第38話 マグマラット

翌朝、寝起き早々パンドラのお説教タイムから1日が始まった。



起きたら何故ネアが俺の横で寝ているのか、何故カバンの中からゴキ……エンペラーローチが出てきたのかという議題で3時間ほど怒られた。


どうしてたかって? 正座して怒られてたよ。

魔王が正座させられて怒られるってそうそうないよ?



フィリアとネアは俺が怒られるより早く逃げやがった。解せぬ……



説教が終了した後、俺達は朝飯をささっと済ませてから玉座の間に集合していた。



最近は朝ご飯ぐらいじゃステータスは上がらなくなった。やっぱり初めて食べる食材の方がもらえる経験値が大きい。




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名前 : ゼノン

種族 : 魔王 レベル : 69


【体力】: 18880 (+120) 【MP】 : 8480 (+130)

【攻撃力】: 5000 (+90)

【防御力】: 4790 (+80)

【素早さ】: 5730 (+80)

【運】 : 250


【ユニークスキル】: 【悪食】【能力吸収】【鑑定】

【成長促進】【自己再生】


【称号】: 【新米魔王】【卵に負けし者】

【ユニークキラー】

【ドライアドに認められし者】

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レベルが上がらなくても少しずつはステータスが上がるんだけどね。



そして、玉座の間で今日からの目的をみんなに向かって話した。




「今日もまた秋景の森に入って『マグマラット』を探そうと思う。」


「はい!私場所知ってるんで案内するっす!」




ネアが手を挙げて宣言した。

マグマラット問題が早速解決しそうだ。




「おっ、それじゃあ案内頼む。討伐は俺がするから その素材をパンドラに加工してもらいたい。」


「任せてください!!」




パンドラも声高らかに返事した。




「マグマラットの素材で灼夏の火山に入れる準備が 整ったら、バルカンを探しに行こうと思う。」



「「「ええーーっ……」」」





3人の返事が一致した瞬間だった。





「あのゴリラは探さなくても大丈夫だと思いますよ?」


「うん〜〜、大丈夫〜〜〜〜」


「だって戦闘バカっすからね!」




返ってくる答えは否定的なものばかりだ。



幸先が不安だが誰か1人を探さないわけにもいかないからな……

俺個人的にも気になるし……




「俺は一応魔王だしな……一度は四魔天全員と話しておきたいんだ。そこから先はお前達に任せるから、とりあえず協力してくれないか?」




とにかく魔王になったからには就任報告をしないといけないしな。大変だがやるしかない。


するとパンドラ達から返事が返ってきた。




「ゼノン様がそう仰るのであれば……」


「私も〜〜、従う〜〜〜〜」


「私もっす!!」




全員から承諾を得られたようだ。


さて気分が変わらないうちにささっと向かってしまおう。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




俺達は全員でマグマラットを探すために秋景の森へ やって来た。


魔法の扉がどこに着くのかと思っていたら、最後に開けた場所からスタートするらしい。


って事で俺達が扉を開けてまず見たのは、あのお菓子の楽園だった。




「あっ、ここは私でも見つけることが困難な場所っす!! お菓子で出来ているから魔物達が食べて無くなったりしてたっす!その度に新しい場所にお菓子が生えてくるので、見つけるのは運任せっす!!」




ネアがここがどれだけ貴重な場所かを教えてくれた。




「ほら、ここなんてもう食べ尽くされてるっす!」



ネアがそう言って指差した場所は、何も無い土地となっている。




………そこは昨日うちの腹減らしが食べた後だ。





しかし貴重な場所だが、今日の目的ではない。

俺達は急いでその場から移動しようとしたが、ここでまた問題が起きた。



「誰かに食べられるくらいなら、責任を持って私が食べたいと思います!」



パンドラがまた駄々をこね出した。




「ネア……拘束して連れて来てくれ……」


「はいっす!!」




ネアがどこから取り出したのか、縄を使ってパンドラをガッチリ拘束し、そのまま連れて来てくれた。

ネアの方が小さいのにしっかりしてるな……



「イヤァァァァァァァァ!あの辺りなんてまだたべてないのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」




最後の抵抗として暴れまくっていた。


どうにか大人しくならないかと思い、パンドラを驚かせようとしていた作戦を今伝えることにした。




「フィリア、このお菓子達を育てることってできるか?」


「う〜〜ん、私1人じゃ無理だけど〜〜〜〜、ゼノン様の力も使えば〜〜〜〜、可能だと思うよ〜〜〜〜」




パンドラの耳がピクピク動いた。

あともう一息ってところかな?




「パンドラ……俺は色んな種類のお菓子植物たちを持って返ってるんだ……それを庭で育てることが出来たらどうなると思う?」



「……毎日が食べ放題!?」




見事に食いついた。

首をねじ切れんばかりに反転させ俺を見ている。




「無事にマグマラットを捕まえることが出来たら、俺はその作戦を実行しようと思うんだ……今のひとときの喜びと、これから永続的に続く利益……お前ならどちらを取る?」



「永続的に食べられるお菓子です!!」



よし、大人しくなった。なんとかパンドラ鎮静作戦が成功したようだ。


でもこれでもし育てられなかったら、その時が怖いな………



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




パンドラを静かにさせたあと、俺達はネアにマグマラットの場所に案内されていた。



さあ、この森は広かったからどれくらい歩くのだろうか?



「いたっす。」


「早っ!!」



えっ、近!?まだお菓子の楽園から100メートルぐらいしか歩いてないぞ!?まだ振り返ったらお菓子が見えるぞ!?



俺は驚きを隠せないまま目の前にいるであろうマグマラットを見てみると、赤くてモコモコした生物がいた。




[マグマラット]

比較的大人しく、その皮膚と体毛はマグマのような高温も通さないほど耐熱性に優れている。





めっちゃ可愛い……赤くてモコモコしてて、姿はビーバーみたいだ。つぶらな瞳でこっちを見てくる。



うわぁ、めっちゃ可愛い…と癒されていたら、ネアがすごいスピードで動いたと思うとマグマラットと首を切り落とした。




「倒したっす。」


「……おお、うん。……ありがとう…」




なんかなんとも言えない気持ちになった。



そう思っていたら、パンドラもフィリアもマグマラットをサクサク倒し始めた。



アレ?女の子って可愛い生き物とか好きじゃないの?

なんであんな可愛い生物サクサク倒せるんだ?価値観の違いか?



その後もどんどん倒していく。

俺は愛着が湧きそうになるからなるべく見ないようにした。


そして、ネア、フィリア、パンドラが倒してくれたおかげで、マグマラットが大量に集まった。



これだけあれば灼夏の火山に行けるための材料は揃っているだろう。




思いのほか早く材料が集まってしまったので、俺達はパンドラの希望でもう一度お菓子を集めてから家に帰った。




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