人間が嫌い
アオは、とてもたくさんのことを子供達に対して話す。でもそれは、一方的な<お説教>じゃなかった。だから、
「私ね、正直言ってさ、人間ってあんまり好きじゃないんだ……」
そう言う娘に対しても、アオは、頭ごなしに、
『ダメよ、そんなこと言っちゃ!』
的に否定はしない。まずは、安和が言いたいことに耳を傾ける。
「だってそうじゃん? いっつもいっつもくだらないことで争ってばかりで、ママが言ってたみたいな矛盾ばっかりのことをガーガー喚き立てて、自分が気に入らないものは叩き潰そうとするんだよ?
カナダでのことだってベネズエラでのことだって、あんな身勝手な人をのさばらせてる…ううん、違うな。あんな人達を作る人間が嫌い。
どうしてママやパパみたいにできないの? ママやパパは普通にやれてるじゃん。こんな簡単なことがどうしてできないの?」
そんな安和の疑問に、アオは、あくまで穏やかに答える。
「…そうだね。安和の言うことはもっともだと思う。ってか、私も本音ではそう思ってたりもする……」
と前置きした上で、
「でもね、ママやパパがしてるみたいなことができるようになるのだって、結局、何かの形で教わってきたからなんだ。別に、自力でそうなれたわけじゃない。
だったらさ、
『とにかく相手を殴っておとなしくさせてから言うことを聞かせる』
ってのが当たり前として育ってきたらさ、そういうものだって思っちゃうじゃん? 安和がそういうのはおかしいって感じるのだって、『そういうのは良くない』ってママやパパが思ってて、安和や
安和や悠里はダンピールだけどそう思えるのは、ダンピールだからそう思えるんじゃないよ。ダンピールだって人間と同じだよ。教わってない考え方はできないんだ。
知ってるよね? さくらの旦那さんのエンディミオンのこと。
彼は、安和や悠里と同じダンピールだけど、まるで怪物みたいに生きてきたんだ。それは、結局、そう生きるしかない環境で育ったから。
人間もダンピールも、なんだかんだ言っても環境によって考え方が決まっちゃうのは、安和と悠里が教えてくれたんだよ。
昔は、ダンピールはとにかく邪悪なだけの怪物だと思われてた。吸血鬼をとにかく憎んでて、一切、対話もできないような存在だと思われてた。
でもそれは間違いだった。現実を認めたくない者達の甘えだったんだ。それを安和と悠里が立証してみせてくれたんだ。
『欲しいものがあれば他人から奪えばいい』
『気に入らない相手はとにかくぶちのめせばいい』
それが当たり前の環境に育ったらほとんどがそうなるし、たまにそうじゃない人がいたとしたら、それはそうじゃなくなる<きっかけ>があったんだよ。
人を傷付けることが当たり前の環境を変えていれば、そこで育つ人達の考え方も変わっていくよ。
まあ、それが難しいんだけどね」
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