第24話 激闘!第六駐屯地!(11) カルロス vs. ゲルゲ

 だが、恐怖すべきは魔装装甲を瞬時に溶かすだけの消化液の酸濃度である。

 ……おそらく、pH0に近いのかもしれない。

 いやいや……もしかしたらpH14のアルカリなのかもしれない?    

 というのも、先ほどから触手の攻撃を受け続けている円刃の盾が熱を持ちはじめているのだ。

 そんな盾の表面はダン●ンから放出された白き液体によってベットリと汚されていた。

 おそらく鉄壁の処女のごとく強固な守りを持つ円刃の盾といえども、このダン●ンから放たれる液体によって何らかの反応を起こしはじめているのだろう。

 って、受精かよwww


 大当たりぃ~

 まさに一つの精子が卵子に突入するかのように、カルロスの考えはピタリと的中していた!

 いいかえるなら、それは妊娠検査キットで陽性反応が出たときのような確かな感触だった。

 そう、奴の正体がスライムとわかれば対処の方法はあるのだ。

 なぜなら、聖人世界でも荒神の成り果ての姿であるスライムは、時折、現れるのである。

 だが、聖人世界ではあらゆるものを食らいつくすスライムは、魔人世界と異なりすぐさま駆除対象となっていた。

 そのため、聖人世界ではスライムの駆除方法がしっかりと確立されていたのである。

 それは!

 『スライムの核を一撃のもとに打ち砕く!』


 だが、失敗すれば大変なことになりかねない。

 というのも、怒り狂ったスライムが分裂しまくって巷にあふれ出すのだ。

 そして、その大量に発生したスライムにより周囲のあらゆる生き物がたちまち消化され姿を消してしまうのである。

 

 そのため、カルロスは目の前の巨大な大根、いやダン●ンをくまなく観察し始めた。

 ――奴のコアはどこだ……

 そう、スライムを駆逐する方法の最優先事項は、この核の場所を正確に見出すことなのである。


 だが、無数に伸びる触手が邪魔をする。

 そんな触手には、かつて分裂体の時にあった腕や足などが、まるでお飾りのように引っついていた。

 うん? 待てよ……

 確か……このダン●ンは無数の分裂体が合体したものだったよな……

 当然、それぞれの分裂体には核があったはずなのだ。

 それが今ひとつのダン●ンに固まっているとはいえ、それまでに持っていたそれぞれの核はどうなったというのだ?

 もしかして、一つにまとまった?

 そんな馬鹿なぁwww

 核融合でもあるまいしwww

 そんな時、ダン●ンの口が大きく開け広げられる。

 しかも、その喉の奥から生まれたまぶしいばかりの光がどんどんと大きく成長していくではないか。

 それを見たカルロス。

 ――まずい!

 とっさに黄金弓を背後に隠し、己の身を円刃の盾で防いだ。

 瞬間、白い光がカルロスを包みこむ。

 ドゴーン!

 激しい爆発音とともにカルロスの背後にあった城壁の上部を吹き飛ばし駐屯地の広場を打ち抜いていた。

 そして、その射出された高エネルギーの衝撃でダン●ンもまた、大きく傾いていたのであった。

 ダン●ンを支えるために、あれほどしっかりとダイコンの根を張っていたにもかかわらずである。

 しかも、その根は今や、そのほとんどが石床をたたき割って城壁上部にむき出しの状態になっていたのだ。


 えっ……もしかして、これって……その核融合の際に発生したエネルギーとかなにかなのwww

 そう! 名付けて太陽光サンレーザー!

 太陽のエネルギーは核融合なのだぁぁぁぁぁぁぁ! 

 ってwww核は核でも違う核でしょうがwwwコレ!


 飛び散るがれき。

 舞い上がる粉塵。

 そんな砂埃の揺らめきの中に肩で息をするカルロスの姿があった。

 ――はぁ……はぁ……

 だが、その姿はもうボロボロ……

 いまや身にまとう魔装装甲のいたるところが崩れ落ち、生身のカルロスをむき出しにしていたのである。

 その姿……おそらく、立っているのもやっとの状態。

 口から垂れ落ちる赤き血筋をぬぐいながらカルロスは鼻で笑う。

 ――さすがに……あれをもう一度食らったら、今度は耐えられんな……


 というか……今、思ったんですけど……

 セレスティーノの魔装装甲を砕き割ったお登勢さんの北斗シイタケは、この核融合エネルギーが作り出した太陽光サンレーザーと同じ破壊力があるということなんでしょうかwwwwマジかよwww


