アゼルバイジャンへ
ギアナ高地での観察を終え、ミハエル達は今度はアゼルバイジャンへと向かうことになった。
<アゼルバイジャン>
ミハエルが生まれた時に彼の両親が住んでいた地。
かつては<ソビエト連邦>を構成していた共和国の一つで、ソ連崩壊後に独立はしたものの政治体制やイデオロギーの点では当時の影響が色濃く残り、形式上は大統領を頂き複数の政党が存在するとされているものの、実態としては有名無実でほぼ機能しておらず今なお<独裁主義的共産主義国家>の様相を呈していると見られている。
なにしろ、大統領は、形だけの選挙を経つつも実質的には世襲によって引き継がれ、議会は大統領の意向を追認するだけの強権政治なのだ。
しかしながら観光地としては比較的有名だそうで、実際、政府も観光には特に力を入れているのだとか。
とは言え今回は、ミハエルの帰郷でもなければ観光や昆虫の観察が目的でもなく、セルゲイの私用による<寄り道>だった。この後は西ヨーロッパに向かうことになっている。
なお、アゼルバイジャンは、ミハエルに異常なほどの執着を見せストーカー行為を繰り返していた女性が、
<帰国したミハエルを追って渡航した国>
でもある。
たまたま見掛けたミハエルに一目惚れしたその女性は、典型的なストーカーと化し、アオが当時住んでいたマンションから別のマンションに引っ越しするきっかけを作った上にそれでも収まらなかったため、
『ミハエルがアゼルバイジャンに帰国する』
という芝居を打って諦めさせようともしたのだが、なんと、日本人の多くが世界地図を出されても正確な場所すら指し示せないであろうアゼルバイジャンにミハエルを追って(もちろんミハエル自身は行ってないが)渡航。彼の姿を探し求めたものの当然見付けられず傷心を抱えていた時に出逢った現地の男性と恋に落ち結婚。現在では子供もできて幸せに暮らしているらしい。
が、ミハエルはこの時点では、さすがにそれを知らなかった。
『まさか出逢うこともないよね……』
正直、そう思っていた。
なのに、セルゲイが訪ねる予定だった知人が外国人観光客向けのホテルを経営しているというリゾート地に向かったところ、
「え……?」
あろうことか空港のロビーでその女性を見掛けてしまったのである。
先に気付いたのがミハエルだったため、すぐさま気配を消し、自分がいることを悟られないようにした。
けれど、その女性は、すらりとした長身の、日本人の感覚からすれば十分に<イケメン>と言っていいであろう爽やかな感じの男性と一緒にいて、しかも、明らかに恋慕の情が込められた視線を向けていたのだった。
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