちも壊せだとよ。本当に女どもは容赦ねえな」
笑う男がカリアの腰を引きずりあげると、自分の腰を打ち付けた。
赤茶色い滴が飛び散った。
「汚ねぇ!」
まわりの男たちから笑いが漏れる。
もう、声すらあげられないカリアは、力なく為されるがまま揺れていた。
旦那さま……旦那さま……旦那さま……
まぶたに浮かぶ黒い虎の魔装騎兵だけが、今のカリアの心の支えであった。
一人の男がカリアの顔の前に立ちカリアの鼻をつまむ。
「俺たち、なかなか人魔症にかからないな。よほど知能が低いんだな」
「確かに、その通りだな。俺たちは猿か!」
互いに向かい合って腰を振る男たちは、大きく笑った。
「ちげえねえ!」
周りの男たちもつられて笑った。
その時、駐屯地内に警鐘が鳴り響いた。
向かい合う男たちの動きがぴったりと止まる。
何事かとあたりを見回す。
階上から敵襲!との怒声が響く。
男たちは、慌てて階上へと、梯子を登って行く。
男たちがいなくなった貯蔵庫には、カリアが、力なく倒れていた。
しかし、動かない。動けない。動きたくない。
静かになった貯蔵庫に、小さな嗚咽が漏れ広がる。
微動だにしないカリアを、階上の奴隷女が覗きこむ。
うつぶせで動かない姿を見ると、鼻で笑い、扉をおもいっきり閉める。
そしてなにやら、ガチャガチャと鍵を閉め始めた。
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