(会社のトイレでペニスをシゴく手こそ)仏陀の見えざる手

かえるくん東京オリンピックを救う

第1章:裏インターネットの世界が生んだ奇形児たち

「なぜ大麻は非合法なのか知ってるか?」と秀吉は言った。

僕に言っているのか。それとも部下の家康に聞いているのか。


 彼の名前は秀吉。子供のころからのあだ名だ。その異様なまでの金銭への執着から彼は秀吉と呼ばれていた。金銭への執着といっても、秀吉は銭ゲバで強欲な人間ではない。単にゲームとして金銭獲得競争を楽しんでいるだけだった。そしてゲームをするなら勝たなければならない。だから秀吉の生活は質素そのものだった。彼は浪費家でない。ただ健康に関する投資は惜しまかった。

 僕からしたら、秀吉は歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏の「超人」「不老不死」「神となる人間」の思想に心酔していることを除けば、いたって普通の若者にみえた。


 秀吉によると、彼は起業して育て上げた会社をバイアウトし、その金で悠々自適な暮らしをしているらしい。真相は闇の中だ。そんな噂、誰も信じてはいない。

 でも僕はあながち嘘じゃないと思っている。僕が彼に好感を持ったのは、肥大化した自尊心やエゴイズムを彼が全く持たない性格だったから。僕も余計な見栄や虚栄心とは無縁の男だったから、彼と僕は自然とウマが合ったのだ。


「なんで大麻は非合法だと思う?」

秀吉はもう一度ゆっくりと繰り返す。


 会社を売却して小金を手に入れた秀吉。その金で数年ほど豪遊していたらしいが、そんな暮らしにも飽きたらしい。今、手がけている裏ネットビジネスは暇つぶしだと彼は言う。


 時は西暦2045年。科学の力で人類はアップデートされすぎた。人の平均寿命は120歳を超えた。遊んで暮らすには人生は長すぎる。来年からは日本でも全国民にベーシックインカムの支給が始まる。企業が導入している機械やAIへの課税した税金こそが、その財源となる。つまり、僕たちは人類が労働から解放される記念すべき年を過ごしているのだ。それは同時に国民が国家の家畜となることも意味する。国家による管理の強化。


 秀吉はゆっくりと語りだす。

「日本で大麻が違法な理由。その答えは税金さ。課税。マリファナは栽培が簡単だろ。誰でも栽培できてしまう。」


 サウナ施設の休憩所で秀吉はリラックスしている。平日昼間のサウナはひっそりとしている。今日は秀吉のホームサウナ、池袋かるまる。90℃を超えるスチームサウナ、シングルと呼ばれる一桁台の水温の水風呂。そして外気浴。完璧な温度セッティング。アプリによる脳波のコントロール。交感神経と副交感神経を交互に刺激することで、ディープなリラックス状態に入る。涅槃の境地。優れた禅僧が数年の修行を経て到達するステージに、最新のサウナ施設では物理的に容易に到達できる。とても合理的だ。秀吉は週3回のペースでサウナに通う。部下の家康も秀吉の影響でサウナに目覚めた一人だ。僕も秀吉と会うのはもっぱらサウナだ。


 秀吉の大麻論は続いている。

「これが酒やタバコじゃ、そうはいかない。製造に大資本が必要であり必然的に国家の管理下に置かれる。でも大麻栽培は自宅のベランダでできる。勝手に育つからさ。国家の管理外なんだ。だから税金を徴収できない。これこそが大麻が非合法な理由だ。国家という暴力装置」と秀吉は言った。


 アルコールよりタバコより健康被害が少ない大麻。でも国にとっては税制上やっかいな存在って論法らしい。秀吉は熱く語り始める。アメリカでは既に大麻ビジネスが巨大産業になっていること。大麻医療の将来的な可能性。


 ウェルネス。ウェルビーイング。健康。身体感覚の拡張。現代の不良たちが夢中になって語るアジェンダだ。最近、流行りの昆虫食を口にする秀吉。昆虫食の栄養バランスの良さ、高たんぱく・低脂肪、人口爆発の環境問題を解決するのに昆虫食がいかに有益かを滔々と語る秀吉。健康オタクを自任している僕と最新のスーパーフードのトピックで盛り上がる。


