第75話 どんぶらこ
「やはりスケートは楽しいな!」
あれから30分ぐらい練習したら普通に感覚を掴んで、今ならトリプルアクセルだって出来ちゃうよ。
これでこの土地の移動手段は手に入れた。後は探索していくだけだ。
楽しみだな。どんな新しい魔物や食べ物に会えるのかな。
よっしゃ出発!!
スイ〜〜〜〜
俺は氷の上を滑って移動する。
いや〜、歩くより大分楽だな。なんたって滑ってるだけだもん。ずっとこのスケートシューズ履いとこうかな?でも土の上じゃ使えないからなぁ。
今俺の目の前には1つの川が流れている。
スキルを得ても体感気温はまだマイナスぐらいだから本当の気温はもっと下だろう。
それなのに水が凍ってないって不思議だな。
しかも不純物がないおかげか、驚くほどに透明で川底がハッキリと見える。
「すげぇな。こんな綺麗な川なんて日本では見たことないわ。もし日本にあったらホタルが住んで、絶対秘境に選ばれてたね。」
そんな感じで川に見惚れていると、川上から目を疑うようなものが流れてきた。その存在を俺は華麗に二度見した。
「何コレ?マジで何コレ?本当に何コレ?」
川上からどんぶらこどんぶらこ と大きな桃が流れてきたのだ。
マジで何コレ?怪しさMAXなんだけど。
別に山に芝刈りに、川へ洗濯にきたわけでもない。どちらかというと普通は山へ芝刈りだろ。俺おばあさんじゃねーし。
これ夢かな?
とりあえずもう一回地面に向かって頭からスープレックス決めて見たけど桃はあるから現実だな。
後頭部めっちゃ痛い。やらなきゃよかった。
えっ、コレ拾わないといけない系のやつ?
桃を割ったら元気な少年出てくる系のやつ?
よくこんな怪しいもの拾ったな、おばあさん。
よく拾ってきたことを怒らなかったな、おじいさん。
そしてこんな怪しいものをよく食べようと思ったな。
そこで俺が導き出した答えは………
華麗にスルー。
うん。触らぬ桃に祟りなしだ。
例えこの桃の中に鬼殺しの英雄が入っていようと、心優しいおばあさんが出てくるまで漂流しておいておくれ。
拾って上げればいいじゃないかって?時には残酷な選択をしなければいけない時もある。だって俺、魔王だし。得体が知れないし。
桃が俺の目の前を通過して、どこかに流れていこうとした時、急に桃が飛び跳ね、俺から少し離れた場所に着地した。
びっくりした!?心臓口から飛び出るかと思った。
急に桃が飛び跳ねたけど……、魔界の桃って川から流れてきて跳ねんの?
すると桃が小刻みに動き出した。
次の瞬間桃から手と足が生えてきた。その手にはどこから出たのか、剣が握られている。
[桃太郎]
桃に生命が宿った姿。川に流れて油断したところを手を生やして一突きにする。
「俺が知ってる桃太郎はこんなモンスターじゃない!!」
何コレキモっ!?
想像してくれ、桃からいきなり手と足だけ生えてきた姿を……
動かれたら予想の5倍はキモいぜ?
そんな奴が鬼殺しの英雄の名を語ってるんだぜ?
するとスルーされたことに腹が立ったのか飛び上がって襲いかかってきた。
飛んだ!うわキモっ!
だが残念。お前の結末はもう決まっている。
「悪即斬だ」
俺はスケート靴を履いた状態で蹴りを放つ。
するとどうだ、桃太郎は縦に真っ二つに切れ、動かなくなった。
スケート靴にはブレードが付いている。なんてことはない、そのブレードが剣並みに斬れる刃になっているだけだ。おかげで滑ることができるし、蹴りで相手を斬れるよう考えて作っただけだよ。
「お前如きが御伽噺の英雄の名を語るなんておこがましいよ」
決まった……!
やってみたかったんだよ蹴りで相手を斬るの…!
強キャラって足の風圧で敵を斬ったりするじゃん?
俺はまだその域には来てないけど、似たようなことなら出来るんじゃないかな〜と思い作成したわけだよ!
いずれは普通の蹴りで相手をぶった斬りたい。そのためにはレベル上げだな。もう少ししたら出来ような気がするんだよ。
そのためにまずこのグロテスクな桃を回収するか。
と思ったらもうカチカチに凍っていた。
「ええええええ!?もう凍ってる!?」
俺はこの環境を舐めていたよ。
ここは吹雪は吹いてないし、てっきり川を流れてくるぐらいだから寒さは大丈夫なんだろうと思ってたけど、死ねば関係ないもんな。
巡りが全て止まるから、死んだ時点で凍らされていくのか。1つ勉強になったな。これからは倒した側から即回収しないと。
「まぁ、見た目で食べる気失せたけ………ど………」
なんということでしょう。また桃が流れてくるではありませんか♪♪
しかも3メートルぐらいあるやつが
その桃が俺目掛けて川からぶっ飛んできた。
びっくりしたが、それで攻撃に当たるほど落ちぶれてはいない。その場でスピンし華麗に避ける。
[桃太郎親分]
桃太郎が鬼を倒して進化した姿。攻守共に大幅に上がり、より強力になった。甘くて美味しい。
鬼倒したの!?
マジかよ!その名の通り桃に倒されたの!?
ならせめて英雄にしようぜ!?親分ってちょっと弱く聞こえるぞ。
親分と書いてあるせいか、普通の桃太郎より腕と足が筋肉モリモリだ。
それデフォルトなの?キモすぎない?
桃太郎親分が地面を踏み込み、俺に向かって突撃してきた。親分であり、鬼?を倒したらしいから先程の奴よりは速いし強いだろう。
だが悲しいかな。進化した俺の敵ではない。
「風刃 スケートシューズver」
スケートシューズから飛び出た斬撃が桃太郎親分を真っ二つに切り裂き、そのまま絶命した。
全く強さがわからなかったな……
親分だろうが鬼を倒していようが、魔王の俺には敵わないってことだ。
すかさず桃太郎親分をディメンションに収納。これで凍ることはなく保存できるはずだ。
「いや〜、しかしいろんな意味でびっくりしたな」
まさか桃が流れてくるなんて誰も思わないだろう。
次は竹を切ったら光り輝く女の子がいたとか来そうで怖いな。
ははっ………………まさかね。
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