 だが、目の前にそそり立つ壁のようなダン●ン……

 この大きな肉の塊の中からどうやって奴のコアを探し出せばいいのだろうか。

 その核のサイズはおそらく握りこぶし一個分といったところ。

 そんな小さな核を探し出すのはかなりの困難を極めると思われる。

 ――さてさて……どうしたものか……

 困り果てたカルロスであったが、まだ、その体の動きは健在のまま。

 再び迫りくる触手の群れを盾でいなし続け、体を右に左に振っていた。


 だが、そんなとき、カルロスはふと気が付いたのだ。

 目の前の肉の塊が、仮にダン●ンであるとするならば、そう、ゴールデンボールはどこにあるのだ?……と。

 そんなたわいもない疑問であったが、やはり、ここは理科の授業を得意とするカルロスである。真実を確かめずにはいられなかった。


 ――やはりゴールデンボールというからには付け根の部分か……

 打ち付けられる触手の攻撃をかいくぐり、カルロスはダン●ン(仮称)のもとへと近づきはじめた。


 え~www

 ここで皆様に、事務連絡でございますwww

 すでにお気づきのように、ココからはダン●ンに(仮称)をつけさせていただきました。

 というのも、今までは、目の前の肉塊がたとえダン●ン、ペ●ス、チン●コのよに見えていたとしても、それは、単に『そう見えるというだけ』のことだったのであります。

 いいかえれば、それがダン●ン、ペ●ス、チン●コであるという証左は何もないのであります。

 だからこそ、ココでそれを書いたとしても当然、何の不都合も発生しないわけなのだぁぁぁぁぁぁあ!


 だが……

 だがしかし……

 もしも……

 もしもですよ……


 これがダン●ンであるという証拠、すなわちゴールデンボールが見つかれば、おそらく、これはエロ小説以下になり下がってしまうわけなのです。(って、今でも十分エロ小説以下かwwww)

 こうなると、もう、ダン●ンという名称は使えなくなる可能性が出てくるわけですが……

 そうなる前に、今からは予防線として(仮称)をつけておくことにしました!

 以上、その点、皆様もご留意のほどをwwwテヘwww


 ――やはり、あったか!

 ダン●ン(仮称)のもとに近づいたカルロスは大きなフグリを見て確信した。

 そのフグリ……いわゆる陰嚢と呼ばれる玉袋は、だらしなくだらりと石床の上に伸び広がっていたのだ。

 しかも、その玉袋に一つの山が見て取れる。

 ――こいつ……片玉か!

 片玉というのは、タマタマが一つしかないことで、停留睾丸、または停留精巣と呼ばれる病気の一種のことです。この病気の原因はいまだ分かってはいませんが、停留精巣を治療せずに体内に精巣がある状態で放置した場合には、精巣がんと不妊症のリスクが高くなるといわれています。というのも、タマタマでは精子を作りだします。この精子を作るためには精巣の温度が体温より1~2℃低い環境が必要なのだそうです。そのため、わざわざタマタマを体の外に出して少しだけ温度を下げているとのことなのだぁぁぁぁぁ! ハイ! これ女性の方も必見の豆知識! 分かったかなwww


 そんな玉袋からうっすらと陽炎が揺らめいていた。

 どうやら偶々たまたま見た、そのタマタマがたまらん程の熱を持っているようなのだ。

 もしかして、これは! 分裂していた核が融合した際の影響なのか?

 ならば、目の前に転がっているタマタマこそが、この肉の塊であるダン●ン(仮称)のコアに違いない!

 なんだwww 簡単に見つかったではないかwww

 あれだけスライムのコアを探すのは大変だと言っていたにもかかわらずwww

 それもこれも日ごろのカルロスの行いがよかったからに違いない。

 いつもエメラルダ様のために粉骨砕身!平身低頭!頑張ってますもんねwww


 という事で、カルロスはその核を打ち砕くべく、引き上げた右足をタマタマめがけて思いっきりを踏み下ろしたのだった。

 ガツッ!

 石床にたたきつけられた魔装装甲が乾いた音を立てる。

 だが、そこにあるはずのタマタマがないのである……

 ――ちっ? どこに行った……

 不思議そうにあたりを見回すカルロスだったが、大きな玉袋は簡単に見つかった。

 なんと、踏みつけたはずの足のすぐ左に広がっていたのである。

 ――ワシ……ちょっと疲れているのかな……

 狙いをつけてちゃんと踏んづけたつもりだったのだが、どうやら少しずれたらしい。

 ――やっぱ……もう年かな……

 齢50近くのカルロスはそう思いながら再び引き上げた足を踏み下ろしたのである。

 だが、今度は玉袋が右にズレたのだ!

 ――な・ん・だ・と!

 こいつは玉袋を自在に動かせるというのか!

 確かに風呂に入った時、手のひらに載せた玉袋をよくよく観察してみるとタコのようにうねっているのだ。

 だがしかし、それを腕の筋肉のように自在に動かすことなど、常人にとってはまずもって不可能なのだ!

 いや……そもそも……こいつは人ではない……スライムだ……

 だから、この玉袋も人のものではないのである。

 そう、忘れてはいけない!

 こいつはダン●ン(仮称)なのである!