 秀吉の会話に一貫性はない。昆虫食と美容、最新のアンチエイジングとサウナの美肌効果について話していたかと思うと、再びマリファナと課税の話に戻る。家康も僕も首をひねるしかなかった。税金に関して最も縁の遠い連中。それが秀吉。そして後輩の家康だ。実体のないネットビジネスに実体のある課税なんて議論がナンセンスなんだ。秀吉は国家を憎んでいるようだ。国家の横暴について話すときは声のトーンがわずかに上がり早口になる。でも、そんな秀吉の微細な変化も家康は全く気づかない。


「税金?脱税?国家?暴力装置?秀吉さんは何の話をしているんですか?」

 自身は秀吉に拾われる前はネットカフェ住民だった家康。当時はずっとカップ麺を主食としていた家康は健康に興味など皆無だ。健康に興味のない奴ほど太る。低たんぱくで高脂質、ビタミンやミネラルもなく炭水化物の塊のようなジャンクフードばかりが大好物の家康。肥満気味の体型の家康が興味なさそうに言う。家康はオナ禁至上主義者であり、3年間のオナ禁の偉業が彼を家康たらしめている。少なくとも家康はそう主張している。


 え、オナ禁って何だって?そりゃ、オナニーを禁じることだ。ネット界では定番のスラングとして、「オナ禁」議論はWEB黎明期から語りつがれてきた。いわゆる超人思想だ。オナニーという下劣なトピックだからこそ、超人という崇高なテーマとの相性が抜群なのだ。オナニーに使っていた無駄なエネルギーを体内に温存し、チャクラを開き解脱した輩もいると家康は信じている。

「FC2やXvideoやDMMは巨大な帝国だ。そんな帝国に徒手空拳で戦いを挑む無政府主義者こそオナ禁者なんだ」と家康が毒づく。


 インターネットという無限の空間。無限ということは可能性の大きさを象徴しているのではない。むしろ絶望の大きさを象徴しているといっていいだろう。そんなインターネット空間に今日も意味のない書き込みが集積されていく


 僕は役に立たない特技を持つ。それは一度読んだWEB情報をログとして脳内に格納できることだ。不思議なことにWEBメディアのみの現象だ。雑誌や映画の情報なんて、すぐに忘れてしまうのに。今も僕の脳内格納倉庫の扉が開いていく。


脳内ログイン。


(リンク)

https://rio2016.5ch.net/test/read.cgi/body/1552890295/


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1病弱名無しさん2019/03/18(月) 15:24:55.19ID:HM08ZsfC0

オナ禁によって得られた効果を報告するスレです。

その他テンプレは>>2-10までのどこかに


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2病弱名無しさん2019/03/18(月) 15:25:34.58ID:HM08ZsfC0>>6>>13

【オナ禁の効果】 (基本的に男性限定・個人差あります)


●オ○ニー後のあの脱力感・虚無感・失望感・孤独感に苛まれない。

●オ○ニーの代わりに、仕事や勉強、スポーツや芸術などに時間とエネルギーを使うことができる。

●朝寝坊に強くなる。

●自己管理能力が身に付く。

●外向的・積極的な性格になり、精神的に自信がつく。

●血の気が良くなり、今まで精子の製造に使われるはずのエネルギーが体内の隅々まで行き届き、オナ禁を開始する前よりイケメンになれる。

●ニキビ、肌荒れが劇的に改善する。(ニキビの完治が著しく早くなる)

●サラサラで艶(つや)のある髪の毛になる。

●抜け毛が減り、将来ハゲにくくなる。

●髭(ひげ)・ムダ毛が薄くなる。

●感度が向上する。(短期間の禁欲では向上し、長期間の禁欲では下向する)

●女性のストライクゾーンが広くなる。

●2次元キャラクターから脱却できる。

●男性ホルモンの異常分泌が抑えられる。

●女性ホルモンが分泌されやすくなる。

●ホルモンバランスが安定する。

●フェロモンが出やすくなり、女性にモテる。


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8病弱名無しさん2019/03/18(月) 21:33:50.50ID:F7Na0Py50

>>5

>>6

オナニーをやることしか考えてない猿が

ごちゃごちゃ うるせえんだよ

ブチ 殺 さ れ てえのか?


