美千穂の困惑
自身の目の前で繰り広げられる状況に、美千穂はただ困惑するしかできなかった。
「あ…あの……え、と……ありがとう、ございます……で、いいんだよ…ね?」
とにかく様子を窺いながらそんな風に口にした。と言うか、自分を抱えてたのが十歳か十一歳くらいのアントニーで、三歳くらいのヴァレリーがものすごい速さで動いて、女の人が構えた拳銃を叩き落として。
いや、その前にも、突然自動車のドアが外れたりした前に、何か手のようなものがドアを突き破ってたような……?
訳の分からない事態のオンパレードで、コンビニから出てきたところを見知らぬ男達に無理矢理自動車に乗せられて猿ぐつわを咬まされて手も足も縛られてってした時の恐怖がすっ飛んでしまった。
『吸血鬼とか言ってたような気もするけど……』
アントニーがものすごく大人びた口調でヴァレリーに話してた内容も、ぶっ飛びすぎてて日本語で話してたはずなのに半分も頭に入ってこなかった気がする。
と言うか実際に入ってきてない。
本当にわけが分からない。
でも、
「ミチホ。今ならまだ予選に間に合うよ。どうする?」
とアントニーに訊かれて、
「あ、うん。そうだね…!」
などと応えてしまった。普通ならそれどころじゃないはずなのに。
するとまたアントニーが軽々と彼女を抱きかかえて。
「ええ…っ!?」
驚く暇もなくものすごい速さで走るアントニーにしがみつくしかできなかった。
そうして走り去るアントニーを見送って、セルゲイはスマホで指名手配犯の情報をまとめているサイトにアクセス。この四人組がアメリカでもやはり窃盗や誘拐、暴行、恐喝等の事件を起こして手配中であったことを確認。警察を呼んだ。
さすがに指名手配犯が発見されたとなると今度は警察も迅速に対応してくれて、ものの五分で何台ものパトカーが駆け付けた。
その時点ではセルゲイも
一方。アントニー(ミハエル)に抱きかかえられて大食い会場へとやってきた美千穂は、予選開始五分前に滑り込み、無事参加することができた。
しかも、突拍子もない出来事に遭遇したことでアドレナリンが大量放出されたのか異様にテンションが上がり、ものすごい勢いでハンバーガーを平らげ、ぶっちぎりのトップで予選突破を決めてしまったりもした。
そして観客らの喝采を浴びつつバックステージに戻ってきた時にようやく冷静になり、美千穂とアントニーの後に駆けつけたセルゲイとヴァレリーとアンゲリーナの前で、へなへなと腰が抜けたように座り込んでしまったのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます