超優良物件
しかしアオがそうやって語っている間も、
椿にとっては結婚のデメリットなど何の関係もないから。
椿にとっては洸と一緒にいられるというメリットを上回るデメリットは存在しないし、
安和にとってもセルゲイと一緒にいられるというメリットを上回るデメリットは存在しない。
とは言え、
そして、それが見付かる保証もない。
となれば、無理に結婚する必要もない。
それだけの話だった。
ただ、悠里も恵莉花も秋生も、将来性は折り紙つきの<超優良物件>ではある。
三人だけでなく、椿も安和も含めた共通点としては、
『並の人間をはるかに上回る強いメンタル』
『高い知能』
『他人を思い遣れる精神性』
が挙げられるだろう。加えて、
<フラワーショップ・エリカ>
のスタッフでもある。
経営者として管理しているのはエンディミオンとさくらでも、恵莉花が育てる花が、エンディミオンが育てるそれと並んで主力商品となっているのも事実。
それに最近では、経営そのものにも関与し始めている。なのでこのまま園芸についての勉強ができる大学に進む予定である。
学校では教師から、
「
と進路指導の度に言われたけれど、
「先生。私、本当は学校での勉強とかあんまり好きじゃないんです。興味のあることしかしたくないっていうのは本音です。だからたぶん、興味のない学科に進んだら遊んでしまうと思うんです。でもそれじゃ親にお金出させて大学に行く意味がありません。
大学ってのは、勉強をしに行くところですよね? 遊びに行くところじゃありませんよね?
だから、勉強する気になることを学べるところに行きます」
きっぱりと教師に対して言い切って、希望の進路を変えることはなかった。
一方、秋生は、福祉系、特に児童福祉について学べるところを希望していた。
子供を健やかに育むことができる社会こそが、結局、誰にとっても生き易い社会なのではないかと秋生は考えていたから。
そんな
もっとも、それはある意味では当然のことかもしれない。両親や蒼井家の人間達と触れ合うことで恵莉花も秋生も、この世の表も裏も深く知り、しかもそれとの折り合い方まで学んできたのだから。
この時点ですでに教師よりも深くこの世のことを知っていたと言える。
むしろそうなることが自然な成り行きだっただろう。
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