第33話 激闘?福引会場?(20) ルパン・サーセンでサーセンww

 そんなタカトの驚きなど気にすることなく、またもや……

「なんじゃこれぇぇぇぇぇえぇ!」

 起きたオレテガも驚いていた!

 そう、彼が見る自分の両の手は真っ赤な血でまみれ、ポタポタと雫を落としていたのである!

 もしかして、彼こそが真のジーパン刑事だったのか!


 いや、皆さんよくご存じのように……彼の下半身はスッポンポン!

 しかも、股間にあるはずのチ○コがないのである……

 というか、今は……そんな余裕をかましているレベルの話ではない……

 縫合されることもなく放置された続けた傷跡からは、いまだに赤き血潮が滴り落ちて……広がり続けていた血だまりは、オレテガのお尻をお猿のように真っ赤に染めあげていたのであった。


 それを見るタカトの思考はフル回転した!

 考えろ! 

 考えろ! 俺!

 この状況を整理するんだ!

 血が流れている……血が……

 もしかして、コイツは、お猿であってゾンビでない?

 そう、赤き血が流れ続けているという事は、死人ではないという事なのだ……

 という事は生きている……

 生きているから歌うんだ……

 お猿はみんな生きている!

 生きているのが正しいんだ……

 ピーの穴を太陽に透かして見れば……

 真っ赤に流れるチ○コの血潮……

 ミミズだって……

 オカマだって……

 コロンボだって……

 みんなみんな生きているんだ!

 友達なんだ!

 ということで、刑事コロンボのような理詰めで自分を納得させるタカト君であったwww 


 一方、オレテガも自分の置かれている状況をどうやら理解したようで、先ほどから体がガタガタと大きく震え出していた。


 おそらくその痛み……病院のベッドの上で麻酔が切れた後の手術痕などとは比較にならないほどの激痛に違いない……

「私の……私の……チ〇コが……」

 さすがにこの世の最強種と呼ばれるオカマであっても、オホホと笑う余裕もないようだった……


 だが、次の瞬間、握りしめた両こぶしをアゴ下につけるかのようにして立ち上がると……

「ついに、私♡ 女の子になれたのね♡」

 と、腰をふりふりぶりっ子ポーズ♡

 そんな腰が降られるたびに、血しぶきが辺り一面に舞い散っておりますが、どうもオレテガはどうでもいい様子。

 それほどまでに女の子になりたかったのだろう……


 うん?

 ……ということは……

 やっぱりこの穴、女性器やないかい!


 あほか!


 女性器の訳ないやろが!

 どこからどう見ても肉をえぐり取っただけのただの穴。

 マレーシアの熱帯雨林の奥底に咲くラフレシアのように、男といううっとおしいハエを寄せ付けるような肉の花などではないのだ!

 なぜなら今のオレテガの股間は熱帯雨林ではなく、アフリカのナミブ砂漠!

 そう、血で赤く染まった不毛の大地なのである。

 言い換えれば、完全脱毛されたムダ毛一本もないビューチフルなオマタなのである。

 そんなオマタにあく穴がどうして女性器といえようか!

 それこそまさにナミブの穴!

 ちなみにナミブとは先住民の言葉で「なにもない」という意味だそうだ。


 というか……このオカマ……マジで大丈夫なのかよ……

 これだけの出血量……普通の人間なら失血死ものである。

 だが、まるで「なにもなかった」かのようにふるまうオレテガを見ると、本当に痛みなど感じていないようにも思える。

 こいつら……マジで人間か……

 実は魔人の類だったりしてwwww


 だが、そんな腰を振るオレテガにかまうことなくセレスティーノは黒い三年生たちに命令するのである。

「さっさと、この悪の首領! いや、ルパン・サーセンを逮捕しろ!」

 ――なんだと、この悪の首領はコウスケではないのか!

 さらに驚くタカトとビン子。

 でも、その着ぐるみから覗いているのは、どこからどう見てもコウスケの間抜け顔なのだ。

 ――いったい何が……どうなっとんねん……

 もう、二人の思考が追い付かない……

 タカトとビン子はポカンとあっけにとられながら、事の顛末を呆然と眺めていた。


「ワハハハ! バレちまったかぁ~さすがはセレスティーノ! アホだと思っていたが意外にキレやがるw」

 ルパン・サーセンと呼ばれた悪の首領は、着ぐるみから覗く額に手を当てて大笑いしていた。

 だが、自分の完璧な変装がばれたのが、どうにも腑に落ちないのか、

「しかし、セレスティーノの旦那、なぜ、俺がコウスケでないといつ分かったんだ?」

 と、たずねる。


 ふっ! と鼻で笑うセレスティーノ。

「お前がコウスケでないことなど、ガラポンを引いた時から、とっくに〇っとお見通しなのだ!」

 と、仲間由紀恵さんが売れない手品師を演じた時のようにくるりと手のひらを回すと、サラリと続けた。


 先ほどまでステージの上で脱毛をされていたセレスティーノには、ガラポンのテントに並ぶ人の列がよく見えていた。

 そんな列の中に、明らかに変質者が見て取れたのである。

 日本科学技術大学物理学教授上田次郎! いや、融合国第八之騎士狂人セレスティーノとしての勘が冴えわたる!

 ――どんと来い!超変質者!

 まぁ、確かに、ロリコン写真をトレードするエロおやじどもは変質者といえば変質者なのである……だが、そんな変質者どもとは比べ物にならないほどの超変質者がいたのである。

 そこに並ぶは仮面ダレダーの悪の首領。

 だが、仮面ダレダーの熱烈なファンであるセレスティーノには分かるのだ……

 かつて……仮面ダレダーシーズン1において、あの悪の首領は……仮面ダレダー48の必殺技の一つ「義理チ〇コ返しはマシュマロもみもみでセクハラ解雇!」で盛大に爆死したのである。

 ――あの胸を鷲づかみにされた最後……実にエロおやじらしく変態だった……

 いやーーん♡えっちぃ~♡ドーーーン!

 ――悪の道を目指すもの同士として……その最後は……かくありたいものだ……


 だが、すでにシーズン4を迎えた今、悪の首領はロリコン美少女になっていたのである!

 しかも、そのコスチュームは肌の露出が多いペチャパイビキニときたもんだ!

 そんなロリコン美少女が上目遣いでモジモジと懇願する……

 「エロおやじのお兄ちゃん……ミーニャと一緒に悪いことしてくれたら……ミーニャが……エロおやじどころか、この!超キモキモ変態エロおやじ!って後ろ指さされるぐらい世間的に超悪いことを……もっと♡もっと♡教えてあげるよ♡……きゃっ♡言っちゃったぁ♡」


 最高!

 超!最高!

 眼が♡に変わったセレスティーノは、アゴのしたに両こぶしをつけながら腰を振るのである。

 ――俺も悪いこと頑張っちゃうんだから!


 セレスティーノがこう思ってしまうのも仕方ない……

 おそらく、世間一般的には、こんな可愛いミーニャちゃんと比較したら、あのヘルメットをかぶった仮面ダレダーこそが悪の首領だと思ってしまうのだ!

 そのせいか、今や主人公の座はミーニャちゃんに移り、仮面ダレダーは番組外でアルバイトをしなければならないほど身をやつしてしまっていたのである。

 仮面ダレダーでさえその始末……

 ならば、当然にシーズン1の悪の首領なんて、もう、むさ苦しいだけで誰も見たくはなかった。

 ということで!

 ――いまさらシーズン1の悪の首領⁉

 ふざけるな!

 ――この極悪人がぁぁぁ!

 しかも、なぜか、その極悪人たる悪の首領は二人もいるではないか!

 ――揃いも揃って、ミーニャちゃんを侮辱するつもりなのか!

 真の悪の首領はミーニャちゃん以外にあり得ない!

 悪の首領はミーニャちゃん以外に存在してはならないのだぁぁぁあぁ!

 そんなことも分からない馬のくそ野郎!いや、う〇こ野郎はどんな面構えをしているのだろうか?

 ――うん?コ……ウスケ? 

 悪の首領の着ぐるみからのぞく顔……自分の神民であるコウスケに似ているような気もしないでもない。

 しかも、揃いも揃ってなぜか、二人の悪の首領ともコウスケのような顔だちなのである。

 これは一体、どうなっとるねん!

 でも、ミーニャちゃんに善良なる心を売ったセレスティーノは、当然……

 ――そんなの関係ねぇ!

 セレスティーノにとって、神民であるコウスケであろうが、それは男!

 所詮、男なのである!

 男であれば、神民だろうが奴隷だろうがその価値は等しく平等! 無価値なのである!

 ということで! ミーニャちゃん侮辱罪で即逮捕だぁぁぁぁぁ!

 ――ミーニャちゃん! 見ててね! こいつら二人とも逮捕しちゃうからね♡

 おそらくセレスティーノは、ミーニャちゃんによる大人気予告コーナー「いじめて♡いじめて♡怪人改造! 来週の変人さんは~この人なんですぅ♡」のように、逮捕した二人をさんざんとムチ打ちながら、その人格が破壊されるまで憂さ晴らしをするつもりだったのである。


 というのも、ここ数日、セレスティーノはついていなかった。

 ことの発端は……宿場町に現れたコカコッコー討伐……

 初動が遅れたせいで人魔症が街に発生。

 まぁ……ここまでは中型の魔物が現れたのであるから、ある程度は想定内である。

 しかし、そこで一人の美しい半魔女を見つけたので、当然、お持ち帰りして、あれやこれやと悪いことをしてやろうと思っていたのに……それが悪かったのか……そこからケチが付き始めたのだ……

 こともあろうに、その半魔女は第六の神民兵ヨークの女だというではないか……

 ちっ! まあいい……女など、まだ腐るほどいるのだ!


 だが、それからが最悪……

 人魔掃討の手柄は人魔管理局長であるアルダインの愛人にとられ……

 得体のしれないピンクのオッサンに付きまとわれて評判を落とす……

 ついには、ババアのお登勢にも取りつかれて……両手に手錠をかけられた上にスッポンポンで町中を走り回ったのだ……

 その時、知り合った石川県在住の五右衛門どの……

 オイルパンを頭にのせた奴の情報と引き換えに手錠を切断してもらったのだが……

 そのオイルパン……ルパン・サーセンというコソ泥で、融合加工院から『オイルバーン』なる道具を盗み出していたというのである。


 ――あの時……目の前を『オイルバーン』を頭にのせたルパン・サーセンが走り去っていったというのに……私は何もできなかった……

 これ聞いたアルダインは、王宮にある謁見の間に備えられた玉座のひじ掛けに肘をつきながらセレスティーノを白い目で見下すのだ……

「セレスティーノ……お前は……本当に役立たずだな……」

「アルダイン様……申し訳ございません……この失態は、必ず……」

「必ず? 必ずどうするというのだ?」

「……必ず、ルパン・サーセンを逮捕し、オイルバーンなるものを取り返して見せます」

「よかろう。その言葉、忘れるなよ」

 うつむくセレスティーノは唇を強くかみしめる。

 ――このままではアルテラを妻に迎えアルダインの後釜につくという、私の野望が……水泡に帰してしまう……

 ならば、ここは何としてでもアルダインの信頼を取り戻したい。

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