悠里の日常 その2
それはまあ、見た目がそもそも違うから、今の自分はまだ学校に行ける年齢じゃないと最初は認識していたというのもある。
とは言え、年齢を重ね様々なことを理解していく中で、そうじゃないことも、当然、気付く。
でもやっぱり、学校に行けないのを悲しんだこともない。
自分が他の子供とは違うということについても、冷静に捉えられていた。
そもそも自分が他の子供と同じでなくてはいけないという考えがなかった。
『僕は、蒼井悠里。蒼井ミハエルと蒼井霧雨の子。それ以外の何者でもないし、それ以外の何者でもある必要がない』
十二歳になる頃には、そんな風に思えていた。
なにしろ、両親が自分を<一人の人格>として敬ってくれてるのは実感できていたし、だから他人を羨む必要がそもそもなかった。ミハエルとアオの息子というだけで十分に満足できていた。
それ以外に何が必要なのか?
悠里には分からない。
ネットでひたすら他人を攻撃的に罵っている者達が何を求めてそれをしているのかが、まったく理解できない。
『なんでこんな無駄な時間を過ごしてるんだろう……?』
それ以外の感想が湧いてこない。
こんなことをしてる暇があったら、家族と一緒にアニメでも観てる方がよっぽど楽しい。
だから他に楽しいことがないんだろうなと思ってしまう。
それは、<蔑み>というよりは<憐み>。
『僕はダンピールとして生まれて、人間じゃないけど、でもそれを辛いと思ったこともない。
せっかく人間に生まれたのに、どうしてそれを素直に喜べないんだろう。
それを考えたらやっぱり親に恵まれなかったんだろうな。
自分が生まれてきたことをちゃんと喜んでもらえなかったんだろうな。
その所為で他人が羨ましい、って言うか、そういう場合は『妬ましい』って言うのか? ってことなんだろうな。
僕は、他人の悪口言ってるよりもお父さんやお母さんと話してる方がずっと楽しい。
人間の子供って、中学生くらいになったら親とあんまり話とかしないって聞くけど、なんで? 成長してきて世の中のこととか分かるようになってきたら、その世の中のいろんなことで親と話しできるじゃん。親と共通の話題あるじゃん。
それなのに親と話ししないの?
親が自分の話を聞いてくれないから?
だったらやっぱり、親に恵まれなかったんだろうなとしか思わないよ。
僕のお父さんやお母さんは、ちゃんと話を聞いてくれる。僕が疑問に思ったことを尋ねてもちゃんと答えてくれるし、分からないことだったらちゃんと『わからない』って答えてくれるよ。適当なことを言って誤魔化したりしない。
世の中の親って、自分に知らないことがあるのを認めたくないのかな……?』
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