こぶとりじいさんは世渡り上手

 あるところに右にこぶのあるおじいさんがいました。そのおじいさんは、山で鬼たちの集団に遭遇してしまいます。鬼たちは宴会をしており、おじいさんはつい、踊りを披露してしまいます。すると、また来てほしいと思った鬼は質として、おじいさんのこぶをもらいます。

「これを返してほしくば、明日もまた来い」

 鬼たちはこぶをおじいさんの大切なものと勘違いしました。おじいさんとしては医者に見せても治すこともできず、邪魔なこぶがなくなったのでとてもラッキーでした。


 隣に住んでいる左にこぶのあるおじいさんは、意地悪で性格も悪い人でした。そのおじいさんもこぶを取ってほしいと思い、翌日、鬼たちがいる場所に行くことにしました。ところが、鬼にとって人間は似た顔にしか思えず、昨日と同一人物だと勘違いされます。ところが、左こぶのおじいさんは踊りも話も下手で、盛り上がりません。怒った鬼は、こんなのいらないから返してやるとこぶを右につけます。ということは、左のこぶのある意地悪なおじいさんは左右にこぶがついてしまい、最悪の展開となってしまいます。


 意地悪なおじいさんとは言っても、特に悪いことをしている描写がないので、本当に悪人だったのかは謎です。でも、こぶが二つになる相応の悪だったのかどうかわかりません。もしかしたら彼は被害者なのかもしれません。


 ここでいうこぶというのはケガをしたときにできるこぶとは違った大きなできものなのでしょうか? 私たちが普段目にする腫瘍やできものといった病気の類なのでしょうか。医学を無視した鬼の力には驚きですが、悪い病気だとしても当時切除することは困難だったのでしょう。


★解説

 鬼にとっては最初は人質のような存在だったこぶがどうでもいいから返すというものになっており、鬼にとってはこぶを持っていていいことがなかったのでしょう。人間だってこぶを持っていていいことはないのだから。世渡り上手はどんな社会にもうまく溶け込むことができるのでしょう。

 

★教訓

 芸は身を助ける。コミュニケーション力は鬼をも制す。


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【1分読書】意味がわかるとこわい昔話 響ぴあの @hibikipiano

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