第31話 激闘?福引会場?(18) パちんこ玉赭ブロー裏モード! 三毛猫HS発動!

 タカトなら何とかしてくれる……そんなビン子の思いなど、まったく我関せずのタカト君は床に落ちている青いリボンを拾い上げると、今度はゆっくりと悪の首領のもとに歩み寄った。

 そして、その手に握りしめられている肉切り包丁を取り上げたのである。

 この少年は、一体何をしようとしているのだろうか?

 控室にいる皆の視線は、当然にそのタカトの一挙手一投足に集まった。

 そんな熱い視線の中、膝まづいたタカトは畳の上に青いリボンと肉切り包丁を並べて置いたのである。

 しかも!

 しかも、こともあろうに! その上から『パちんこ玉赭ブロー三毛猫モードHS』から発射された液体をぶっかけたのである。


 どぴゅ♡ どぴゅ♡


 青いリボンと肉切り包丁の長い柄が、なんかイカ臭い白き液体でおおわれていた。

 おいおい……

 このシチュエーションで何やっとるねん! こいつ!

 いや、もしかしたらこの少年……いわゆる、物フェチとかというやつじゃないだろうか?

 今、この少年の頭の中では、ボンキュボンの青いリボンと、長く硬い肉切り包丁の色事が行われているのかもしれない。


 そう、見方を変えれば青いリボン……縦に90度回転すると、まるで広がったスカートをはいているようにも見える。

 そんなスカートの裾の下から長くて硬い肉切り包丁が荒々しく侵入してくるのである……

 いやぁぁ! やめてぇぇぇぇぇ!

 よいではないか~♪ よいではないか~♪

 それはまさに、無理やり……レイプといえるほど荒々しいものであった。


 私の貞操が……私の心が汚されていくぅぅぅううぅ!

 今や……純白だった青いリボンのスカートの裾が深紅の色に染まっていた。


 一方、ご機嫌な肉切り包丁は、その長い柄を激しくこすり続けるのだ。

 だが、しかし、そんな彼の行為も長くは続かなかった。

 そう、彼の肩に一つの手がかけられていたのである。

 振り向く肉切り包丁……

 へっ? 銭形とっつあん?

 ルパン! 逮捕だぁぁぁぁあ!

 そんな肉切り包丁の固い柄は、いまやすでに青ざめた表情を浮かべていた。

 

 確かに上記の寸劇は、タカトの脳内で行われていた実にくだらない色事であり、事実と全く関係ないのである。

 であるが……

 実際に、畳の上に置かれていた青いリボンの端は赤色に変わり、肉切り包丁の長い柄は青色に染まっていたのである。

 そう……先ほどぶっかけたイカ臭い白濁の液体が、それぞれ赤と青へと変色したのであった。


「何がしたいのかな……君は……」

 とうとうセレスティーノが辛抱でない様子でタカトに尋ねた。

 おそらく、セレスティー以外の者たちも、同様に思っていたに違いない。

 だが、畳の上でごそごそとしているタカトの手には肉切り包丁があるのだ。

 彼の情事を妨げれば、それこそ、おさるのジョージになりかねない。

 ウキキィーーーーーイ!

 荒れ狂った猿ほど手に負えないものはないのだ。

 だが、騎士であるセレスティーノは不老不死。

 肉切り包丁で刺されても、きっとなんともないはずだ。

 絶対防壁! 騎士の盾! カキーン!

 ということで、皆の気持ちは一つにまとまっていた。


 ――さすがセレスティーノ様! 恰好いい!や!

     byおでん組、暫定センター!コンニャことガイヤ

 ――さすがセレスティーノ様! 恰好がいい!しゅ!

     byおでん組、お客様センター長!スージーことマッシュ

 ――さすがセレスティーノ様! その恰好何ということでしょう……

     byツョッカー組合センター長、兼、悪の首領

 ――というか、いいかげん服を着ろ! 変態!

     byビン子


「警部殿! これがコウスケによる犯行ではないという決定的な証拠なんですよ!」

 セレスティーノの問いかけに答えるかのように、しわがれた男の声が控室に響いた。

 この声、タカトの声にしては、少々低い……少年というよりオッサンの声に近いのだが、確かに、その声はタカトから発せられたような気もしないでもない。

 しかし、当のタカトはいまだに畳に膝をついてうつむいているままなので、どうにも確証が持てないのである。


 だが、セレスティーノはそんなことにはとらわれない。

 オッサンだろうが少年だろうがどちらでもいいのだ。

 そう、ビックリマンチ○コもチロルチ○コも同じチョコなのである。

 だからこそ、自分の疑問をタカトにぶつけるのである。

「名探偵君。これのどこに、悪の首領が関係していないということを証明しているのだね?」


「警部殿! いいですか!」

 そういうオッサンの声は、やはりタカトから響いているような気がする。

 そして、ついにタカトが立ち上がったのである。


「先ほど私は、この部屋が密室であることを証明しました」

 間違いない! やはり、このだみ声……立ち上がったタカトから発せられている。

 だが、タカトの恰好が少々おかしいのだ。

 先ほどガラポンで当てたヒョウタンを、まるで蝶ネクタイのようにしてつかみ口先に当てているのである。

 そんなヒョウタンを通して発せられる言葉は、あら不思議!

 少年の声が、まるで寝ている間に事件を解決してしまう眠りの名探偵のオッサンのような声になっているではありませんかwww


 ということは、これ変声器?

 そう、これは蝶ネクタイ型変声器ではなく、ヒョウタン型変声器なのである!

 タカトの部屋にある目覚まし時計の音声をアイナちゃんの『タカト君! 大好き! 大好きよぉぉぉぉぉ!』に録音するために作った変声器を、ビン子がカニ様で作ってくれた5分の間で、このヒョウタンに仕込んだのである。


 えっ? その5分間は『パちんこ玉赭ブロー』の三毛猫モードをHSモードに改造したのではないのかだって?