ここはテメエみたいな猿が 書き込みにくる場所じゃねえんだよ


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11病弱名無しさん2019/03/18(月) 23:10:04.80ID:xLkn0AQq0>>14

オナ禁にすがるしかないゴミの集まり

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脳内情報をシャットダウン。




こんな塩梅(あんばい)の書き込みが永遠と続く。


 僕は思った。今は何の話をしているんだ。

マリファナ解禁論の是非?

オナ禁原理主義者の是非?


 秀吉は言った。「家康なら分かってくれると思ったんだけどな・・・」

仕事上では優秀な部下である家康だが、ネットおたく、童貞、ツイ廃が家康の真のバックグラウンドなのだ。家康は言った。

「あれ、かえる先輩。僕のTwitter、フォローしてくれました?@ieyashu777」


【Twitterアカウント】

https://twitter.com/ieyashu777


 家康はハイパーリバタリアンでもあり、インターネットによる理想社会を夢想するが、政治的にはノンポリだ。税金の再配分にも全く興味がないのだ。所得格差の是正は21世紀前半のイシューとしては重要だった。だからピケティが流行ったのだし。でも、ベーシックインカムが導入され、人類が歴史上はじめて労働から解放されようとしている今、家康にとってそんな議論はどうでもいいのだ。国家の管理や締め付けへの懸念など家康には皆無なのだ。


僕は思う。2045年、今年が人類における最後の労働の年だとしたら、僕は何をすべきだろう。今だって大した仕事はしていないのだ。ただし秀吉と同様、国家の肥大化へは一抹の不安を感じている。それに・・・僕は自身がなすべき事がある気がして仕方がない。でも思い出せないのだ。


 家康は言った。

「俺たちって、税金とかそういう世界から最も縁遠いんじゃね。」と笑う。

そう。僕たちの文化サロンともいえるこのサウナ施設に平日の昼間から集まってるような連中は、1990年代に始まったインターネット革命の徒花(あだばな)のような連中だ。国境を越え世界中と情報のやりとりができる我々にとって、国家の干渉は少ないに越したことはないのだ。


 サラリーマン的な労働の価値観からは90年代のとうの昔から卒業した僕たち。

ネットによる情報流通革命により、革新的なビジネスモデルが確立された。時代の寵児としてメディアに登場するようなビジネス界のスーパースター達があまた登場した。GAFAをはじめとした巨大な帝国の誕生。でもそれは時代の一つの側面でしかない。インターネットによるチープ革命。その本質は、それまでの時代だったらニートや社会不適合者にならざるをえなかった人間たちに、生息する場を与えられたことだった。マーク・ザッカーバーグやスティーブ・ジョブスを生んだことがIT革命の本質じゃない。街のスロット屋に並んでいるような生気のない青年たちが、実体を誰も説明できないIT起業家に変身してしまうことこそが、IT革命の本質なのだ。


 アフィリエイト。情報商材。コンテンツ販売。情報起業家。セミナー運営者。スピリチュアルとマインドフルネス。アメリカのニューソート思想に源流を持つ自己啓発とデジタル商材が組み合わさったり、リストと呼ばれる顧客情報が反社会的組織に流れていったりした。一部はネットワークビジネスの亜流と化したものもある。プロダクトローンチと呼ばれるネット独特の販売手法は、1日で何十億円という売上をあげ、そして多くのカモとなった情報商材購入者を生み、一部で社会問題化した。ノマドワーカー、フリーランス、情報起業家、コンテンツ販売事業者、こういった連中の増大により、インターネットの裏経済は巨大なものとなっていった。その一部は所得隠しをしている。秀吉も起業した会社の売却益を脱法スキームで脱税したなんて噂までささかれている。彼らにとって国家なんて邪魔者でしかないのだから。


 こんな魑魅魍魎の世界で、正しい確定申告なんて行われているはずがないのだ。

家康の指摘ももっともだった。家康は3年にわたるオナ禁修行により、精神のコントロールが可能となったらしい。少なくとも家康自身は僕にそう説明した。家康をはじめ、秀吉の仲間たちはネット界の奇妙な思想や習慣の熱心な心棒者だ。そして、その一連のルーティンの特徴は科学的エビデンスを有しているということだ。どんなに珍妙な説も彼らのなかでは科学的な一貫性を持っているらしいのだ。


