どーんとこい!
けれど、
「また、できちゃった……」
悠里が生まれてまだ間もないというのに、再び妊娠した。
悠里を生んだ時のダメージがようやく抜けた途端に。
「そう……」
これにはミハエルも苦笑い。
でも、
「うん! ま、きちゃったものは仕方ない! だいぶ要領も掴めてきたし、どーんとこい! よ」
アオはどん!と自分の胸を叩いた。
そうだ。妊娠するようなことをしたのは自分達だし、できたらもちろん迎えるつもりだった。ここまで早々というのは驚かされたものの、むしろ、
『受けて立つ!』
という気分にもなれた。
ただ、
「いや、面目ない……」
セルゲイに対しては少し申し訳ない気分にもなったけれど。
だけど当のセルゲイは。
「素晴らしい! こんな喜ばしいことはないよ! もちろん大歓迎だ!!」
普段は冷淡なくらいに冷静なセルゲイも明らかに興奮していた。
なぜなら、これは、ミハエルとアオが、二人目を躊躇うほどに悠里の存在に手を焼いているわけではないということも示していたのだから。
もし、ダンピールが、生来、吸血鬼を憎んでいるなら、それを窺わせる兆候があるなら、第二子に対しては慎重になるだろう。ましてや素直に喜んだりもできないだろう。
なのに、ミハエルもアオも、立て続けの妊娠を歓迎している。
『本当に良かった……』
二人が望んで協力してくれているとはいえ、本音では自分の研究に付き合せたことを申し訳なくも思っていた。だから、すぐに第二子のために駆り出されたことを負い目に感じてもらう必要もない。
むしろ感謝したいのはセルゲイの方だった。
こうして翌年、第二子にして長女である<
安和が生まれる少し前には、一歳になりある程度は<力>の使い方にも慣れてきた
「よしよし…」
愛おしむように撫でてくれたりもした。
人間の赤ん坊だと一歳ではまださすがにここまで状況を理解できないかもしれないものの、吸血鬼は赤ん坊の間には特に成長が早い。自分で自分の身を守れない<弱い時期>を少しでも短くしようという生物としての戦略なのかもしれない。
さらには、安和が生まれる時には悠里も立ち会い、
「あーっ! うわーっ!!」
などと、動物のような声を上げて呻く母親の姿も目の当たりにした。
さすがにそれには悠里も少し怯えた様子だったものの、
「大丈夫。これが『命を生み出す』ということなんだ。
簡単じゃないけど、大変だけど、だからこそ大切なんだよ。
悠里。君もこうやってママが生んでくれたんだ」
抱き締めながらミハエルが穏やかに説明してくれたおかげで、見届けることができたのだった。
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