 そんな、2分もあったら十分!

 残り3分はこの変声器をヒョウタンの中に仕込むのに夢中になっていたのだ。

 というのも、ヒョウタンの穴は少々狭いのである。

 それはまるで、男性経験のない処女のよう……

 そんな穴の奥底に大きな変声器をねじ込まないといけないのである……

 もう! 無理!

 大きすぎわよ!

 裂ける! 裂ける!

 無理やり入れようとすると、こうなる訳で……工夫が必要だったわけなのだ。

 だが、今は、そんなことを説明している場合ではない!

 だから、以下、割礼……いや割愛wwwそう、割っちゃったのwww


 というか! この状況で、わざわざ変声器を使う必要があるんかいな?

 だって、タカト君の姿、まる見えやん!

 こういうのって、だれかを麻酔針で眠らせて、その人の声色を使うものなのではないのでしょうか?


 いいんだよ! そんなもの!

 こんなのは気分だ! 気分!

 だいたい、このほうが名探偵ぽく見えるだろwww

 というか……このシチュエーションで誰を眠らせるんだよ!

 コウスケは当事者だから論外。

 セレスティーノは騎士だから、殺意を伴った麻酔針なんて絶対防壁である騎士の盾が自動発動してしまい、さっき簡単にはじき返されてしまったし……


 でもって……ガイヤとマッシュの間では、放った麻酔針が行ったり来たりしている……

 飛んでくる針を二本の指で受け止めて、それを相手に向かって投げ返すという離れ業を繰り返しているのだ……

二指真空把にししんくうは!や!」

「こちらも二指真空把!しゅ!」

「はい! さらに二指真空把!や!」

「こちらもさらに二指真空把!しゅ!」

「さらにさらに二指真空把!や!」

「こちらもさらにさらに二指真空把!しゅ!」

 うっとおしいので、そのままにしておこう……


 で、当然、最後に残るのはビン子であるが……ものすごい殺気をまとったオーラを先ほどから放っているのである。

 どうやら、俺が、何かしようとしているのに勘づいたようなのだ。

 さすがはビン子……鋭い……

 こんな鬼のようなビン子様に麻酔針など打ち込むことなどできようか……

 いや、できはしない……

 そんなことしたら……確実に晩飯抜きになる……飯抜きは嫌だ……というか……ビン子を傷つけるのだけは……絶対に嫌なんだ……


 ということで、俺がやるしかないだろうが!


 そんなタカトのだみ声が続く。

「警部殿! ココが密室である以上、不倫が行われたのは間違いないのであります!」


 だが、そんな言い切るタカトにセレスティーノは首を傾げた。

「だが……モーリ君……この場にいるガイシャの男だけでは……不倫が確実に行われたとは言い難いのではないのか?」

 って、モーリ君って誰のことやwwwもしかして、タカトの事か?

 というか、モーリってあの毛利?

 全然!違う!

 皆さんは知っているだろうか?

 アフリカにあるモーリタニアという国を。

 そう、日本がタコを大量に輸入している国である。

 ちなみに、モーリタニアにタコ漁を教えたのは日本の漁師さんたちなのである。

 そのかいあって、タコの輸出はモーリタニアでは一大産業になっているのである。

 で、いまタカトはひょうたん型拡声器に声を通すために、口をタコのようにすぼめていた訳でして……


「何をおっしゃいます! 警部殿! この指先に着いた白玉! これが動かぬ証拠なのであります!」

 そういうとタカトはセレスティーノの鼻の穴に白玉のついた指を押しこんだ。


 うっ!

 鼻の中に広がるタコ、いやイカ臭いニオイ……

 当然に顔をしかめるセレスティーノであったが、ココは警部としての威厳を示さないといけない。


「それは分かっている。だが、それだけでは不倫が行われたとは言えないだろう」

「何をおっしゃいます。警部殿! それではガイシャがここで一人エッチをしたとでもいうのでありますか? もしそうであるならば、この部屋の中に失われたチ○コがあるはずなのです!」

「まぁ、確かに……自分でしたというのなら、チ○コがここにないといけないわけだが……」

「まさにその通りです! では、チ○コはどこに行ったのか? それは、きっと犯人が持ち去ったのに違いないのでありますよ!」

「モーリ君……別に持ち去ったのが犯人とは決まってないだろうが……犬とか、猫とか言った線も残っているのでは?」

「確かに……警部殿のおっしゃる通りかもしれません。ただ、私どもはコウスケの悲鳴を聞きすぐに駆け付けました。その時にすれ違ったものは女が一人! 犬や猫などといった類のものは一匹もおりませんでした! それよりも重要なのは、このガイシャが一人エッチをしたのではないという事実なのであります」

「というと?」

「いいですか! 一人エッチではないという事は二人エッチなわけです!」

「はい?」

「二人エッチであれば、当事者は二人! 仮に男と男であれば、当然に二種類の白玉があるはずなのでありますが! ココにあるのは一種類の白玉のみ!」

「モーリ君……君には白玉の違いが判るのかね?」

「当然であります! こう見えてもアイナちゃんの写真集をお迎えする作法を心得ている身。ティッシュから貫通した白玉で常に自らの健康状態を日々確認しております!」

「……そうなのかね……」

「で! ここに存在するのが一種類の白玉である以上、二人エッチのもう一人の当事者は女でないと成立しないのであります!」

「まぁ……その理屈は、よく分からんが……当然、その証拠はあるんだろうね……モーリ君……」

「当然であります! 警部殿!」


 意気揚々とタカトは畳の上に置かれたリボンと肉切り包丁を指さした。

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