 ならばもう容赦はしない!とばかりにカルロスはあたりかまわずに足を踏み下ろしはじめた。

 バン‼ バン‼ バン‼ バン‼

 だがしかし、玉袋もその動きを避けるかのように右に左によけるのだ。

 それはまるで猫じゃらしのよう。

 この様子……一見すると、玉袋という猫じゃらしを相手に、カルロスという猫がはしゃいでモグラ叩きをしているようにも見えるのだwww

 だが、こう見えてもカルロス……老練な猫である。

 そう、いわゆるずるがしこい猫なのだ。

 単にじゃれているように見えても、ちゃんと獲物を追い込んでいるのである。

 でもって、ついに玉袋が城壁のきわへと追い込まれた。

 そこにもう逃げ場は、ありはしない……

 チェックメイト!

 と言わんばかりに、不敵に笑うカルロスは思いっきり足を踏み下ろした!

 グチュ!

 城壁の上に肉のつぶれる鈍い音が響き渡った。


 先ほどの太陽光サンレーザーの攻撃によって今のカルロスの魔装装甲は、いたるところが崩れている。

 そんなむき出しとなった背中に一本の肉の触手が突き刺さっていた。

 つぶれるカルロスの肉……

 うめき声をあげるカルロスの表情が、その一撃の重さを表していた。


 もしかして……タマタマを潰すことに専念していたカルロスは、周りから迫りくる触手たちの姿が見えていなかったのだろうか?

 まぁ、確かに猫は遊びに夢中になると周りが見えなくなるものです……

 椅子の上でじゃれているとよく落っこちたりします。これ、猫アルアルですよねw

 だが、この城壁の上でじゃれているカルロスは歴戦の猫ではなくて歴戦の勇者。

 常に周りの状況を冷静に観察している。

 しかも、先ほどまであれだけ触手の攻撃をいなし続けていたのである。

 触手の存在を忘れるなどありえない……

 ならどうして……

 

 うつむく口からしたたり落ちる血のしずくをぬぐいながらカルロスはつぶやく……

「あれほど……下がれ……と、命令しただろうが……」

「カ……カルロス様……申し訳ございません……」

 カルロスの落とす影の下で、一人の魔装騎兵が震えていた。


 そう、カルロスがコアを踏みつぶそうとしたとき、城壁の傍らにある壊れた連撃弩の影に一人の魔装騎兵の姿を見つけたのだ。

 しかも、その眼前には白濁の液を滴らせる触手が今にも彼の命を奪わんと鎌首をもたげていた。

 カルロスの踏み足は迷わず向きを変えた。

 踏みだす一歩……

 だが、触手もまた魔装騎兵に向かって加速する。

 ――間に合わんか⁉ いや、まだだ!

 「限界突破! 人血吸収!」

 加速するカルロスの体が風になった!

 

 すでに限界突破をしている魔装装甲に今度はカルロス自身の人血を注ぎ込んだのだ!

 キユィィィイッィン!

 高い金切り声を上げる魔血ユニットがカルロスの脇腹から血を吸い上げていく!

 うぐぐぐぅ!

 苦痛をこらえるカルロスは、こみ上げてくる悲鳴を飲み込んだ。

 この「人血吸収」、人血大量消費時代のいわゆる融合加工第二世における技術の応用である。

 魔血によって限界突破を行っている魔装装甲に、それとは別の人間の血を大量に与えることによってさらに能力を向上させようというのである。

 というか、ハッキリ言って限界突破の重ね掛けなど無謀の極致。

 すでに限界を突破しているカルロスの体に、さらに想像を絶する負荷がかかるのである……おそらく今、彼の筋肉の多くは完全に断ち切られているにちがいない……

 だが、それよりも深刻な問題は、魔血ユニットによって直接的に血を吸収されているということなのである。

 これにより、カルロスの体内には魔血ユニットから魔の生気が大量に流れ込んでいるのだ。

 大量の魔の生気が逆流してくれば、いかに人魔症の発症を抑える人魔抑制剤をうっている体とはいえ、確実に人魔症を発症する。

 だが、カルロスは己が命を顧みることなく、目の前の部下の命をまよわず選択したのだ。

 

 しかも、幸運なことに触手の一撃は飛び込んだカルロスの背中を貫くことなく、その直前で止まっていたのである。

 というのも、背に隠した黄金弓がその一撃を防いでくれていたのだ。

 魔装装甲を打ち砕くほどの触手の一撃。その攻撃に耐えうる黄金弓は、さすがにウルトラレアの一物である。


 とはいえ……カルロスのダメージは大きい。

 はぁ……はぁ……はぁ……

 肩で息をするカルロスは、へたり込んでいる魔装騎兵の肩をつかみ取り、無理やり引きずり起こした。

「わしが気を引いておく……そのすきに、下の広場にまで下がれ……よいか……」

 そして、その背中を強く押し出すのであった。

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