一番美味しいところ

子供達の勉強を見つつ改めてそれを再確認したミハエルは、一段落ついたのを確かめて、


「じゃあ、今日はこのくらいにしておこうか」


と声を掛けた。


すると悠里ユーリが、


「ごめん、僕はもうちょっと先までやっとく」


そう言ってテキストの次のページを見た。なるほど今やっていたところと関連した内容だったから、キリのいいところまでということなのだろう。


「うん。分かった。食事の用意は僕達でやっておくよ」


テキストを片付けて立ち上がった安和アンナと、宿題をランドセルにしまってやはり立ち上がった椿つばきをつれて、ミハエルがキッチンに入る。


「じゃあ、今日はオムライスにしようか」


「は~い♡」


「やったあ♡」


安和と椿がぱあっと顔を輝かせる。ミハエルが作るオムライスは二人にとっても大好物だった。


すると手際よく安和がフライパンなどを用意して、椿が卵や鶏肉やケチャップを冷蔵庫から出してきた。


いつものごとく慣れたものだ。


そうして、台に乗った安和が鶏肉を切り、ミハエルがフライパンを温め、椿は食器などの用意に移る。


相変わらずの連携だった。


見る間に一つ目のオムライスが完成、作業台に置かれる。


そこに、


「お~! いい匂いだね♡」


誘われるようにしてアオが仕事部屋から出てきた。


「丁度できたから先に食べてていいよ」


ミハエルが言うと、


「ごめん。今いいとこだったから助かる。先にいただくね」


アオはそのままテーブルについてオムライスを食べ始めた。


みんな揃って一緒に食べるのもいいけれど、やっぱり出来たての一番美味しいところを食べてもらいたいという想いもあるから、誰も文句は言わない。


それに、アオが言うように、ノってきているところで一気に仕事を進めるというのはいつものパターンだというのを知っているから、邪魔したくない。


手が空いている時にはちゃんと構ってくれるのも分かっているから、我儘を言う必要もない。


加えて、ミハエルの料理を腕は、プロにも匹敵する。美味しいだけでなく時間もかからない。材料とかは安和と椿が用意してくれるから手を止めることなく次に移れる。


そうしてアオが半分くらい食べたところで次のオムライスが出来上がり、


「椿、先に食べていいよ」


安和が言った。


食材も食器ももう揃っている。丁度、椿の手が空いたところだ。


「は~い」


椿も素直にそれに従って、アオの隣に座って出来たてのオムライスを頬張った。


「美味しい~♡」


思わず声を上げると、


「ホント美味しいね♡」


アオも笑顔で応える。


で、次は安和の分。食材の下ごしらえも終わったところだった。


「安和、できたよ」


とろっとろの卵がのったオムライスを受け取り、


「ごめん、お先~」


食べ終わったアオが食器を持って立ち上がったところに、入れ替わりで安和が座って、椿と一緒に食べたのだった。


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