 家康が僕の方を向く。

「かえる先輩だってオナ禁原理主義者ですよね。」

家康にとってオナ禁主義者でいることは、アメリカ人がキリスト教徒なのと同じくらいの常識なのだ。最近はマインドフルネス瞑想の実践者とオナ禁実践者の脳波が相似していることに思いをめぐらしているらしい。


(ツイート)

https://twitter.com/VkNzfUZ3Vi6W6CP/status/1262623242692386816


 僕自身の考えだって?確かに僕は自身のブログ「かえるくん総合研究所」のなかで、たびたびオナ禁について言及していた。僕自身は十年前まで大手広告代理店に勤め、その後にフリーのライター業やコンサルタントをしていた。まあ、マーケティングのプロともいえるが、秀吉や家康の実践するネットマーケティングとは随分と毛色が異なる。だから「マーケティングの本質とは?」なんて興ざめな議論なんてしたこともない。単にニヤニヤと楽しそうに今どきの若者を見つめていることが、年長者のおっさんの役割ってわけだ。


 最近は「かえるくん総合研究所」というブログ執筆だけで、地味な暮らしながら悠々自適で生きていけた。自動車にも家にも女にも興味がない。人生に意味がないのなら、脱力しながら若い連中とゲスな笑い話でもしていた方が最高だ。


【ブログ:かえるくん総合研究所】

http://www.moneynanpa.jp/


 秀吉や家康が僕の存在を知ったのはブログ記事からだった。ブログがきっかけとなり、Twitterのメッセージ機能でやり取りをするようになったのだ。


(ツイートのリンク)

https://twitter.com/ieyashu777/status/1263306307571875840


 でもそれは、ネットカルチャーの遊びみたいなものだ。オナ禁が革新的な自己啓発ツールになりえるわけがない。それが僕の見立てであり、ごく一般的で常識的な意見だろう。


 秀吉の視線も僕に向かう。

「かえる君と家康を一緒にするなよ。」と秀吉は言う。

僕は持論を展開する。正確にはこんな議論、どうだっていいのだ。当たり前だ。ただ、ここでユニークでオリジナリティがある発言をすること。これには意味がある。秀吉も家康も平凡なサラリーマンの様な退屈な発言は嫌いなのだ。僕が税務署や役所の職員を死ぬほど軽蔑しているように。


 僕は言う。

「『ウルフ・オブ・ウォールストリート』ってディカプリオとスコセッシの映画があるだろ。あの映画に印象的なシーンがあるんだよ。主人公であるジョーダン・ベルフォートの上司、マーク・ハンナとの昼食シーンがあってさ。マーク・ハンナが「1日2回会社のトイレでマスターベーションしろ!」ってジョーダンにアドバイスするんだよ。「一流の証券マンになるならトイレで抜いて、脳にたまった血流を循環させろ!!」ってアドバイスするんだよ。」


 僕はあのシーンを強烈に覚えている。強欲さこそが資本主義社会を加速させる。人の欲が社会を良きものとする。彼が会社のトイレでペニスを握る手。その手こそ神の見えざる手、いや仏陀の見えざる手なんだ。


(ツイートのリンク)

https://twitter.com/kaerukun777/status/931334285545451521


 インターネット革命が生み出した「掃き溜めの犬」たち。インターネットというインフラがなかったら、社会不適合者として世の中の最底辺をうごめいていた人々。ネットというインフラが人類の進歩に貢献しているのか、はたまた文明を劣化させているのか、それは僕には分からない。でも、インターネットがなかったら僕と秀吉と家康は出会わなかったのも事実だ。インターネットという巨大な虚無の空間を中心に物語はゆっくり動き出す。


 ネットビジネスの魑魅魍魎(ちみもうりょう)の世界に僕が飛び込むことになるなんて、この時は夢にも思っていなかった。なにしろ僕はサウナでの精神の高揚とおいしいお酒、人生を豊かにしてくれるレコードの音色さえあれば、他には何も必要としていなかったのだから・・・。


 僕は秀吉たちのビジネスに合流することを気楽に考えていた。でもこの認識は間違いだった。僕はこの後、国家と対立するという予想だにしない体験をすることになるのだから。



【つづく】

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