占い師のせいで、美少女との関係がバレました。
次はどこに行く?そんな話をしながら歩いていたところ……。
「ちょっとお二人さん!無料でいいので、私のお話を聞いてください!」
……なにやらうさんくさいお姉さんに、引き留められてしまった。
紫色のフードを被っており、髪型は見えないが、どうやら短め。赤色のカラーコンタクトを入れ、目元をかなり暗くしたメイク。
座っている椅子の横に置かれた看板からして……。どうやら、占い師らしい。
俺はメイと手を繋いで、先を急ごうとした。しかし――。
「待って!待ってください!お願いします!私の占い力がサビてしまうんです!」
回り込まれてしまった。
何?占い力?
メイが不安そうに、俺の背中に隠れた。
「急いでるんで。ごめんなさい」
「じゃあ、逆に私が金払いますから!お願いします!」
「ちょ、ちょっと」
お姉さんが、急に土下座をし始めた。
休日なので、そこそこ人目がある。メイのこともあるし、目立つのは避けたかった。
「……わかりましたから。顔を上げてください」
「ありがとうございます!」
いちいち声がでかいな……。占い師ってもっとこう、ミステリアスな感じが普通というか……。
色々納得はいかなかったけれど、さっさと終わらせてしまった方がいいと思ったので、大人しく二人並んで椅子に座った。
「え~っと。まず、あなたたちの関係性についてですが……。ふむふむ。ちょっと、そちらのお嬢さん。もう少しこちらに顔を近づけてもらえると」
「……」
メイが不安そうな顔をして、こちらを向いた。
「……とりあえず、従おう」
「……わかった」
渋々と言った様子で、メイが少しだけ身を乗り出して、占い師に顔を近づけた。
占い師は、う~んとうなったり、時に頭を掻いたりしている。
「わかりました!」
急に立ち上がって、また大きな声。どっちにしろ目立ってしまうなら、逃げればよかったと後悔する。
「お嬢さん!あなた、この方の妹ではないですね?」
「……は?」
そんなの、当たり前じゃないか。そう思ったが、メイはなぜか嬉しそうな顔をしていた。
「マネージャーや事務所の関係者と歩いていると、必ず兄妹と間違われる。そう言われなかったのは、久しぶりかもしれない」
……あぁ。そういうことか。
けど、そんなに目をキラキラさせて喜ばなくても。
「当たりましたか!ありがとうございます!……う~んでも、カップルという関係性とも思えないんですよね。謎の縁が見えるというか……。ご近所さんという雰囲気が一番近いのですけれど、それもまた違う……」
この占い師、思ったより正確に当ててくるなぁ。
「あっ。もしかして、同居人とかですかね。シェアハウスって流行ってますし」
「……」
「何も言わないってことは正解なんですね!やった~!」
ここまで当ててくると、偶然とはいえ、怖くなってくる。
この辺りで撤収したほうがよさそうだ。
「じゃ、じゃあこれでいいですかね。俺たち、急いでるんで」
「待ってください!まだ何も占ってないですよ!?」
お姉さんの圧がすごい。逃げたところで、どこまでも追いかけてきそうな気配すらあった。
「桜。この人は本物だから。もう少し話を聞いても良いと思う」
すっかり調略されてる……。仕方ないか。
「わかりました。で、何を占ってくれるんですか?」
「定番で、お悩みごととかどうですかね」
悩み事……。
……とてもじゃないが、こんなところで話せる内容じゃないな。
「あれ!あなた……。抱えてますねぇ。これは抱えているオーラです」
「オーラって……」
怪しすぎるワードが飛び出してきた。しかし、メイは興味津々だ。
「メイも、桜がどんな悩みを抱えてるか知りたい」
「今度直接話すからさ。こんなところで」
「ズバリ!女性関係ですね!」
……何者だよ。この人。
「しかもこれは複数人……。全員年上!?おほぅなかなか……。桜さんとおっしゃりましたっけ。むふふな人生を送っておりますなぁ!」
「やめてくださいよ……」
「占い師さん。その人数を教えて」
「おいメイ!」
「ふふ」
メイが悪戯っぽく笑った。こいつ……。完全にあっちサイドに回ったな?
「そうですね……。まず一人。そして二人……。あぁ、最近一人増えているっぽいですね。おそらくこの三人かと」
「当たってる」
「なんでメイが答えるんだよ……」
確かに、当たってるけどさ……。三人とのことは、メイは知らないはずなんだけど。
これ以上深く踏み込まれると危険だ。もし――。
「おや。そのうちの二人とは、随分昔から知り合いだったようですね?」
……ほらみたことか。
さっきまで、ニヤニヤしていたメイの表情が、一気に曇った。
「……桜。なにそれ」
「いや、えっと」
「あ、あれれ……。私、余計なこと言っちゃいましたかね」
あはは~なんて言いながら、占い師さんが呑気に頭を掻いている。困った状況にしてくれたな!全く。
「追々話そうとは思ってたんだ。うん。ただ最近バタバタしててさ。タイミングがなかったというか」
「どの二人なのかが重要。そこにあの性悪女が混ざってるなら、まだ良いと思う。でも……。もし、徳重と相生が、その二人なら、メイは仲間外れってことになる」
「仲間外れなんてことはないだろ。別に、昔からずっと付き合いがあったわけじゃないんだ。たまたま再開して」
「メイにはその、たまたまもないよ?」
「あ~えっと!メイさん?占いなんて嘘ばっかりですから!信じなくていいと思います!」
占い師さん。あなたがそれを言ったらお終いだろ……。
ここまで的中させておいて、今更これだけ嘘だなんて方が、おかしな話になってしまう。メイが納得するわけない。
「詳しく聞かせて。喫茶店に行こう」
「さっきパスタ食べたばっかなのに……」
「じゃあどうする?ここで話す?」
「勘弁してください」
こうして、次の移動先は、まさかの喫茶店。飲食店から飲食店への移動という事態になってしまった。
……気が付くと、占い師さんは、眠ったフリをしていた。どうしようもない人だな。
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