<布教>はやっぱり必要なのかな……
「ホンッと、人間関係ってメンドクサイよね」
家に帰るなり、小学校五年生にして
「あ~、分かる。そうだよね~」
外見上は三歳くらいで
「また学校で何かあったの?」
同じようにバウムクーヘンを手にしながら、こちらもやっぱり三歳くらいにしか見えないのに実年齢は十四歳という
話の流れ的に学校でのことだろうなとは思いつつ。
すると椿は、テーブルの上のバウムクーヘンに手を伸ばしながら、
「そうなんだよ。山下さんと藤木さんの<推しバトル>に巻き込まれちゃってもうウンザリ」
やれやれと首を振る。その姿はまだ今年で十一歳ながら貫禄さえ感じさせた。
ミハエルと
そんな椿の<愚痴>を、悠里と安和が聞き届けてくれる。
かつてはアオやミハエルの役目だったものが、悠里と安和も受け持ってくれるようになっていた。
こちらも、海外での経験が二人を大きく精神的に成長させていたのだろう。
こうやって蒼井家では家族がお互いに<癒し>になってくれている。
だから外で他人にそれを求める必要がなかった。アイドルなどにそれを求める必要もなかった。
そういう意味でアイドルとかに入れ込む意味が理解できない。
とは言え、
「私もさ、
椿のその言葉に、
「分かるわ~、マジ分かる。セルゲイの魅力が分かるのも私だけでいいって思うもん」
安和が深く頷く。
「だよね~♡」
<恋する少女>同士、共感するところがあるようだ。
でもそこに、
「でも、アイドルの場合は、より多くの人から人気を集めないとアイドルとしてはやってけないんじゃないかな?」
悠里が素直な印象として口を挟む。
「あ……」
その指摘に椿も安和もハッとなった。
「確かに……」
『アイドルを支える』
となれば、自分以外にもたくさんの人に好きになってもらう必要は確かに出てくる。
「そういう意味じゃ、<布教>はやっぱり必要なのかな……」
なんとなく納得させられるものを感じてしまった椿はそう言うものの、
「いやいや、でも好きでもない人を好きになれって押し付けられるのはやっぱ違うよ…!」
安和は気を取り直してそう強く語るのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます