第51話
翌日から、テティアさんが僕の特訓に付き合うことになった。竜学が専門だそうだが、ヌーの扱いにもかなり長けているということだった。
実際、彼女は有能な指導者のようだった。普通のレ・ヌーに乗りながら、軍用レ・ヌーの乗り方を教えてくれた。ウニルには相変わらず拒絶され続けていたが、背中から素早く覆いかぶさると、三回に一回ぐらいの割合で乗ることができた。そして、その割合は、乗る回数が増える度に高くなって行くように思えた。
「ウニルは一度、あなたの強い魔力で飛んでるわ。きっと、その感覚が忘れられないのね。心では拒んでいても、体は拒みきれてないってことよ」
「なんかいやらしい言い方ですね……」
ただ、背中に乗り、
そして、その二日はあっという間に過ぎた。僕は結局、ウニルと仲良くなれなかったし、強引に乗ることはできても、すぐ振り落とされるばかりだった。
「こんなんで、本当に大丈夫かな……」
竜蝕祭の前夜、寄宿舎の自分の部屋に戻ると、僕と山岸は顔を見合わせた。ウニルを十分に休ませる必要があるので、もう明日の午後の本番まで一切練習はできなかった。
「とにかく、今は休みましょ。明日に備えて」
「うん……」
僕達はともにベッドに横になった。僕が床で寝ることにすると、山岸もいつのまにか床で寝ているので、結局、一緒にベッドを使うことにしたのだった。最初はすごくドキドキしたが、やっぱり直接触れないので、それ以上のものはなかった。山岸も、僕を意識しているのかしていないのか、わりとすぐに目を閉じて、眠ってしまうし。
まあ、今はそんなこと考えてる場合じゃないしな……。
山岸の言うとおりだ。明日に備えて今は休まないと。僕もすぐに目を閉じた。
すると、その晩、少しだけまた変な夢を見た。本棚がたくさんある部屋で、十歳くらいの女の子が泣いているのだ。泣きながら癇癪を起したのだろうか、その子の周りにはびりびりに破られた本が散らばっていた。
その子の顔は見覚えがあった。そう、トリックスターと名乗る少女によく似ていた。そして、その子の破いた本のページには、やはりレ・ヌーに乗る銀髪の青年のイラストが描かれていた。ただ、今回はさらに、違う本の破られたページも見えた。そこには冴えない風貌の男子高校生が、眼鏡の女子高生に平手打ちされるイラストが描かれていた。
ああ、そうか……あいつは……。
僕はそこで何かを悟った。が、朝になって目を覚ました瞬間、それが何だったのか忘れてしまった。
いったい、あいつは何なんだろう。いろいろ考えてみたが、やはり何もわからなかった。
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