誰もが同じことをできるわけじゃない

ただ、その一方で、


『エンディミオン小父さんができるんなら、他のダンピールだってできて当然じゃん。それをやらない方が悪い!』


安和アンナはそう言うけどそんなに単純なことじゃないのもまた事実。


『誰もが同じことをできるわけじゃない』


というのも事実なんだ。だって、エンディミオンがそれをできるようになったのは、結局、さくらと出逢えたからというのも大きいし、彼女と出逢えていなかったら、今も彼は、<バンパイアハンター>を続けてただろうな。


もっとも、彼自身は、今はあくまで休養を取っているだけで、<バンパイアハンター>そのものを辞めたつもりもないそうだけど。


でも、そういう<言い訳>が必要なのなら、その言い訳を使うことで他者を傷付け自身も不幸なままでいることを避けられるなら、それでいいと思う。その種の<詭弁>にも、意味はあると思うんだ。誰かを傷付けるための詭弁は許されないとしてもね。


けれど、エンディミオンがさくらに出逢えたような<きっかけ>もなく、今なお吸血鬼を憎み続けてるダンピールもいる。そんな彼らが自力でエンディミオンと同じ境地に至れるというのは、希望的観測に過ぎないよ。それが通用するなら、この問題はずっと以前に解決してると思う。


その事実も認めながらも、だからといって諦観は決して美徳じゃないと僕達は思ってる。どれほど歩みは遅くても、何も進展していないように思えても、先に進むことを諦めはしない。


人間達もそれは同じなんじゃないかな。


アオや椿つばきやさくらや恵莉花えりか秋生あきお厨崎美千穂くりやざきみちほやダヴィトやケテヴァンを見ていたら、僕は、人間に対しても絶望することはできないよ。


そして、エンディミオンを見ていたら、ダンピールにも絶望はできない。


今、この時も、世界のどこかでダンピールが吸血鬼の命を狙っていたりするとしても、ね。そもそも、ダンピールを生みだしながら追い詰めたのは吸血鬼の側なんだ。


『原因があれば何をしてもいい』


なんてわけがないのも事実でも、きっかけを作ってしまった責任はある。とは言え、命まで奪われなきゃいけないわけでもない。それはわきまえなきゃね。




そんなこんなもありつつ、学校から帰ってきた椿とも話をして僕達は安らいだ気持ちになれて、日暮れまでホテルで休むことにした。


もっとも、悠里ユーリ安和アンナは、夜行国際列車の中で寝過ぎたくらいに寝ていたからか、寝付けず、勉強をした後はずっとゲームをしていたみたいだけどね。


それでもいいよ。


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